第十八話 ホラー映画でビビッた私は彼氏と一緒にお風呂に入った


 ※前回の17話の続きです!!







 『いやだから、本当にアレは……!!その、なんつーか、人ではなかったんだよ!!!』

 『分かる…分かるよ?私も頭がおかしくなりそう……母さんが不倫して出て行って、父さんが交通事故で死んでしまった時は頭がおかしくなった』

 『だから違うんだよ!!!本当にここにいたらみんな殺される!!!マジなんだ!!!!』

 『おい落ち着けよ!』




 テレビから流れる洋画の吹き替えの声……





 「…………………」



 怖い



 「……………あの、ユウ?」




 怖い怖い怖い…




 「……………」




 怖い怖い怖い怖い怖い怖い…




 「ユウ?」




 やだ…




 「」



 


 死にたくない!!!


 「ユウっ!!!!」


 「キャアアアアアっ!!!!!!!!!」








 今、トーカと私は私の寝室でホラー映画鑑賞中……



 そして今は、"そのホラー映画に出てくるモンスターが人を殺す所を見かけたサブメインキャラの1人が必死に仲間にその事を必死に伝えようとしている所"だ。

 因みに洋画で舞台はアメリカのある市街での出来事。そのモンスターとは偶々、"ある別の国"からのアメリカ行きの輸入船に乗り込みここまで来たという流れだ。

 説明すると長くなるので後は想像してみてください。

 説明が簡単で本当に申し訳ございません…






 で、






 その流れを見てる最中、私はモンスターに襲われたキャラのムゴイ死に様に相当ビビリ、残りのキャラ達がいつ死ぬかどうか震えながら右隣のトーカの腕に抱きつきながら見ていた……



 そして、頭の中が"怖い"と"こんな死に方嫌だ"に侵食され……今、トーカに声を掛けられて情けなく驚いてしまったと言う訳だ。







 ピッ




 トーカがリモコンで一時停止ボタンを押す。





 「本当に見ていてトラウマになんないか?」

 


 トーカはいつもみたいに茶化すのではなく割と真面目に心配してきた。



 「だ、だだ、大丈夫だよ…?」



 嘘。



 正直、かなりビビってます……




 「どうする?観るのやめる?」

 「!」



 トーカはそう言ってきた。



 「い、いや!!ここまできたんだから……み、観る……!!」



 私は半分ウルウルと涙目になりながらそう言った。



 と言っても2時間近くあるうちの最初の20分も行ってないけど……





 「で、でも…」




 私は付け足した。



 「ちょっとトーカの腕を貸して」

 「え?」



 私は隣に座るトーカの腕を自分の首元に折るように絡ませた。


 つまり、トーカの腕をマフラーみたく首元に巻く感じにしてがっちり前腕を両手で抱き寄せる……




 「しばらくこれで観させて?」

 「…………ははっ……甘えん坊さん♡」

 「うるさい…//////」

 



 私は一先、映画を観ることを強行した……



 それが間違いだった。





 『やべぇ…ジョックが……アシュリーが死んだ…』

 『アレなんだよ!!!グレムリン!?』

 『はぁ…はぁ……違うだろ……ヴォルデモートだろ……』

 『アイツはキモいけど人間が演じてるだろ!!!』

 『そんなことはどうでもいいの!!2人が殺されたのよ!!?無惨にぐちゃぐちゃに!!!』

 




 「…………っ!!!」



 

 私はもう"怖い"と"吐きそう"と言う感情しかなかった……




 人があんな死に方するんだ……




 い、いやだ……



 私はあんな死に方したくない……


 死にたくない…!!

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…






 ピッ!!






 「!!」


 「ユウ……観るのやめない?」


 「………え?」

 「俺もなんか、胸糞悪くなってきたし観ていて今日は気分が良くないからさ……観るのやめない?」

 



 トーカはそう言ってきた……



 顔は穏やかだが、少し無理矢理な感じの……





 「あ…」




 トーカ……



 私に気を使ってるんだ。



 多分、思った以上に私が怯えてるからこれ以上観るのは良くないって……





 「そ、それじゃあ……観るのやめよっか…」

 「じゃあレンタル代払うよ」

 「え…」



 「"俺の"我儘で最後まで観るのをやめようって言ったんだから払うよ」



 「え………」




 オマケにここまで言われた……



 どんだけ優しいんだよトーカ…!!!!






 じゃあ……





 「あの、お金はいいからさ……一緒に付き合ってもらいたい事があるんだけど……」

 「ん?何?」

 「一緒に……






 一緒にお風呂に付き合ってくれない?」






 「」







 率直に言おう。



 私は既にトラウマかってくらい、映画にビビッて1人でトイレに行くのも怖い状況だった。






 「………は?風呂?」





 流石のトーカも唖然としてる……

 まぁ、そりゃそうだわな。





 「と言っても流石に一緒に身体を洗いっことかはしないよ?ただ……風呂場と脱衣所のドア越しでもいいから一緒にいてくれないかなって…」


 「……………え!?お、俺が////////!!?お兄ちゃんやご両親の方にしてもらえれば……////」


 「恥ずかしいから嫌だ……お兄ちゃんは変な事しそうでキモいから嫌だ……トーカがいい」

 「え………あ………/////////」





 トーカは顔を赤くする。





 「体洗う時はあくまでドア越しでだよ?で……だからその……湯船に入る時は一緒に風呂場で話そうってこと……」

 「…………本当にいいの?キモくない?」

 「………大丈夫……トーカはキモくない……寧ろいてほしい……」

 「え………///////」

 「ご、ごめん……正直、怖過ぎて今日は1人でお風呂入るの無理かもって……だから、トーカに付き合ってほしい………大丈夫かな///////?」




 私も顔を赤くしながらトーカに尋ねる……




 「い、いや、別に俺は大丈夫だけど………」



 トーカは言い淀む……



 「そ、その流石に一緒に風呂場にいる時は水着だよ?」



 「わ、分かってるわ!!流石にそこを越えようとか考えてねーから!!!」



 「で、どうかな?」

 「……………ユウが良いって言うんだったら………じゃあ、俺はユウの側にいさせてもらうわ」



 

