第十七話 "私"と"幼馴染の彼氏"と"私のお兄ちゃん"は……
「ねぇ、トーカ」
「ん?」
「……………トーカはさ……好きなホラー映画とかあるの?」
「んーー………まぁ幽霊系はそんな好きじゃねーからあまりないかな」
私は放課後、トーカと話していた。
「そうなんだ……」
「で、それがどうした?」
「あー、なんか気になったホラー映画をツタヤで見つけたんだよね……」
「あ、一緒に見たい?」
トーカは笑って聞いてきた。
「い、いや……そういう訳ではないけど…まぁ、暇だったらどうかなって……」
「ん、別にいいよー」
「いいの!!?」
「!!…お、おう…」
私は思わずトーカに顔を近づけていた…
「あ………あ、ありがとね//////」
「……………//////」
そうして私達は私の家で映画を見ることにした。
で、今は最寄り駅に降りて歩いて帰路につく途中………
「で、ユウが借りたDVDはどんな奴なの?」
「B級感はあるけど人が大量に死ぬ映画」
「何よ、なんかの他生物によって殺されてく見たいな?」
「まぁ、そんなとこかな」
「大丈夫なん?」
「え、何が?」
「ユウって、別にグロ映画が見れないわけじゃないけど見た後はなんか、賢者タ………みたくなるじゃん」
「私は女ですけど?いきなり品がないこと言わないでくれない?」
私はトーカをジト目で見た。
「わ、悪いって………でも、途中に静かになる時間でバグったようになんかブツブツ呟いたりもするじゃん。ほら、映画館で注意されたでしょ?」
「ま、まぁ……それは……普通に私が悪かった……」
私はボソッと呟いた。
「で、『バンっ!!』って画面にいきなり登場したら叫ぶ通り越して泣いちゃうじゃん」
「!!!?な、泣いてなんかないけど/////////!!!」
「あれは泣いてたと思うけど?」
トーカはニヤっとしながら私を見てきた。
「……むぬぬぬぬぬ…」
私は何も言い返せず頬を膨らますことしか出来なかった。
「まぁ、ともかく!!今回はユウの家で見るんでしょ?だったらその心配はいらねーな!俺しかいないんだからよ」
「あ、今日はお兄ちゃんが家にいるよ」
「あ、マジ?
トーカは驚きながら聞いてきた。
「ん、元気だよー。青春しまくってると思う」
「そうな…」
「ほぼ、オタ友とアニメの聖地巡礼かDVD鑑賞か、エロゲーか漫画読んでるかだからね。今日は寝室に閉じこもって漫画でも見てんじゃない?」
「おー……変わらないね」
「"真のオタクは多分【死ぬまで】、そのオタク心が無くなることはない!!だから、俺は俺なんだ!!"とかなんか普通そうなことを最近は座右の銘にしてるし」
「真のオタク……なんか響くな……」
「まぁでも、そんな感じだから元気にはしてると思うよ」
「……………」
「あ、トーカはお兄ちゃんと会うの久しぶりかー」
「まぁな、やっぱ相変わらずオタ生活してるんだな」
「更に磨きがかかり始めてる」
「ははっ。でもユウのことも大好きだもんなー」
「まぁね。なんか"私の愛しきユウ姫"とか呼んできた時は流石に"キモい死んで"って言っちゃったなー(笑)」
「ははっ!!マジ?」
という感じで私とトーカは話しながら私の家に向かった。
そして……
「ただいまマイブラザー」
「おう、我が女神よ!!たった1日で美しさに磨きがかかり、目が眩んできてしまう!!あー、アフロディテを超えてきてしまうか…」
「そういう兄者はソクラテスを沸騰させるような知的な顔をしてきたな。もう何年生きてるのか分からないほど…」
「あー、待て待て待て」
「え?」
「その表現は違うわー、"もう何年生きてるのか分からないほどの顔つき"って言おうとしたっしょ?」
「え、バレた」
「そりゃあダメだわ。遠回しに老け顔って言ってるように聞こえるわ」
「まぁ、その通りなんだけど」
「は?ヒデェ!!実の兄にそんな物言いとは!!"お兄ちゃん"、ショックでユウを抱きしめたくなってきた!!」
「別にいいけど、970円ね」
「高っ。そこらの美術館並みの料金じゃねーか」
「私はそれ以上の価値があるから大分割り引いたんだけどな。家族料金として」
「え、通常いくら?」
「8000円」
「ディズニー並の入園料じゃねーかよ!!確かに安いな!!じゃあ1000円払うから抱きつかせてもらおうかな!!」
「頭触ったら1500円に値上げね」
「ふっ、心配すんな背中も触るから2500円払ってやる…」
「乗った。じゃあ、それ…」
「あのー、2人とも?」
「「!!!」」
家に着くと私とお兄ちゃんの悠人はいつものような"軽い茶番"をやってしまう。今回も例外なくね……
まぁ、いつもやってるから♡
いっつもね!
