第26話雲居家
ーマヨイガ内ー
「ではこちらでお待ちください。」
「はい。」
そういわれた月兎は座敷の大広間にとおされた。大広間の横には庭園と竹林があったが先程見た外観からはあり得ないぐらい広いので疑問に思っていると声をかけられた。
「不思議ですかな?」
「!?すいません。外観の大きさと合わないと思ったもので。」
「マヨイガの能力は認識阻害と空間の拡張それから自然修復の3つですからね。」
「そうなんですね。」
いきなり月兎の後ろに現れた初老の人物は月兎の疑問に答えた。
「いきなりすいませんでした。私は雲居 圭【くもい けい】といいます。雲居家の現当主です。」
「これはご丁寧にどうも!わ、私は中村 月兎です!」
「九条家のお嬢さんから話しは聞いてますよ。なんでも宿しの術について修行したいとか。」
「はい、できればしたいです。」
改めて当主に修行をしたいということを話すと、
「貴方は宿しの術を使う人が迫害されてきた歴史を知っていますか?」
「先程迫害されてきたということだけ聞きました。」
「そうですか…。我々宿しの術士が迫害された理由は我々の術の奥義が関係します。」
「奥義が?」
「はい。我々の術の奥義は自身と宿した妖怪を融合させ、自我をもったまま妖怪に変化するというものです。」
「妖怪になる? 」
「はい。その見た目や暴走してしまうことがあるので我々は迫害されてきたのです。もっとも最近は理解も進み迫害はなくなって久しくはありますが貴方はそれでも強くなりたいですか?」
「はい。覚悟は出来てます。」
宿しの術に対してのデメリットも聞いたうえでそれでも鍛えて欲しいと言う月兎に当主は微笑みながら
「それではやってみますか。」
と言った。
「ところで貴方は何を宿しているのですか?」
「変質した夜刀神と三猿です。」
「かなり個性的ですね。」
「圭さんはどういった妖怪を宿しているんですか?」
「そうだね私が宿しているのは…いや、秘密にしておこう。」
そういってウィンクしてきた。
「は、はぁ。」
「家はいまは家族以外にさっき君を案内してきてくれた護衛兼執事の鈴木 真二【すずき しんじ】だけだから取り敢えずは真二に鍛えてもらうことにしよう。」
「真二さんも宿しの術士なんですか?」
「あぁ。詳しくは彼に聞いてくれ。奥義を学ぶ段階になったら私が鍛えよう。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、真二!彼に家の中を案内してあげて!」
「かしこまりました。」
どこからともなく鈴木さんが現れて月兎にマヨイガの中を案内し始めた。
「まず大前提としてマヨイガは人を迷わせる妖怪なので気を抜くと我々を迷わせてきます。最終的には目的地に運んでくれますが1時間ほど迷わせるのでたいへんです。」
「対処法はないんですか?」
「力を目に集めると大丈夫です。」
「まだあまり力の使い方がなれてないんですけど、どうすれば良いですか?」
「ではまずこれを修行第一としましょう。」
「分かりました。」
修行についての話しも終わったので月兎は気になったことを鈴木に聞いた。
「すいません鈴木さん。」
「どうしました?」
「差し支えなければどんな妖怪を宿しているか聞いても良いですか?自分以外の宿しの人と会うのが初めてなので気になるんです。」
「良いですよ。自分が宿しているのはコイツです。」
そういうとズボンの裾ををめくった。
「見えますか?」
「はい。でもこれはなんて言う妖怪ですか?」
「こいつは雷獣ですよ。」
「雷獣?」
「はい。雷を纏い雷のような早さで移動をする妖怪です。」
そういいながらズボンの裾を元に戻すとある部屋についた。
「こちらが客間です。他にも客間が沢山あり訪問者が今現在月兎さんしかいないので余り人とは会わないと思います。」
「いつもは沢山いるんですか?」
「はい。いつもは他の宿しの術士の方達が沢山集まるのですが最近妖怪が増えていることもあり、今現在は月兎さん1人だけ居るというかたちですね。」
「なるほど。」
「のちほど夕飯時に残った雲居家の方達を紹介されると思います。夕飯までまだ時間があるのでゆっくりしていて下さい。」
「分かりました。」
そういうと真二がどこかに行ったので月兎はお昼寝をする事にした。
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