第142話襲撃28


 -皇居ー


 天海の術である鯨を砕いた九尾だったが天海が慌てていないことに違和感を感じていた。


「…なんでそんな冷静なのよ。」

「そんなことは無いわよ?」

「そう。なら貴方達!やりなさい!」


 違和感を感じた九尾が聞いても天海はなにも答えなかったのでそのまま止めを刺すように命をだす九尾。それを聞いた兎が天海に近づくとまた足を使い先ほどの鯨のヒレのように天海を切り裂こうとした。しかし、


 ピチャッ


 と先ほど砕いた鯨の破片が小魚になり兎に体当たりをした。そんな攻撃でダメージを負うような兎ではないが急な攻撃立ったこともあり攻撃を止めてしまった。それをみていた九尾も


「何?そんな小魚じゃうちの子達は傷つかないわよ?」


 と馬鹿にした。それを聞いた天海は


「水滴岩を穿つ(けんてきいわをうがつ)。この言葉を知ってる?」


 と九尾に聞き返した。


「知らないわよ。なにそれ。」

「水滴でも絶えず岩に当たり続ければ岩に穴を空けると言うもので努力し続けること大切さを説いたことわざよ。」

「それが何よ。」

「私はね。これをそのままの意味で使うの。いくわよ【水滴岩を穿つ】(けんてきいわをうがつ)。」


 意味を知らないと言う九尾に意味を説明した後そう天海が唱えると砕かれ地面に転がっていた鯨の残骸の氷が全て小魚になり天海の側にいた兎に殺到した。


「ピィィィィィィィ!!!」

 ピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチ


 無数の小魚に群がられた兎はなすすべなく倒された。それをみていた九尾は


「早くそんな小魚倒しなさい!」


 と指示を出した。その指示を聞いた馬・猪・蛇・虎が攻撃を始めた。


「ヒヒーン!!」


 鯨の時と同様に先ずは馬が最初に小魚の群れに近づき後ろ蹴りを食らわせるがさながら大海の捕食者から逃げる小魚の群れのように自在に群れが動き馬の蹴りをかわすと逆に群れの中に馬をいれると兎の時と同じ様に何匹もの小魚が何十、何百、何千、何万回も当たり続け馬を倒した。


「シャーーー!!!」

 バクン!


 次に現れた蛇は口を大きく開けると小魚の群れを食べた。それを見た九尾が


「良くやったわ!」


 と褒めたが


「まだよ。」


 と天海がいうのと同時に


 ボコボコボコボコ

 パン!


「グシャァァァ…ァ。」


 蛇の身体が内側から膨れ上がり破裂をして中から小魚達が一斉に出てきた。


「グルルルルルルルル!」

 ブン!


 蛇がやられたのを見た虎は風を操り小魚を捕まえようとするが小魚達は間を空け捕まえにくくする事で対処しイライラして雑になった所を一斉に攻めた。


「キャンキャン!!」


 こうして虎もやられたが虎に群れた小魚へ猪が一直線にぶつかりにいった。


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!


 そんな猪をさながら闘牛士のように避け続ける小魚達。そのうちビルの間際に小魚達が誘導するが猪は気づけずそのまま突進をして


 ガラガラガラガラガラ!!!


 ビルの下敷きになってしまった。


「さぁ?残るは貴方とその猿だけね?」


 と天海は鯨の時も九尾の側から離れずに護衛として九尾を守っていた猿を見ながら九尾にそう言った。


「ま、守りなさい!」


 そう猿に命令する九尾。命令された猿は


「グギャ!」


 とビルの残骸を天海に投げつけるが小魚の群れが天海の前に現れ天海を守るとそのまま猿に飛びかかり猿を倒した。


「これで全員倒したわね。最後に何か言いたいことある?」

「無いわよ。」

「それじゃあ死んでもらうわよ。」


 猿を倒した後遂に九尾を追い込み倒したがあまりの呆気なさに天海が肩透かしをうけていると倒れた九尾がみるみる姿を変え猫に変わった。


「な!?」


 と天海が驚いていると


「ふん。十二支には十二支になれなかった動物がいるでしょ?」

「…なるほどね。だからそこまで強く無かったのね。」

「ふん。嫌味かしらね。」

「で?本物は何処にいるの?」


 自分の正体を九尾ーー猫が明かしたので本物の九尾の居場所を聞くと


「フフフ。今頃は封印を解いてるわよ。」


 そう猫に返された。すると


 ゴゴゴゴ


 地鳴りがしだしたので


「不味いわね。」


 封印が解けたのを察した天海だった。

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