第206話ミイラ取りがミイラになる8
ー生命の池ー
「凄い数ですね!」
「キモッ!」
襲いかかってくる虫の数に思わず顔をしかめる月兎とナタリー。そんな中ボブは構わずにグエンを虫にけしかけた。
「ヴァオ!」
虫と戦い始めたグエンはどんどん蟻を潰し始めたが蜂には対抗できずに群がられてしまっていた。
「キャン!」
それでも虫を攻撃し続けていたグエンだったがついに倒れてしまった。
「ボブさんグエンが!」
「大丈夫だ!グエンは霊体。時間がたてば復活する。それより虫達をどうするのかが大変だぞ。」
グエンが倒れたことで月兎がボブへ詰め寄るがボブは月兎を安心させ虫達への対処をどうするか話し始めた。
「分身をだせば蟻はどうにかなりますけど蜂と蚊はどうにも。」
「私のシャドーもこんな多くは対処できないわよ!蜂の天敵でもいれば…。」
月兎もナタリーも特に策がなく分身で虫達をブロックしてはいるがやはり蜂や蚊等の空を飛ぶタイプの虫には対抗できずにいる中、月兎の持っていた斧が熱を帯びた。
(温か!緋熊の戦斧が何か伝えたいのか…。熊?そうか!)
「二人とも!俺に策がある!」
緋熊の戦斧から熊の霊を出す事にした月兎はボブとナタリーにそう言うと戦斧から身体が緋色になっている熊の霊を出した。
「出てこい!【三日月】!」
「グォォォォ!!」
月兎は二年間で成長した緋色の戦斧に宿る熊の霊に【三日月】(みかづき)と名付けていた。
「この熊は!?」
「俺の武器に宿っている霊です!三日月!蜂と蚊を落としてくれ!」
「グォ!」
いきなり出てきた熊の霊に驚く二人をしり目に月兎が指示を出すと三日月は蜂の群れに飛び込んでいった。
「いけないわ!いくら熊でもこの数の蜂は殺られるだけよ!」
「大丈夫。三日月は能力があるから。」
あっという間に蜂に囲まれる三日月に思わずナタリーが止めようとするが月兎は余裕そうにそう言った。しばらくすると
「…なんか暑くないか?」
「確かにそうね。」
「それが三日月の力ですよ。見てください。」
ボブとナタリーが暑くなってきた事に違和感を感じていると月兎は蜂に群がられている三日月を指差した。そんな三日月を二人が見ると
「なんで蜃気楼が?」
「て言うか蜂達死んでない?」
「えぇ。あれが三日月の能力の一つです。本当は発火できるんですがここが森なんで弱めてるんですよ。まぁそれでも蜂は殺れますしね。それにアッチ見てください。」
月兎が三日月の能力を解説し更に別の方を指差すと蜂と蚊等が花に群がっていた。
「あれは?」
「それは私が。あれはみどり様の「誘惑花」だそうです。ありとあらゆる虫系の化け物に対して非常に良く効く花となっているそうです。もちろん普通の虫にも良く効きますよ。」
「自分も前日本で大百足という妖怪を倒すとき使わせて貰いました。」
「みどり様いわく本来は出せなかったがこの地は生命力が溢れている為何とか遠隔でだせたようです。」
ナタリーもシャドーに岩を持ってこさせ空から落とし虫を潰していき何とか虫の群れを倒しきれた三人だったが既に虫使いと密猟者のリーダーはいなくなっていた。
「逃げられたか。」
「そうね。何とか密猟者のリーダーである「ウォルター・キーン」は捕まえたかったんだけどね。」
「でもウォルターは有名な実業家なんですよね?すぐ捕まりますよ。」
「どうだか。お金持って高飛びでもするんじゃないかしら?」
「だな。」
密猟者のリーダーであったウォルターに逃げられ落ち込むボブとナタリーを慰めながら捕まえた密猟者達をつれながらみどりの待つログハウスに帰る月兎だった。
ーウォルター・キーン サイドー
「…グッ。ここは?」
月兎達から逃げる際に気絶したウォルターは気が付くとしらない場所にいた。
「ここは我らの基地だよ。」
そうウォルターの疑問に答えた声の方をウォルターが見るととある人物がいた。
「お、おま!いや、あなたは!」
「人がせっかく不老不死のなり方を教えてやったというのにへまをしやがって。もういい、死ね。」
「いやだ!まだ俺はやれる!金だってまだまだある!一回海外に逃げればまだチャンスはあるんだ!止めろ!止めてくれ!頼む!…ガハッ!」
少しずつ近付いてくる人物にひたすら話し掛けていたウォルターだったがその人物は全て無視してナイフをウォルターに突き刺した。するとウォルターからどんどんと血が抜けていきナイフを刺した人物に吸収されていった。
すべての血を抜かれカラカラになったウォルターを見た人物は、
「これを片付けておけ。」
と言った。すると
「分かりましたよ~。しかし恐ろしいですね。」
今まで静かにしていた男ーー虫使いが現れ虫にウォルターの死体を食べさせた。
「お前が言うか。まぁいい。少し寝る。」
こうしてウォルターは行方不明のまま海外へ逃亡したと処理されたのだった。
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