第79話呪ってきた相手が分かったらしい。


 ー夜中ー


「ギャァァァァァ!」

「っし。倒せたか。」


 小熊の戦斧を手に入れてから何回目かの妖怪退治だが月兎は手応えを感じていた。


『その斧は中々使い心地が良さそうだな。』

「うん。破月との術の相性も良いし再生のお陰で手入れの心配もないから使いやすいよ。」


 そういいながらキーホルダーに戻した斧を見つめる月兎だが実はこの武器をかなり気に入っていて刃物の手入れを動画で調べて家でちょくちょく手入れをしたりしている。

 今日も斧に毒を纏わせて戦っていたので早く帰って手入れしなきゃと思っていたりしている。


 ピピピーピピピーピピピー


 帰ろうとしたまさにその時協会から支給されたスマホが鳴り出した。


「?なんだろ?」


 ピ

 ガチャ


「はい。」

『もしもし。鈴華です。』


 電話に出ると鈴華からの電話だった。


「はい。どうしました?」

『呪いの件なんだけど色々わかったよ。』

「梨沙ちゃんの件ですか?」

『えぇ。その梨沙って子の学校に足立家と情報機関の者が行った結果、梨沙ちゃんを呪った子も利用されていたことが分かったわ。』

「利用されていた?」

『えぇ。どうやらある男に恨みの気持ちを増幅させる術をかけられて梨沙ちゃんを呪うように仕向けられたみたい。』

「そんなことが出来るんですか?」

『どうやら呪った子が好きな男の子が梨沙ちゃんのこと好きだったらしくてね。早い話が痴情のもつれね。』

「あ~。なるほど。」

『もっとも梨沙ちゃんはその男の子のこと何とも思ってなかったみたいだけどね。』

「悲しいですね。」

『青春よ。青春。…で、その後呪った子についていた術の痕跡をたどった結果、今回の首謀者のアジトが分かったのよ。』


 と呪いの件とは言っていたが思っていたより状況が進んでいて驚いた月兎。


「もうそこまで分かってるんですか?」


 と聞くと


『えぇ。他にも色々分かったわよ。』


 と言われた。


「他にもってなんですか?」

『情報機関がその例のアジトに侵入したらしいんだけどそしたら最近私達協会を悩ませていて、あなたが山梨で倒したような異常な成長をした妖怪が沢山居たらしいわ。』

「本当ですか!」

『本当よ。その後すぐ人が来たからそれ以上調べることは出来なかったんだけどそこまで聞けばどれだけ危険な奴らかわかるでしょ?』

「はい。でも何でその事を自分に教えてくれるんですか?」

『近々その組織を検挙しに行く事がきまったんだけど貴方にもそのメンバーになって貰いたいのよ。』

「え?でも俺って協会入ったばっかりだしまだ5級のペーペーですよ?」


 いきなりそんな大役を与えられそうになった月兎は自分の階級を理由に断ろうとしたが、


『大丈夫よ。だって貴方すでに異常個体の妖怪と戦って倒しているし貴方自分が思ってるより強いわよ。3級を一回だけとはいえ倒しているし。新しい武器も手に入れたりみたいじゃない。』

「ハハッ。まぁそうですね。」

『しかも貴方今も妖怪倒してたでしょ?』

「倒してましたよ。」

『なら良かった。貴方昇格よ。今日から4級。だからペーペーじゃないわよ。』

「え?」

『それじゃあ詳しい話はまた今度。支部で話すわ。いつ話すかの予定は後で連絡するわね。じゃ。』

「え?ちょ、ま。」


 プツ、プープー


「えぇぇ。」


 いきなり沢山のことを言われて頭が混乱しながらも家に帰る事にした月兎だった。


 ー自宅ー


「にしても怖いな~。俺ってちょっと前まで只のサラリーマンだよ?何であんな危ない組織にいかなきゃならないんだよ。」


 あの後自宅に帰ってきた月兎はご飯を食べると斧を磨きながら思わず愚痴った。


『良いじゃないか。山梨での借りを返すと思えば。』

「にしたって。案なのがいっぱい居るってこでしょ?危ないって。」


 破月は乗り気なようで月兎を煽るがいまいち月兎が乗り気にならない。すると、


『あるじ様大丈夫ですよ。雲居家で鍛えたじゃないですか。しかも今はこの斧もあります。勝てますよ。』


 と観月が言ったので


「そうかな?」


 と聞くと


『そうです!』


 と返された。


「じゃあ頑張ろうかな。」

『はい!その意気です!』

『なんか我と対応が違くないか?』

「当たり前だろ!お前みたいな戦闘狂と観月達を一緒にするなよ!」

『な、何をいうか!』

『二人とも落ち着いて下さい。』


 観月の励ましでやる気を出した月兎に対して文句を言いもめてしまう月兎と破月。それを見て何とか止めようとしてオロオロする観月達、そんな彼らを見ながら小熊の戦斧はチリーーンと風鈴のような音をだすのだった。

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