第七話 "彼氏じゃない""幼馴染の男子"との2人きりの時間




 

 スタ  スタ スタ



 ある日の放課後の学生ホール。

 私は職員室に呼ばれたトーカを待っていた。




 「お」

 「ん?」




 するとそこへ、私とトーカの小学校からの友達の男子、柳田薫やなぎだかおるが偶々通りかかった。



 「あ、薫」

 「おー、ユウ。まだ帰ってなかったんだな」

 「トーカが職員室に呼ばれたから待ってる」

 「なるほどな」

 「まぁ、今日の自習中に他の奴らとダウトしてたからそれで怒られてるんだと思う。本当に男子ってバカだよ」

 「いやいや、それは心外だわ。俺は違うからな?」

 「えー?自分で言う?ナルシ?」

 「な訳な」



 私は思わず笑う。

 薫は正直、超イケメンだ。

 メンズマッシュパーマの髪型をして小顔で黒の瞳をし鼻はシュッと高く顎も細い。そして背も高くスタイルがいい。




 「まぁ、少しは自分のことをカッコいいとは思ってるけど」



 薫も少し笑った。



 「じゃあ俺、帰るから」



 そう言って薫はその場を去ろうとした……

 けど…


 「待ってよ」

 「ん?」



 私は気づいたら薫のことを引き留めていた。



 「ん?どうした?」

 「あ………その、トーカが来るまで少し話し相手になってくれる?」

 「え?」

 「いや、暇だからさ……と言っても後、20分はしないかもだけど……」

 「………………」

 「ダメかな?」



 薫は一瞬眉をひそめた。

 そして一言……



 「なんか問題にならん?」

 「え」

 「"お前ら"は付き合ってるだろ?それで他の男の俺と2人でいたら……なんつーか……問題になんね?」

 「あー………その可能性は否定できない……」

 「……………」

 「でも、友達だから……そこら辺は…」



 私は上手い言い回しが思いつかなかった…



 「……まぁでも……そうだな…」




 そしたらクスっと薫は笑った。




 そして私が座ってる椅子で挟んだ円形テーブルの向こう側の椅子に座った……



 「あ……話してくれるの?」

 「別に…話すだけだったらタダだし別にやっぱ"問題"ねーだろと思い直した。少し話すだけなんだし」

 「」

 「それに小学生の頃からの縁ってのもあるからな」



 薫はそう言った。

 見た感じ少し照れてるようにも見える。

 何故だ?



 「………ありがとね!」



 でも、その言葉に対して笑顔で私はこう返した



 「」



 












 とは言ったものの……




 「「…………」」




 私は上手く話を切り出せないでいた。

 多分、薫もだ……

 正直、トーカ以外の異性とこうやってまともに話そうとすること自体"親"を抜いて久しぶりだ。



 ヤバいな……



 自分から誘っといてこれはちょっとダメだよね……



 そう思い、私は話を切り出した。




 「ねぇ、薫は"寝返りの法則"ってどう思う?」


 「は?初耳の言語について聞かれてもなんと答えればいいか分からないわ」


 

 あ、そっか。



 「で、その"寝返りの法則"ってのはお前が作った言葉だろ?どういうことなのか教えてよ」



 そう薫が尋ねくる



 「あー、人ってさ眠い時は何もせず目を瞑ればいつの間にか寝ちゃうじゃん?でも寝る直前でスマホいじってたり普通に眠くなかったりした時、寝ようとするとその眠い時と違って中々眠れない」

 「確かにな」

 「それで、眠ろうといろんな寝方を試そうとするじゃん?」

 「だな」

 「それで、最終的に眠れたらいいけど眠れなかったら寝るのを諦めてもう少し起きようってなんない?」

 「あー、まぁな」

 「で、これってさ日常生活にも当てはめることができると思わない?」

 「…………あ、なるほどな」

 「分かる?」


 「つまり……

 ・ある物事に取り組んでいたとする。

 ・その時、集中できていればそれはそれでいい。

 けど、

 ・ふと取り組む前の事だったり単純に"何か"に思考が引っ張られて集中力が切れたらどう立て直すか

 ……となる」



 「そうそう」



 「それで、

 ・あれこれ試行錯誤して集中の仕方を考えながらとりあえずその物事に集中する

 でも、

 ・結局無理だと思ったら思い切って休憩するとか違うことを行ってみる……という事?」



 「そうそう!!良かったー!分かってもらえて!!」

 「」



 私は笑顔になって安心した。


 正直、説明が難しいと思っていたからだ…


 

 「意外と"常識的なこと"でもこう寝返りを当てはめる発想は思いつかねーな」

 「私も『はっ』と思ったんだ」

 「まぁ理解できたのは、俺の頭がそれなりにいいってことでもあるけどな」

 「本当に助かるよ」

 「まぁ、燈火に言っていたら理解できたかどうか」

 「トーカも多分、ギリギリ理解できると思う……けど薫以外は多分腑に落ちてこないと思う」

 「まぁ、燈火程じゃないが俺もお前によく聞かされていたからな。ポエムっぽいその道理を」

 「ま、まぁ………」



 そう、小学生からの幼馴染と言うこともあり薫にも"それなり"に私の考えていたポエムを聞かせていた

 いやー……

 なんか思い返すと恥ずかしいな…

 


 「まっ、ともかくそのさっきの…"寝返りの法則"だっけ?」

 「そうだよー」

 「他にも考えた"ポエムっぽい"のはあんの?」

 


 ズイッ!!


