第14話 俺より俺の動きが上手い
「
「そうだ。中2の夏、二十日はとある事故によってほぼ全ての記憶を失ったんだ。今はほとんど取り戻してるけどね」
衝撃の事実を伝えられた
「詳しくは、二十日の親友に聞けばいいよ。
「礼紋?……あ、
思い出すようにクラスメイトの名前を読み上げた碧木。そして、急いでスマホを触り文字を打ち込む。
「あと、これを話した事は二十日には秘密だよ?」
「……あ!分かりました」
二十日の母親が口に人差し指を当て、微笑みながら小声でそう言った。そして、碧木も物音に気付き小声で返事をする。
「……?何話してたん2人で」
お風呂から上がった二十日が、リビングに戻ってきたのだ。
「ラッキースケベの対処法!」
「二十日のえっち~」
「だからあれは不慮の事故だって!」
またしても2人にからかわれた二十日は弁明しながら、冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り出し飲み干した。
◇◆
「……社長か大金持ちになった気分!」
どうやら碧木は、ゲーミングチェアに座りパソコンの画面に囲まれてるのが「社長」というイメージを持ってるらしい。大金持ちはあながち間違ってはないが、どういう偏見持ってんだこの子は。
「ほんとに凄いね!これ見ると納得できるよ。『実況者なんだ!』って!」
「……そりゃどーも」
約束通り、碧木に俺の部屋を案内するという約束を実行中だ。見てもなんとも思わんでしょと考えていたが、びっくりするくらいはしゃいでる。めっちゃ可愛い。
「……ま、そんな感じで配信してるよ」
「ねぇ、ちょっとやってみたいことあるんだけど!」
「……提案?」
「うん!私のチャンネルとオフコラボ配信しない?」
あぁなんだ、オフコラボか。それくらいなら……って、
「……は、オフコラボ!?私のチャンネル!?」
「うん!実はちょこっとだけプレイ動画載せてるんだ〜!声出し顔出し全部無しだけど!」
「……えぇ!?初耳なんですけどぉ!?」
碧木、というか_ZEROがYouTubeをやってた事に驚きを隠せん。自分でもびっくりするくらいの声量と表情で叫んでもうた。おい碧木、目が点になってんのバレてるぞ。
(……まじかよ、知ってたなら見て研究してたのに)
心の奥底で自分の情報収集能力不足を痛感して後悔しているうちに、碧木が顔を覗き込んできた。もちろん俺には効果抜群だ。ぐはぁ。
「で、やる?」
「……え?あ、もちろん。やろう」
来週、碧木が部活休みの時にコラボをする事が決まった。
――【ヴィクロ、オフコラボ決定】全国1位と2位、相対する。お楽しみに。
そうお知らせした途端、自分史上1番のバズりを記録した。とんでもねぇ反響だ。
なんなら次の日確認したら、ゲーム番組とかネット記事にも乗ってたし、改めてヴィクロのトップ付近に立ってるんだということを実感した。
「碧木と……いや、_ZEROとガチ勝負か」
期待と共に膨らむのが、負けたくないというゲーマーとしての本能だ。今俺は、ありえんくらい脳内フル回転で戦略を考えてる。
俺のプレイスタイルを真似して全国1位に輝いた_ZEROは、すなわち俺より俺の動きが上手い。
俺のプレイスタイルは独自で生み出したものであり、普通の人がやってもただ自滅するだけだ。俺でもたまにミスるのに、それを完璧に使いこなす_ZEROは相当やばい。
(……もっと何か工夫しないとな)
そう考えながら俺は通学路への1歩を踏み出した。もちろん、約1週間後対戦する碧木と一緒に。
――今日は木曜。オフコラボまでは今日を入れて、あと5日だ。
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