 そう、トーカは笑顔で笑った。




 「………ありがとうね」


 


 私も笑顔で返した……














 「え、マジ?」




 私は一応そのことを家にいる悠人ゆうとお兄ちゃんに伝えた。


 流石に何も言わないで一緒だったら驚くだろうし……




 「マジ」

 「んーー、りょーかーい」(風呂入んの早いなー)




 その、二つ返事でお兄ちゃんは納得してくれた。


 思ったほど驚かなかった……





 「あ、じゃあトーカには俺の水着貸すよ」

 「え!良いんですか?」

 「家に取りに帰ってじゃ面倒だしな。全然良いっすよー」

 「ありがとうございます」



 グイっ!




 「!」

 「〜〜〜〜…」



 その時、悠人お兄ちゃんはトーカを引き寄せて何やらヒソヒソ呟いた。



 「マジですか?」

 「マジ」



 何やらトーカは顔を赤くしていた……

 


 何だ?













 ……ともかく!!


 私はトーカと一緒に今、風呂場とドアを挟んで脱衣所という感じで2人でいる。







 「でも、何でユウはあんなDVD借りたんだ?」







 トーカはドアに寄りかかって座りながらその向こう側の私に質問する。



 「なんか面白そうだったから……キャッチコピーが"【気づけばここは地獄と化していた】"ってなっててシンプルに面白そうだと思った」

 「好奇心が強いのも災いの元になるんだな」

 「そうかもね……」

 「次はコメディ映画でも観ようぜ」

 「でも、性やグロが混じるのもしばらく観たくない」

 「分かってる分かってる(笑)。俺もただの平和なコメディ系の万人向けのG指定の映画を観たいわ」

 



 そんな感じで私はトーカと話していた……



 ドア越しでも本当に話しやすいな……



  

   

 あ、因みに脱衣所の洗濯物を入れるかごには下着とかが入ってるけどトーカは邪な気持ちを持ってないからそこは心配してない。














 『入っていいよー』



 私は身体を洗い終わり水着を着て、風呂場からトーカを呼んだ。



 ガチャ…




 「うーーす」




 そして、トーカが中に入る。



 やっぱ身長もそれなりにあるだけでいい体格している……



 「その水着似合ってるね」

 「ありがとな!!………てかユウ」

 「ん?」

 「何でビニール袋被ってんの?」

 「これは袋じゃなくて"フェイスサウナカバー"って言ってサウナや湯船で被るものなの!!それに穴空いてるから息しやすいから袋じゃない!!」

 「あ、そっか。てっきり気が狂ってんのかと思ったわ(笑)」

 



 プクッ!!




 「………まぁ、大丈夫だから」




 私は頬を膨らませながらそっぽを向く…



 一緒にお風呂入ろって言って怒るのは勝手過ぎると思うから……



 因みにトーカは湯船に入らず風呂場の椅子に座っており私は湯船に入ってるって感じだ。


 一応体洗ってないのに湯船に入るのはやめようと言う話にしたから。



 後、本当に"水着"着てるからね?






 「でも、もうすぐ夏だなー」

 「そうだね………今年は海かプール行きたいな」

 「えー?お前、去年はめっちゃナンパされたじゃん。守るのめんどいわー」

 「とか言って守った後は誇らしげな顔するじゃん(笑)」

 「は?し、してねーから!!」

 「まぁ、ともかく……行けたら行こっか?」


 


 私は歯を見せて笑った。

 


  

 そんな他愛もない話をしながら一緒に風呂場での時間を過ごしていた…



 なんて言うか…トーカは安心感があるから全然一緒にいても恥ずかしいとかはない……



 それに……今日は怖いって感情が強かったからトーカと一緒にいれて良かったという安心感が欲しかったから……あまり、恥ずかしいという気持ちは"少ししか"なかった…







 まぁ、前回家に招待した時に水着姿見せていたから慣れたってのもあるかもしれない……







 「〜〜〜〜」(ユウの水着姿………マジエロい////////////)







 でもトーカは時々、私の身体を見るような感じの目線を度々向けていた…








 とまぁ、今回はホラー映画でビビッた私が彼氏とお風呂に入ろうせがむと言う出来事があった一日だった。


 



















 そして後から思ったけど……







 やっぱ人ってある一つの感情に一度強く支配されるとしばらくは心が麻痺して他の感情達の強度が全部一緒くらいになるんだな……


 あ、私だけかな?



 でもなんて言うか……



 "フロー状態"に近い感じなのかな……



 怖いと思ったら急に他のことを全部出し抜いて、"ただ【なんでもいいから】トーカに一緒にいてほしい"って感情が全てを支配した……



 不意に何かあればそれに一瞬でも夢中になることがある……



 一瞬でも"そのある一つのこと"に意識が集中する……






 当たり前のことだけど人の感情も単純だよなー…








 完

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