 「!?」

 「聞きたい?」

 


 私は思わず薫の方へ身を乗り出していた



 「え………あー…………ん。一つだけ聞きたいな……ははっ」



 薫は珍しく表情を少し強張らせていた



 「えー?何がいいかなー……」



 ここ最近だと放課後のか祭りの時のぐらいしかないよなー………

 


 ん?



 『お互い、"新しい風船"が増えたな』



 あれ……



 『大好きだよ』



 ……………





 ブアッ!!!!!!






 「ユウ?どうした?」

 「ヤバいかも…」



 私はボソリと呟いた



 「え、何が?何かあったのか?」



 薫が少し慌てる。




 「……………燈火に何かされたのか?」

 「!」



 

 私は少し驚いた。

 薫の口調…空気が少し"重く"変わったからだ……



 「違う。そう言う訳ではない」




 だから私も少し強めの口調で訂正した。




 「その………薫だから話させてもらうけど……いい?」

 「え、おう…」

 「私……いろいろとヤバいかも……」

 「だから何が?」

 




 私は最近の"ポエム"と"トーカ"についてのことを薫に話した……



 いや、本当にここ最近は体温の上昇が激しいことばっか過ぎて…




 「あー、まぁ……付き合ってんだったら普通のことじゃね?」



 

 私が話した後、薫はそう答えた




 「そ、そう言われたらそうかもしれないけど………えー、なんかキモいとか思わないの?」

 「え、何が?」

 「流石にバカップル過ぎないかな……」

 「何言ってんだよ。普通に幸せそうで羨ましいよ」

 「…………そう?」

 「あぁ」

 「………………」

 「まぁ、だから楽しそうで何よりって感じだな」

 「…………」





 楽しそう……

 


 確かにトーカと一緒にいてつまんなかったことは全くない。

 正直、隣にいてくれるだけで私は十分過ぎるくらいだと思ってる。




 「まぁ、ともかく燈火との間に問題はないんだな?」

 「………ないよ。ただ、いろいろと私達も成長していくにつれて大胆な行動が増えてきてるってことにキャパがついてこないってなだけ……」

 「ははっ、バカップル乙(笑)」

 「ちょっと!!幸せそうだって言ったじゃん!!」

 「バカップルは否定してねーけど?」

 「うわっ!!そうだ…!!……むーー……!!!」




 私は頬を膨らませた




 「ふふっ、その怒ったら頬を膨らますの昔っからだよなー。周りからは"クールビューティー"で通ってるのに」

 「うるさい。おちょくんないでよサディスト」

 「ありがとありがと(笑)褒め言葉だわ」

 


 薫はトーカと違って少し怖い所がある。

 けど、その反面優しいし話をちゃんと聞いてくれたりこうやって軽口を叩き合えるので話していて楽しい。



 「そんじゃあ、そのもう一つのポエムを聞かせてよ」

 「分かった……薫は……


 シャボン玉の人生ってどう思う?」

 

 「え、病んだ?お前。流石にそれは……」

 




 あ、トーカと一緒でズバズバ容赦ないとこもあるんだよなー……

 私はピキりながら話した。





 そして……




 

 「悪い遅れましたー」



 

 トーカが歩いてやってきた



 

 「やっときた」

 「おー、遅かったなー」



 私と薫はトーカの方を見た



 「お!薫もいたんだ!!」

 「おう。お前が来るまでユウの話し相手をしていた」

 「そっか!!待たせて悪かったな」

 「いいよ。それじゃあ俺は先帰るから…」

 

 「え、何で?」

 

 「!」

 


 トーカがその時、疑問の声を上げた



 「折角だし一緒に帰ろうぜ?」

 「え?は?…………だって俺がいたら邪魔だろ…」

 「いや、全然?」

 「!」



 私もトーカに続いて言っていた



 「まぁ、いつもだったらダメだけど偶には帰ろうぜ?」

 「……分かったよ…」

 「おしっ!!行くか!!」



 トーヤは元気よく歩き出した



 

 「はっ、じゃあ帰るか」



 そうして薫は立ち上がり燈火の後に続く。




 「あ、つーかメントス食べる?」

 「くれんの?」

 「ん、昨日ゲーセンのクレーンでメッチャ取れたからやるよ」

 「サンキュー。つーか、さっきの職員室に呼ばれた件はなんだったん?」

 「自習中にダウトしてた件」

 「やっぱバカだな(笑)」





 そう、トーカと薫が会話をしている所を私は見て思った。




 そういえば小学生の頃は3人で帰っていたこともあったな……



 よく、あの2人にイタズラされたっけ……





 「ふふっ」







 私はそう笑いながら2人の"幼馴染の男子"の後に続いた。






 「あ、そういやユウって病んでるの?」

 「え?あ、お前も聞かれた?シャボン玉の人生がどうとかって」

 「おう」

 「いやー、あれは重症だよな…(笑)」




 「ちょっ!!違うから!!病んでねーから//////!!」




 完

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