第193話契約
ー屋根裏ー
「グハッ!」
「月兎さん!」
血でできた槍に腹を貫かれた月兎が口から血を出すとそれを見た蛭男は
「これで終わりだな!」
と言いながら笑うと月兎から出た血を集め、自身の目の前に運ぶと
「おまえの血がどんなものか味わってやろう。」
そう言いながら血を飲み始めた。
「不味いな。食い物が偏ってる証拠だ。」
月兎の血を飲んだあとそう評価した男は次に春奈と七奈美の方を向くと
「次はお前らの血を飲んでやるよ。」
「お嬢様こちらに!」
「きゃ!」
といって庇い合っている二人に飛びかかろうとした。
しかし、
「フッ。ハハハハハハハハハ!」
月兎が倒れながら急に笑いだしたので蛭男は足を止めると
「何がおかしい!死への恐怖でおかしくなったか!」
そう月兎の方を見ながら叫んだ。しかし月兎はあい変わらず笑い続けると
「ハハハハ!…いやおかしくなった訳じゃない。…ハァハァ。お前が狙い通り血を飲んでくれたのが、…ハァハァ。面白くて笑ったんだよ。…ハァハァ。」
と息も絶え絶えになりながらも蛭男に話した。
「血を飲ませたぁ?お前がそんな傷を負ってまで血を飲まれる必要なんて無いだろ?」
月兎の話を聞いた蛭男はやはりおかしくなったか、或いは時間稼ぎなのだろうと思い再び二人に飛びかかろうとしたが
ガクッ!
「?なぜ足に力が入らないんだ?」
飛びかかろうとした蛭男はいきなり足に力が入らなくなり膝をついてしまった。更に、
「?視界が紅くなってきた?」
そう言いながら蛭男が辺りを見回すと
「きゃあ!」
飛びかかって来ない蛭男を見ていた春奈はそう悲鳴をあげた。
「何が起こってるんだ!」
いきなりの事でそう蛭男が怒鳴ると月兎が
「毒だよ。俺の血に毒を混ぜておいたんだ。…ハァハァ、お前は蛭だから俺を倒したら血を吸うだろうと思ってな。…あらかじめ血に毒を混ぜてたらやっぱり飲んだな。ハハッ…ハァハァ。」
と言い出しながら上半身を起こした。
「くそっ!貴様今すぐ殺してやる!」
蛭男は月兎に罠をかけられた事を知り怒りのパワーで立ち上がるとフラフラではあったが月兎へ近付いていった。
「月兎さん!」
「来なくて良い!何とかなる!」
七奈美が月兎の元へ駆け寄ろうとするが月兎はそれを止めるとすぐそこまできた蛭男を睨み付けた、
「貴様だけは必ず殺してやる!」
そう叫びながら蛭男が月兎へ攻撃をしようとした次の瞬間、蛭男の足元の床が無くなり蛭男が落ちていくと底に針山があり蛭男は何本もの張りに貫かれてしまった。
「ガッ!い、一体誰が…。」
『ワシだ。』
いきなり穴に落ちた蛭男がそう呻くと先ほどまで倒れていたはずのヤモリから声が聞こえた。
「き、貴様!」
『いくらお前に力を吸われたと言ってもここはワシの領域、そう易々と負けてはいられんて。』
そうヤモリは話すと蛭男が落ちた穴を塞ぎ始めた。
「お、おい!ちょっとま…。」
バタン!
蛭男が何か言おうとしていたが構わずに穴を塞ぐとヤモリは七奈美に近づき、
『早く契約をするぞ。』
と言った。
「あの、でも、まずは月兎さんを治さなくては。」
そう言う七奈美にヤモリは
『ワシと契約すればどうにかなるから大丈夫だワシは<家守>であり<矢守>であり<山守>でもあるんだ。守ることと治す事は同じこと。契約すればあの者も助かる。』
と言って七奈美に契約を急かした。
「わ、分かりました!どうすれば良いですか?」
『まずーーーーーーーーー。』
ここまでは意識のあった月兎も気を失ってしまい目覚めたのは三日後だった。
「月兎さん!無事に契約することが出来ました!ありがとうございます!」
初日の人見知りはどこにいったのか明るく月兎へお礼をする七奈美。それを見ている春奈も優しい笑顔を浮かべていた。
「まだもう少し休んでいかれては?」
「いえ、また新しい依頼がきましたしそろそろ会社にも顔をなさなきゃですから。」
まだ休んだ方が良いと春奈に言われた月兎だったが忙しいため早急に戻らなければいけないことを伝えた。
「月兎さん!私も一人前の術士になったらぜひ一緒に依頼を受けてください!」
「その日を楽しみにしてるよ。」
そう去り際に七奈美と約束をする月兎だった。
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