第137話襲撃24


 -皇居ー


「じゃあ早速殺り合おうか!」


 そう笑いながら話し掛ける酒呑童子に


「いや、本気で殺し合うのであれば少し待て。」


 というといきなり自分の腹を裂いた。


「?なんだ?いきなり自分の腹なぞ裂いて?」


 そう不思議がる酒呑童子だったが


「まぁ待て。そろそろ来るぞ。…これをやるとしばらく力が使えなくなるから出来れば使いたくなかったんだがな。」


 と源兄に言われた。

 そしていつの間にか源兄と酒呑童子の間に一振の刀が刺さっていた。


(なんだ?いつの間にこんな刀が置かれた?というか特級の血はどこに行った?地面が乾いてやがる。)


 いきなり現れた刀に酒呑童子の意識が持っていかれていると源兄の怪我はいつの間にか治っており刀ぬ近付くと地面から抜き去った。すると、ムワリと血と甘い花の香りが辺りを漂いだした。


「!?」


 長年の感でこの香りは不味いと感じた酒呑童子が自身の鼻をつまむと


『あら?この香りはお嫌でした?』


 とどこからか花魁のような姿の女性がいつの間にか酒呑童子の横におり四つある腕の一つに触れた。


 ザクリ

「なんだと!?」


 気づけばその女の触れた腕は切り落とされていた。これにはたまらず距離を置く酒呑童子だったが女はいつの間に源兄の元にいた。


「おい。その刀は一体なんだ。俺に傷をつける武器なんざそこまで数は多くない筈だ。その武器は見たことも聞いたこともない。」


 源兄が出した刀の異様さに思わずそう酒呑童子が訪ねると


「…この刀は俺が特級になったばかりの頃にとある東北の山の村で祀られていた刀だ。その村では毎年周りの村から女をさらい祀っていた刀で殺し魂は生け贄、肉体は村人達で食べると言ったことを千年ほどしていてな俺は依頼でその村を潰した時に見つけたんだ。色々あって今は俺が持ち主だ。」


 と源兄に返された。


「千人ぽっちじゃ俺を斬るほどの刀にはならねぇ筈だがな。」

「祀られていたから少し神性があるんだよ。どちらかといえば邪神だがな。」


 話を聞いても納得が出来ていない酒呑童子にそう源兄が話していると


『ねぇ?そんなバケモノじゃなくて私を見てよ旦那様?』


 そう言いながら女は源兄にしなだれかかった。


「今は戦闘中だ。分かるだろ?」

『なら早く片付けましょう?』


 源兄が女を引き剥がすと女がそういいながら刀の中に戻り花の香りがより一層ひどくなった。


「そのつもりだがその前に。」


 女が消えた後刀を握りながらそう言い聖歌隊を逃がそうと後ろを向く源兄だったが、


「あー間に合わなかったか。」


 聖歌隊達は皆刀の女に魅せられてしまい心ここにあらずといった様子だった。


「…神父。コイツらを任せて良いか?」


 源兄がそう呟くと


「分かりました任せて下さい。」


 とガスマスクをした神父が現れた。


「準備が良いな。」

「神父として当然の備えです。」


 ガスマスクに思わず源兄がそう突っ込むと神父にそう返されてしまった。

 そうして神父に聖歌隊を任せた源兄は改めて酒呑童子に向き直り


「待っててくれてありがたい。おまえなら殴りかかってくると思ったがな。」


 と言うと


「はっ。良く言うぜ。あの女が刀の中からこっち見てたくせによ。」

『当たり前じゃない。旦那様を攻撃なんてさせないわよ。』


 そう酒呑童子と刀の女が言った。


「で?ようやく俺はお前と殺り合えるんだな?」

「あぁ。この刀が俺の力かは謎だがな。」

「なに言ってんだ。その刀はおまえのもんなんだろ?だったらお前の力だろ。」

「フッ。妖怪の癖に変わったやつだな。」

「?俺は好きなだけ強いやつと殺し合いたいだけだ。よっぽど妖怪らしいだろ。」

「そうだな。…では行くぞ!」


 そう源兄が言うと今まで普通だった刀が深紅に染まった。


「おう!掛かってこいや!こっからは俺も本気だ!」


 そう言う酒呑童子はグググと身体が大きくなり斬られた腕もまた生えた。


「まだ本気ではなかったのですか。」


 聖歌隊を避難させた神父がそう驚いているのを尻目に


「「いくぞ!覚悟!」」


 源兄と酒呑童子の本当の殺し合いが始まった。

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