第190話一人の少女


 ー日本ー


 本郷から任された少女の家で保護者を待っていると妙齢の女性が家に帰ってきた。


「あら、お嬢様。お客様がいらっしゃったてたんですか。」

「あっ。えっと本郷さんから頼まれてきた中村です。」

「あぁ!私はこの家で勤めている春奈と言います。」


 女性ーー春奈がそう名乗ると少女が二人に近づいてきた。


「お嬢様。自己紹介はしましたか?」

「…してない。」

「しなきゃ駄目じゃないですか!」

「う…。ごめんなさい。」


 春奈に怒られた少女は月兎の方を向くと


「守屋 七奈美『もりや ななみ』です。」


 そう月兎に自己紹介をした。


「はじめまして。僕は七奈美ちゃんの術を見ることになってるんだよ。七奈美ちゃんはどんな術を使うのかな?」


 月兎が七奈美に質問をしたが七奈美は何も答えなかった。すると代わりに春奈が


「守屋家の術は本郷家と同じく式神を使う術です。ただ本郷家との違いは守屋家の式神は一体だけということです。」


 と答えた。


「一体だけというのは?」

「はい守屋家が式神として契約しているのはヤモリが長年いきることで妖怪化したもので長年守屋家はその妖怪と契約する事で栄えていました。一体した居ないため契約出来るのは代々ご当主様だけなのですがそれが災いして今回八岐大蛇との戦いの際にご当主様が亡くなられてからいまだに新しく契約が結ばれていない状態です。」

「なるほど僕はそのヤモリの妖怪を七奈美と契約させれば良いという事ですね。」

「はい。実はこの家にもお手伝いさんがいたのですがお嬢様が契約が出来ず収入が入らないので今は全員に暇が出されている状態でして。早急にお嬢様にはヤモリの妖怪を式神にしてもらいたいのです。」

「貴方はどうしてここに?」

「私は妖怪に両親を食べられ自身も食べられるといった時に亡くなった当主様に助けられ身寄りがないところをこの家において貰った恩がありますから、いつまでもお嬢様のそばにいたいんです。」


 守屋家の事を聞いたり春奈が働いている理由を聞いたりしていると外は暗くなりいつの間にか七奈美も眠ってしまっていた。


「あ、夜も遅いですし明日またきますね。」

「何もおもてなしが出来なくてすみません。」

「いえいた。。お気遣いなく。」


 そしてその日は近くのホテルに泊まった月兎は次の日守屋家に再びやって来た。


 ピンポーン


 ガチャ


『入ってきて。』


 ピンポンを押すとインターホンの先には七奈美がおり、門を開けて貰い月兎は再び守屋家に入っていった。


「おはようございます。」

「おはようございます!

「おはよ。」


 家にはいり月兎が挨拶すると二人ともあいさつを返してくれた。


「今日の予定としては、まず一回契約をしたいヤモリの妖怪をみたいです。」

「分かりました。妖怪はこの家の屋根裏にいると思います。よろしければ案内しますよ。」

「ありがとうございます!」


 春奈案内され屋根裏に行き、月兎が周りを見渡したが屋根裏には妖怪の姿が見られなかった。


「あれ?どこにも居ないですね。」

「妖怪は大きさを変えられますから恐らく小さくなって隠れながらこっちを見ているはずです。」

「なるほど。」


 と屋根裏を見ても月兎は分からなかったが春奈がいると言ったのでとりあえずあいさつをしながら契約の時間を待っていると七奈美がやってきたので契約の準備を春奈が始めた。


「じゃあ七奈美ちゃん。今回の計画でもし失敗してもまたチャンスはあるから今回は本心で妖怪と話すんだよ。そうすれば必ず向こうも答えてくれるから。」

「…うん。」


 そう月兎がアドバイスを七奈美にしていると春奈の準備が終わったので七奈美がまず妖怪へ話し掛け始めた。


「お願いします、新しい守屋家の当主として契約者をしたいので一度姿を見せてください。」


 七奈美がそうお願いすると


 スッ

「あっ。来た。」


 奥の物陰から大きくなりながらイモリの妖怪が姿を現すのだった。

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