第56話食事会


 ー宝樹院本家前ー


「スッゴいな…。」


 木野山を拘束して一週間後月兎は植田に言われた通り宝樹院本家にお呼ばれしていた。

 月兎が宝樹院へ呼ばれるのが一週間後になったのは木野山を拘束した後に我々の会社や他の会社へおこなった無理な契約への対応に宝樹院側が追われていたためである。

 …契約への対応の際にかなり無理難題をいってきた会社もあったようだがそこは金の力でねじ伏せたらしい。

 月兎の会社も色々な会社との契約の見直しが必要だったが社長が入院したため様々な会議をしていたため一週間後に呼ばれたのは僥倖だった。


「ふぅー。じゃあ行くか。」


 宝樹院家に呼ばれるということだったので新しいスーツをきた月兎は緊張しながらピンポンを押した。


 ピンポーン


『はい。』

「今日約束をしていた中村月兎です。」

『どうぞお入り下さい。』


 ガチャ


 ピンポンを押し用件を述べると大きな門が自動で空いた。


「おぉー。」


 思わず声が漏れながら門をくぐり家に入って行く月兎。


「君が月兎君だね。今回は色々と宝樹院が迷惑を掛けたね。」


 そういいながら当主が月兎を迎え入れた。


「初めまして。中村 月兎です。」

「私は宝樹院家の当主の宝樹院 辰也【ほうじゅいん たつや】だ。よろしく頼むよ。」


 そう自己紹介を終えると月兎は当主の部屋に案内されそこで話をすることになった。


「では改めて月兎君今回はうちのものが迷惑を掛けたね。」

「いえ。こちらとしては元通りなったのでなにか要求するようなことはしないそうです。」

「それはありがたいよ。それに木野山の捕獲にも手を貸してくれたようだね?」

「いえいえ。自分は動きを止めたぐらいのことしかしてないですから。」


 話をしていると月兎が戦闘に加わったことにたいして辰也が頭を下げて謝ったので慌ててそういうとおわびとして夕食に招待された。

 こんな目上の人との食事はしたことがないのでできれば遠慮したかったが。


「では是非我が家の夕食にお呼ばれされてくれ。」

「それはお手間になってしまいませんか?」

「いや、そんなことはないよ。是非来てくれないか?」

「…分かりました。」

「そうか、良かったよ。」


 こう言われると断りずらかった。

 そうして二人は夕食の時間まで話をしていて夕食の時間になったので二人で夕食の間にいくのだった。


 ー夕食の間ー


 月兎と辰也が夕食の間にいくと既に若い娘と老人という二人の人物がいた。


「他の人達は今日は居ないようだな?」

「うん。ママもあにぃも二人とも自分の会社が忙しいから今日はごはんいいってさ。」

「そうか。月兎さん。この子は宝樹院 みどり。私の娘で次期当主候補です。」

「どうめ。」

「どうも!」


 と明るい女の子と挨拶をかわした。


「そしてこのお方が我が宝樹院家の守護神であり五人しか居ない特級の一人である宝樹院 与助【ほうじゅいん よすけ】様です。」

「このお方が…初めまして中村 月兎です。」

「うむ。よろしくの。」


 娘であるみどりの向かいに座る老人を月兎は前当主かと思っていたら特級であると知り驚いた月兎だった。


「では食べようか。」


 こうして四人での食事会がはじまった。


「どうだろう月兎君。」

「美味しいです。これ一体何のお肉なんですか?」

「そうか。これは我が宝樹院家が持っている山で生きている猪だよ。」

「そうなんですね。初めて猪を食べましたが美味しいです。」

「へー。うちは大体あの山でとれる猪やら鹿やらを食べるから普通だと思ってた。」

「ホッホ。昔はよく食べていたが今は珍しいからの。ワシはこっちの肉の方が馴染み深いがの。」


 こうして比較的穏やかに食事会を終えると少しして月兎は帰ることにした。


「では帰りますね。食事ごちそうございました。」

「こうして知り合ったのも何かの縁。また何かあったらきなさい。」

「そうだの。いつでも待っているぞ。」

「またきてね~。」


 こうして何事もなく宝樹院家での食事会を終えられてホッとした月兎だった。

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