第57話閑話 木野山の動機
ー宝樹院家地下室ー
月兎との夕食会を終えた辰也と与助はみどりを部屋に戻すと宝樹院家の地下にやって来た。
「木野山はどうかな?」
「はっ。いまだに気を失っております。」
「まぁ会いに行けば起きるじゃろ。」
地下室に降りると辰也と与助を待っていた植田が二人を木野山の場所に案内していった。
「こちらです。」
「うむ。与助様どれぐらいで起きると思いますか?」
「ワシが起こすから今すぐじゃな。」
そういうと与助から強いプレッシャーが放たれた。
「ッッッ!何だ!」
プレッシャーを浴びて気絶していた木野山は勢い良く目を覚ました。
「…ここはどこだかよく知らないがさしずめ宝樹院本家だろうな。与助も居るしな。」
「貴様!与助様に対して何という口のききかただ!」
目を覚ました木野山は回りを見渡し辰也と宝樹院を見つけると今の場所にあたりをつけた。
そんな木野山の発言に対して植田が怒気をあげるが
「植田。そう怒らんでもよい。」
「はっ!」
「して木野山よ。なぜここに居るのか分かるかの。」
「…本来俺がやったことは重罪。今すぐ術士専用の刑務所に送られても可笑しくないがここは宝樹院本家…ということは俺の何かをほしいってことだろ。」
木野山がそういうと与助はニヤリと笑いながら
「そうじゃ。ワシらはお主の香りの術がほしいと思っておる。」
「まぁだろうな。今まで香りの術なんか見向きもしてなかったのに今回の件でイメージが変わったか。」
「そうだな。宝樹院家の当主としてお前のその術はかなり魅力的だ。我ら遠距離系の術士は戦闘時身体が弱いのが短所だがこの術があればその短所をなくすことができる。」
「というわけだがどうじゃ?今お主が教えてくれれば木野山家には今回の件責任をおうことはしないでおこう。」
「…本当だな?」
「うむ。」
与助が木野山家を守ると言うと木野山は安心した様に今回の動機について語りだした。
「そもそもお前達は香りの術についてどれだけ知っている。」
「人によって効く術が違うこと、強化や弱体化など術の幅があること、嗅がれないと効果がないこと、準備に時間が掛かる、それぐらいじゃ。」
「自分もそうです。」
「私もです。」
「そうか。実際俺以外の木野山もそれぐらいしか知らないだろうな。俺たち木野山は宝樹院の分家の中でも力がないのは知ってるな。」
「あぁ。香りの術は余り戦闘には使えないからな。」
「だから俺ら木野山は木尾家や山岡家・草加家など数ある分家からはぶかれていてなそれが嫌で俺は香りの術を強化したんだ。」
「そのような理由があったのだな。」
「初めは無理だと思っていたがな。何とか術の強化ができてからはその力を使って成り上がったという訳だ。」
「うむ。そうか。お主がなぜこんなことをしたのか気になっていたがそういうことだったのじゃな。」
そう与助が納得していると今度は辰也が
「では香りの術の強化の仕方を教えてくれ。」
「拳法の毒手を知っているか?」
「毒に手を浸けて手に常時毒を纏わせる拳法だったな。」
「俺もそれをやったんだ常に身体に香りを纏わせた。その結果俺はいつでも香りを出す身体になったんだ。」
「それが強化の仕方か?」
「それだけじゃなく少しずつ術を自身の血にまぜこんだんだ。そうすることで香りの術との親和性が上がった結果あそこまで強くなれたんだ。」
「…つまりお前だからあそこまで強くなったってことか?」
「な!では宝樹院家の強化にはならないではないですか!」
と黙って話を聞いていた植田が怒ると
「まぁ。約束してしまったからの。木野山家はワシが面倒を見よう。お主の様になるものが出てくるかもしれんしの。」
「まぁせいぜい頑張ることだな。」
「うむ。ではまた寝るが良いぞ。」
もう話は終わりとばかりにまた木野山を眠らせた与助はうに対して
「ではこのものを協会に受け渡してもらえるかの?」
「はっ!」
と命令するし、
「では我らももう上に行くとしよう。明日かく分家の当主を呼んでワシが木野山を保護することを言わんと先走るものが現れても可笑しくないのでの。」
「分かりました。」
と話ながら地下室を後にする辰也と与助であった。
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