第129話襲撃17


 ー皇居ー


 宝樹院のとっておきだという木と実を切り裂いた隠神刑部は急に身体がふらふらして膝をついた。


「な、なんだこれは?」


 いきなりフラフラしだした刑部がそう聞くと、


「これはマルーラの実じゃ。この実は発酵すると酒のようになるんじゃ。それをワシの術で強化しての。お主にも効くようになっておるんじゃよ。」


 と宝樹院が答えた。


「これ日本の植物ではありませんな。」


 そう宝樹院の隣に立ちながら聞く将軍。


「そうじゃよ。なんだったら日本への輸入は禁止じゃ。」


 そう言いながらニヤニヤ笑う宝樹院に将軍がため息をついていると


「そんなたかが実で俺が止められる訳がないだろ!」


 と刑部が怒鳴ると獣人のような姿だった刑部が野生のタヌキのような姿に変化し姿を消した。すると


「なっ!」

「ぐっ!」


 と将軍は再び腕を、宝樹院は足を食い千切られた。

 更に


「変化!」


 と刑部が叫ぶと千切られた腕が将軍の姿に、千切られた足が宝樹院の姿に変化した。


「はは。…まるで貴様らのような強さには作れなかったがそれでもかなり近づかせる事はできた。…せいぜい苦しむんだな。」


 そう言うと倒れこんで眠りだした刑部。刑部は眠ったが変化で現れた宝樹院と将軍は元には戻らずそのまま本物の二人へ襲いかかった。


「くっ!将軍よこれを傷口につけろ!」


 そう宝樹院が種を将軍に投げ自分の斬られた足にもつけた。すると


 モリモリモリ


 とみるみる植物が生えてきて足の形になった。

 将軍も斬られた腕につけると


 モリモリモリ


 と腕の形に生えてきた。


「宝樹院さま!これは?」


 と攻撃をかわしながら将軍が宝樹院に聞くと


「これは宿り木を加工し、術として作り直したものじゃ。安心せい!この植物は寄生しているようなものじゃがワシらがいないと死ぬのでな。裏切ることはないぞ!」


 ニセ将軍の攻撃を避けながら宝樹院がそう答えた。すると続けて


「しかも好きに形を変えられるんじゃよ。こうやっての!」


 と次の瞬間宝樹院が植物は植物でできた足で将軍を蹴ると足が変形し、躱すニセ将軍を追いかけて蹴り飛ばした。


「なるほど。」


 そう感心する将軍には、ニセ宝樹院が植物を生やし攻撃するが、


「こうかな…。うむ、できた。」


 と将軍が植物でできた腕を刀のように変形させ振り抜くと植物で出来ているとな思えないほどの切り口で自身に迫る植物をすべて切り裂いた。


「どうじゃ?すごいじゃろ?」

「はい。…どうせ刑部に利用された時点でもう腕はくっつけることはできませんが良い義手が手に入りました。ありがとうございます。」

「うむ。本当は宝樹院家一門にしか使うつもりはなかったがの。お主に抜けられるとキツいから使ってしまったわい。」


 そう宿り木の使い心地について話していると再びニセ宝樹院とニセ将軍が襲いかかってきた。


 ズズズ


 ニセ宝樹院とニセ将軍が本当の宝樹院と将軍に攻撃をする瞬間、宝樹院の義足から蔦が生えてきてニセモノ二人を拘束した。


「案外簡単に片付きましたな。刑部の話だと中々倒せなそうでしたが。」

「ワシらクラスまで強くなればいくらニセモノでもかなり強いからの。まぁでもやはり強さのコピーは限界があるだろうて。」

「ですな。」


 二人が話しているあいだにもニセモノは拘束を外そうと暴れるがだんだん動きが鈍くなりそのままミイラみたいにカラカラになった。


「本来は虫に寄生し栄養をむさぼる冬虫夏草だ。我が宝樹院の力で動物からも栄養を吸う様に改造した。すごいじゃろ?」

「絶対に野生にばらまかないでくださいよ。」


 カラカラになったニセモノを見ながら自慢してくる宝樹院へ不安になった将軍がそう言った。

 ニセモノを倒せたのを確認した二人は眠った刑部の元にいき


「では止めを刺すかの。」

「えぇ。いきますよ。」


 と将軍が刀で心臓を刺した。すると、


 プクーーーー


 死んだはずの刑部がどんどん膨れていき


 パン!


 と弾けた


「ゴホッゴホッ。これはなんですか?」

「スンスン。これは…不味い!睡眠薬だ!」


 爆発した刑部から甘い臭いがし、思わず咳き込む将軍と何の臭いか気が付く宝樹院だったが時すでに遅しで二人とも眠ってしまった。


『ホッホッ。ワシはタヌキだぞ?化かされぬようにしなければならんのにまだまだじゃな。ではワシはもう縄張りに帰るとするか。良い暇潰しにぬったわい。ハッハッハッハッハッハッ!』


 そんな眠ってしまった二人を何処からか見てひとしきり笑うと帰っていく隠神刑部であった。

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