第62話すいません


 ー自宅ー


 協会で支部長である鈴華と久しぶりに話し合いを終えた月兎は自宅に帰ってきた。


「フゥー。じゃあめし食う前に雫ちゃんに電話しとくか。」


 そういいながら雫に電話を掛けると、比較的直ぐ出た。


「もしもし雫ちゃん?いや~連絡遅くなってごめんね。色々とゴタゴタして…。」

『遅いです!どれだけ心配したと思ってるんですか!』

「ごめんなさい。」

『良いですか?貴方は危ない立場にいるんですよ。』

「それってさっき鈴華さんがいってた下手したら抗争が起こってたかも知れないってやつですか?」

『そうです。今回の件下手したら宝樹院家と我が海野家の本家である天海家の戦争になってたかもしれないんですよ。』


 それを雫から聞かされすごいことになってたのかと冷や汗をかきながらも気になったことがあったので聞くことにした月兎。


「でも俺って別に強く無いですし名門の出でもないですしそんな特級同士が戦うほどの事じゃないと思うんだけどなんでこんなに大事になるんだろう?」

『そうですね。まず将来性です。貴方は確かにまだ弱いですが宿している妖怪との契約によって将来的に不老不死になり得る可能性があります。これはつまり貴方が特級に成りうるということです。これは五人しかいない特級がいない今とても意味を持ちます。』

「まぁそれはなんとなく分かる気がしないでも無いな。」


 とそういわれれば何となく分からないでも無いなと思っていると


『それにどちらかといえばですが血の問題。こっちの方が重要でありますね。』


 と言われ疑問に思って


「血の問題って?」


 と聞くと


『血の問題とは私達術士の血が濃くなるという問題です。』

「でも術士ってそんなに少なくはないんじゃ?」

『確かにそこまで少なくはありません。しかし家同士で争っていたり、秘匿している術があるのであまり社交的ではない家も多くたいがいの家は自身の分家・本家筋での婚姻がメジャーです。なのでどの家とも血が繋がっていなくどの家とも角質がない貴方はとても貴重な存在です。』


 と言われてモテるかもしれないと嬉しいやら遠回しな大人の事情を聞かされ悲しいやらで複雑な思いをしていると


『なので貴方のことは海野家や雲居家が全力で守りますよ。』


 と言われた。


「とにかく連絡が遅くなってすいませんでした。」

『次からはちゃんとしてくださいね。』

「はい。」


 そういって電話を切ろうとした月兎だったが


『あ!待ってください!』


 と雫に止められた。


「どうした?」


 と聞くと


『今回の件の報告を天海家にしたら貴方を連れてくるようにと言われました。』

「え?」


 と衝撃なことを言われた。


「え~~~~~!!!!」


 ー海野家ー


 ピ


「ふぅ。」


 先ほどまでしていた月兎と電話を終えるとベットに腰掛けた。


「にしてもなんともなくて良かったですね。今は妖怪や正体不明な団体の暗躍など問題が山積みです。そんな中戦争なんて行おうものならどんな災厄に見舞われていたことやら。それが分かっているから宝樹院家も簡単に手下人を捕まえたんでしょうね。」


 そう考えを巡らせている雫の元に誰かがやってきた。


 コンコン


「はい。」

「私だ。」

「お父様。どうかされましたか?」


 海野家の当主である雫の父が雫の部屋にやってきた。


「うむ。月兎君に天海家から呼ばれている事は伝えてくれたか?」

「はい。ちょうどさっき電話がきたので伝えて起きました。」

「そうか。どうやら宝樹院は月兎君の抱き込みをしようとしているらしくてね。」

「そうなんですか?」

「あぁ。宝樹院の次期当主ではないかと言われている宝樹院 みどりがいるだろう?彼女と月兎君をくっつけようとしているらしい。」

「そんなことしたら今度こそ戦争じゃないですか?」

「だが月兎君が結婚式したいと言われたらこちらはなにもできん。しかし天海家には年頃の娘がいなくてね。」

「…まさか。」

「そういうことだ。だから雫にはとりあえず月兎君が天海家行くとき一緒に行ってくれ。無理に結婚しろとはいわないが仲良くはしてくれよ。」

「その点は大丈夫です。彼は術士の常識については無知ですから良く私に相談をしてくれるので仲は良好です。」

「そうか。それは良かったよ。…じゃあご飯を食べに行くか。」

「はい。」


 こうして父親と共に夕食に向かう雫だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る