第29話修行パート2


 ー修練場ー


 約束の時間10分前に修練場に来た月兎だったがもう既に当主が来ていた。


「すいません!遅れました。」

「いやいや、時間通りだよ。色々準備があって早く来てたんだよ。」

「準備ですか?」

「ああ。それがこれだよ。」


 というと修練場に布団が敷いてあった。


「布団ですか?」

「布団だよ。あと一人人を呼ぶよ。おーい!里美!」


 そう呼ぶと修練場に雲居家の長女・里美が現れた。


「里美ちゃん?学校どうしたの?」

「ちゃんと術士と関係がある学校だから理由があれば公休になるから大丈夫だ。今日も連絡はしてあるからね。」

「そうなんですか?というか修練に里美ちゃんが関係があるんですか?」

「あるよ。里美呼び出してくれるかな?」

「…わかった。…出てきてムー。」


 そう唱えると里美の背中からバクが現れた。


「…この子は漠のムー…能力は夢の世界に連れ込むこと。」

「夢の中?」

「そうだね。夢の中=精神世界なところがあるからね。月兎君は夢の中で宿している妖怪達と語り合ってもらうよ。」

「話し合うですか?」

「そう。さ、準備しようか。」


 そういうと月兎はいわれるがままに布団に横たわらされて寝る準備をした。


「じゃあさっそく眠らせてくれ里美。」

「…わかった。…ムーやって。」


 そういわれると漠は鼻から煙をだした。その煙が月兎を包むと少しずつ意識を失っていった。


 ー夢の中ー


「…ここが夢の中?」


 目を開けると真っ暗なのになぜか目が見える空間にいた。


『遅かったな。』


 そういわれて言われた方を見たら巨大な蛇が現れた。


『またあったな。』

「…また噛むのか。」

『それは分からんが今のところはやらんぞ。』

「なら良いけど。ここでは何をするの?」

『分からんが話し合えば良いのではないか?』

「じゃあ話してみるか。」


 そういうと月兎は破月に気になっていたことを聞いた。


「破月ってどうやって蠱毒に入れられたの?」

『…当時我はとある池に住んでいてな、あの時も池で昼寝をしていた時に急に札が何枚も飛んできて身体中に巻き付いてな動けなくなったんだ。』

「何も悪さはしてなかったんだ。」

『さぁな。だがその後に来た陰陽師どもは「これで依頼主に怒られずに済む。」といっていたな。』

「うちの先祖かな?」

『であろうな。まぁその後意識を失ってな気づけば壺の中だった。』

「怖かったでしょ?」

『いや、すぐ出れると思っていたからな。しかしそんなことはなくてな5~6日ほど水も食べ物も与えられずにいてな流石に弱っていったんだ。』

「普通の生き物と一緒なんだね。妖怪だったら一年ぐらい食べなくても大丈夫そうじゃない?」

『なぜか弱ったんだ。今となっては弱体化の術でもかけられていたんだと分かるが当時は分からなかったな。』

「そうなんだ。」

『あぁ。話を戻すぞ。数日たって我はもう死ぬのかと思っていたときに壺が開いてな何が始まるのかと思っていたらムカデが入れられたんだよ。』

「ムカデ?」

『我へのエサだ。蠱毒とは本来中に毒を持ったもの達を一斉に入れて戦わせ勝者に敗者を食わせることで強い毒を作ることが目的だが今回は妖怪だったからな呪いとしての側面もあったのだろうな。』

「つまり破月に勝たせるってこと?」

『だな。我を弱らせたのは怨みの感情の増幅の為とより毒を蓄積させるためであろうな。』

「難しいな。」

『我は腹が減っていたからな。ムカデをすぐに食べたよ。その後もしばらくムカデを食べていたな。』

「水分は?」

『何かピリピリする水を飲んでいたな恐らく毒を溶かしてあったな。』

「よく飲んでたね。」

『死ぬからな。しばらくムカデを食べていたある日からムカデに傷をつけるとムカデが苦しむようになっていったんだ。』

「てことは毒を?」

『あぁ。手に入れていたな。そこからムカデの数が増えていったな。』

「毒を濃くするため?」

『恐らくな。そしてその後は様々な毒を持ったヤスデやうなぎやサンショウオなどの動物達が入れられていきその度に毒を手にいれていった。』

「壺のデカさおかしくない?」

『多分空間をいじっていたんだろうな。…そんな風に毒を与えられることに慣れていった時にヤツがやってきたんだ。』

「やつ?」


 今までとは少し違う雰囲気になった破月に疑問を感じた月兎が聞くと


『少し休憩だ』


 といわれたと同時に意識がなくなった。


「…!!…ーー!…君!月兎君!」

「…ん?圭さん?」


 気づくと圭に起こされた月兎。どうしたのかと思っていると、


「起きたか月兎君。一回お昼にしようか。」

「はい。」


 気づけばもうお昼だった。圭にもいわれたので一回休憩としてお昼ごはんを食べに行く月兎だった。

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