「長そうだったんで声を掛けちゃいました……すみません…」
でも見かねたトーカが途中で止めてくれた……
「よっす。トーカお久〜、元気だったか?」
"悠人お兄ちゃん"は先程の茶番がなかったかのように飄々とトーカに挨拶した。
「こんにちは。はい、元気にしてました!悠人君は元気でした?」
「いーいー!!2つの意味でいい!!」
「え?」
「勿論元気にしていた!!そして、そんな堅苦しく"悠人君"だなんて呼ぶなって!!前みたく"ユウ君"でいいから!!」
悠人お兄ちゃんはフレンドリーなオタクだ。
見た目は黒髪で眼鏡を掛け、無精髭を生やした身長180ぐらいの感じで、根暗なイメージが強い人だけど"この伊織家"で1番気さくでコミュ力が高い人だ。
「あ、じゃあ………ユウ君、いつも夕葉にお世話になってます!!これからもお世話になります!!」
ピクッ
あ、お兄ちゃん……
「そうだな……これからもユウを頼んだぞ!」
ポンっ
「!」
そう言って頭を下げたトーカの頭に手を置いて悠人お兄ちゃんはトーカの頭を撫でた……
お兄ちゃんはトーカのことを信頼してるからな……
あの、私が"不良のモブども"に痛めつけられていた時にトーカが身体を張って助けた以来、"それ以前"よりもトーカを強く信頼するようになった。
一応、トーカと私の関係に嫉妬せず快く思ってくれてるのは正直私としてもとても嬉しい……
「そういやお前ら2人でウチに帰ってきたけど、この後何かすんの?」
お兄ちゃんはふと質問してきた。
「ホラー映画見ようと思ってる」
私はそう答えた。
「あ、2人でか!!いいじゃん、思う存分イチャついちゃえよ(笑)」
「いやー、ユウがどんな反応するかめっちゃ楽しみですよー」
「漏らしたりはしないだ…」
「お兄ちゃんうるさい。そしてトーカも黙れよ」
私はギロリと睨んだ。
「そんな可愛い顔で見られてもお兄ちゃんは怖くないなー?やっぱユウはいつ見ても何していても可愛いんだなー?だからトーカにいじられるんだろ?」
「そうっすね(笑)」
「はっ……//////!!!!?」
私は2人の言葉に思わず顔が赤くなっていた…
「」(なっ?ユウはいつも通り、チョロいだろ?)
「」(はい"笑")
2人は何やら目配せしていた。
「ともかく!!映画見るからお兄ちゃんは邪魔しないでよ?」
「しないしない(笑)。俺今、漫画読んでるし。兄妹系のラブコメ」
「今みたいな感じですね」
「だろ?ユウと俺はラブラブしてんだろ?」
「お兄ちゃん……
マジキモいよ?」
私は蔑んだ目で見下した。
「ほら!!この感じとかとても興奮しね?」
「分かります。マジでゾッとする分、興奮が止まんないですね」
「2人とも殴るよ?」
と、一先ず私とトーカは私の寝室にこもって映画を見ようとしていた。
私の家の兄妹関係って別に普通だよね?
完
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