第63話心中穏やかではない


 ー自宅ー


 雫との電話を終えてご飯とお風呂も済ませた月兎はゆっくりしていた。


「はぁ~。しかしいくら俺が珍しいからってこんな短いスパンで特級にバンバン会うのは疲れるな。」

『なら会わなければよい。』

「そういうわけにはいかないでしょ。人間の世は力だけが全てじゃないんだから。」

『面倒だな。』

「そうだよ。しかも万が一戦うなんてなったら俺たちなんて一溜りもないでしょ?」

『そうだな。今の我では特級には勝てんな。』

「今じゃなくても勝てないでしょ。」

『そんなことはないぞ!』


 そんな風に破月と喋っているともうそろそろ寝る時間になった。


「それじゃあ明日も忙しいからもう寝るよ。」

『…そうだな。』

「それじゃあおやすみ。」


 そして月兎は眠った。


 ー夢の中ー


「ここは夢の中か?…ってことは破月か観月に呼ばれたのか?」


 何度か破月に呼ばれている月兎は周りを見渡していると


『流石に慣れたか。こっちだ月兎よ。』


 そう呼ばれたのでそちらを見ると相変わらず大きな蛇である破月がいた。


「何かさっき良い忘れた事でもあるのか?」


『まあそうだな。実は我が戦闘や日常でも姿を現せるようになってな。それを教えておこうと思ってな。』


 そう言われた月兎だったが雲居家では妖怪を表に出すということを教えて貰ってなかったのでそんなことができるのか疑問に思った。


「宿している妖怪を表に出すなんてことできるの?雲居家の人達にも教えて貰ってないよ?」

『その雲居家で宿している妖怪を表に出している人間に会ったこともあるし見たこともあるだろう。』

「そんなことあったっけ?」


 そう破月にいわれ雲居家での日々を思い出していると


 ーーーーーーーーーー回想ーーーーーーーーーー


「月兎さん。余りしゃべらなかったけど月兎さんがきてから久しぶりに屋敷が元気になったわ。ありがとう。」

「いえ。そう言っていただけてうれしいです。」

「だからね。これはそのお礼…お願いね?みっちゃん。」


 と和子が言うと何処からか和傘を差して着物を着た子供が何処からか現れた。


「この子は私に宿っている座敷童子のみっちゃんよ。この子と握手すると幸運に恵まれるのよ。握手していきなさい。会社の為にもなるわよ。」

「ありがとうございます!」


 そうして座敷童子のみっちゃんと握手をして雲居家を後にした。


 ーーーーーーーー回想終了ーーーーーーーーーー


「あ!和子さんか!確かに宿していた座敷わらし出してた!」

『であろう?確かに宿している妖怪を出すのは特別なやり方の契約をしなければならないができることは出来る。恐らくその和子とかいう女の家も昔にその座敷わらしと契約したのだろうな。そして今までその契約がいきているのだろう。』

「へえ~。」


 そう感心していると


『感心している場合ではないわ!』


 と怒られた。


「ごめん。で、破月が俺の体から出てこれるようになってどんなことができるの?」

『まぁ戦闘時に我も手伝えるようになるから単体相手には数的有利になり、複数回の相手には数的不利が緩和されるという利点や我が蛇であることから不意打ちなども出来るな。あとより敵の不意打ちに気付きやすくなるな。』

「破月が傷ついたらどうするの?」

『我とお主は一心同体。例え我がお主の体から出てこれるようになったとはいえその体は毒を固めたものでそこに意識を飛ばしているだけだからな死にはしない。』

「なるほどね。」

『それにお主都はあまり離れられないからな。』

「そうなんだ。」

『あぁ。日常でもお主が食べているようなものが食べることが出来るようになったぞ。』


 と言われたのでうまく行けば妖怪狩りしなくても済むようになるのかと


「それって意味ある?」


 と聞くと


『無い。』


 と言われた。


「じゃああげるわけ無いでしょ?こっちはお金かかるんだから。」

『ふん。ケチだな。』

「そんなこといわないでよ。で?どうやったら破月は出てこれるようになるの?」

『例のあれをやればよい。』


 と破月が言ってきたのでもしやと思い思わず


「…もしかして噛む?」


 と月兎が聞くと


『うむ。噛む。』


 と言ってきた。流石に三回目なので覚悟を決めた月兎が


「良し!来い!」


 と腕を差し出すと


『では。』


 ガブリ!


 と遠慮無く破月が噛みついた。


(やっぱいて~~~~~~!!!!)


 と思いながら腕に噛みつく破月を見てから意識を失っていく月兎だった。

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