第21話VS鼠たち4
ー洞窟内ー
「じゃあ作戦を始める前にこっちも本気をだす準備をしとくね…こい付喪神。」
そう本郷がとなえると一振の刀と赤い鎧が現れた。
「その刀と鎧って?」
「あぁ。この刀と鎧は単体相手用の最高戦力だよ。今回は群れだけどこの付喪神でいくよ。」
「どんな効果があるんですか?」
「刀は元は妖刀だったものが付喪神化したものでね。切った部分の感覚がなくなるんだよ。鎧は昔の戦場で使われていたもので血を浴びすぎて呪いの装備になったものが付喪神化したもので、相手の血をつけた後に鎧で攻撃を防ぐと相手が傷つくって効果だよ。」
「それは凶悪ですね。」
「でしょ?こっちは準備出来たからいつ始めても大丈夫だよ。」
そういわれて本郷の刀と鎧に釘付けになっていた雫と月兎が準備をしていく。
「じゃあ先ずは私からいきますね。…水球」
そういうと雫は集中しながら術を唱えた。
すると今までで一番大きな水玉を作り出した。そこに今度は月兎が術を合わせた。
「今度は俺の番だな。…よし、毒弾、毒弾、毒弾!」
雫の出した水球に向かって毒の砲弾を左腕から出した月兎。水球に毒が取り込まれていき水球がどんどん紫色になっていった。
「多少は薄くなったと思いますがめちゃくちゃ濃縮した腐食毒なんでかなり効きますよ。」
「じゃあ行きますね!」
「「おう!」」
そういうと雫は水球をうごめいている鼠たちにかけた。
「「「「ーー!ーー!ーー!」」」」
「!かなり効いてますがこちらにも気づいて登ってきてます!」
「任せてくれ!」
月兎は壁に向かって毒を放った。
「毒幕!」
壁に撒かれた毒に触れ鼠は煙をだしながら壁から滑り落ちていた。
「この毒はどんな効果が?」
「これは溶解毒です。腐食毒より効果は薄いけどその代わり滑りやすい性質を持ちます。あと素手でさわると普通に溶けます。」
そう溶解毒の利点を言いながら毒を出していく月兎。しかしさっきもいた鉄鼠が群れになり壁に爪を突き刺しながらあがって来た。
「努さん!鉄鼠が登ってきてます!」
「やつらは任せて!他に特殊な鼠は居ない?」
そういわれたので毒をだしている月兎の代わりに雫が穴を眺めるとあなのそこの方で火鼠が苦しんでいた。
「火鼠はいますが他はいません!でもその火鼠も苦しんでいます!」
『恐らく溶解毒を火で溶かそうとでもしたのだろうな。その結果蒸発した溶解毒が気管にはいって気管を溶かしているのだろう。』
溶解毒怖っ!と思いながら破月に言われたことを2人にも共有する月兎。
「破月が言うには蒸発した溶解毒が気管を溶かしてるらしいです!」
「それはありがたいが怖い毒だね!」
と登ってきた鉄鼠たちを一太刀で切り裂いている本郷と話していると雫が
「そのガスって上がってはこないですよね?」
と言ってきたので
「大丈夫だよな?破月?」
と聞くと
『……多分上がってくる。』
と言われた。
それを雫に伝えると
「大変!蓋をします!…岩壁!」
と唱えると穴の壁から岩が盛り上がってきて穴をふさいだ。
「最初からこうすればよかったね。」
「本郷さんそんなこと言わないでくださいよ。むなしくなるじゃないですか。」
「ゴメンゴメン。2人とも気づいた?」
「何にですか?」
「あれだよ。」
と言うと本郷は壁を指差した。その場所を2人が凝視すると暗くてよく分からないが穴があった。
「穴がありますね。」
「でしょ?しかもこの先からなんか気配がするんだよね。…ここまできたら行くよね?」
「「はい!」」
そういうと3人は穴の奥に向かった。
「そろそろ気配が近いてき…た…。」
「な、何ですかあのでかい鼠は!」
3人が進んだ先にいたのは二十メートルはあるだろうとてもでかい白い鼠だった。
「こんなの倒せますかね?」
「やらなきゃいけないだろうね。よし!いまは子鼠がいないから早めに倒そう!行くよ!」
「「はい!」」
そういうと3人で巨大な鼠に向かって走り出した。
「先ずは私からいきます!鉄槍!」
「ーーーー!」
雫の出した鉄の槍が刺さると鼠はこちらに気づいたようで痛みに身をよじらせながらも手を振りかざしてきた。
「今度は俺がいきます!目隠し!」
「ーー!ーー!」
次は月兎が観月の力をつかい鼠の視界を奪った。
「じゃあ短期決戦で僕が決めるよ!付喪神!大きく鋭くなれ!」
そう本郷が言うと本郷がもった刀が大きくなった。
「行くぞ!切り裂け!」
本郷は大きくなった刀を鼠の首筋にあてるとなんの抵抗もなく鼠の首が飛んだ。
「ーーー!ーーー!…!」
「ふぅ。死んだか。」
「努さん!すごかったです!」
「ありがたいがどうもこれは不味いかもしれないね。」
「何がですか?」
疑問になった月兎が聞くと本郷が理由を話し出した。
「でかいわりに弱すぎたんだよ。大体これだけでかいと何かしらの切り札的な攻撃方法があっても可笑しくないんだけどね。」
「!2人とも見てください!この鼠舌が切られて鳴けなくなっています!」
「なんだって!」
そう雫に言われ急いで見ると確かに舌が切られていた。
「これで確定したな。洞窟の途中にあったタバコの吸い殻といいこの異常は人工的に起こったことだ。」
『それでか。』
「ん?どうした破月?」
急に破月が納得したので気になった月兎が聞くと
『前も言ったがこいつからも異常な力を感じる。恐らく歪められたな。』
「そんなことが出来るのか…。」
「どうしたんだ月兎君。」
月兎は本郷に破月から言われたことをそのまま伝えた。
「なんだって!…2人には悪いがこの死体も回収させてもらうよ。」
「大丈夫です。」
「あっ…破月にきい…『そんな不味そうなものはいらん』…大丈夫です。」
「ありがとう。2人ともこのことは誰にも言っちゃだめだよ。」
「「はい」」
こうしてはじめての遠征は大成功したが後味の悪いものとなった月兎だった。
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