第13話慣らし


 ー土曜日ー


 術士達の所属する協会の隠れ蓑となっている喫茶店の前に月兎は立っていた。


(協会に来たのはいいけどどうやってはいろう。なんか合言葉とかいるのかな?聞きそびれたから分かんないや。)


 協会に来たには来たが入りかたに苦労してるとふと喫茶店のマスターが外に出てきた。


「いらっしゃい。月兎くんだよね?入ってきなよ。」と言われたので喫茶店に入りながら何で自分の事が分かったので聞くことにした。


「は、はい!って良く分かりましたね。俺一回しか来てないのに。」

「ハハッ!ぼくは瞬間記憶ができるからね。一回会えばその人の顔や仕草なんかを覚えることが出来るんだよ。」

「へぇー。カッコいいですね!憧れます。」

「いいことばかりではないけどね。」

「そうなんですか?」

「あぁ。ぼくは昔この瞬間記憶を使って人探しや指名手配犯を探す私立探偵のようなことをしていたんだけどある時見つけた指名手配がモグリの術士でね。命を狙われたんだよ。」

「どうしたんですか?」

「ソイツに捕まってしまってね。あわやと言うところを今の支部長である鈴華さんに救われよ。その時の縁やぼくの瞬間記憶とかが重なって今はここのマスター兼協会支部の門番的な仕事についてるんだよ。」

「そうだったんですね。」


 そんな話をしていると協会から支部長である鈴華がでてきた。


「月兎くん良く来てくれたわね。」

「そういえば今日はなぜ協会に呼ばれたんでしょう?」

「これを渡すためよ。」


 そういって鈴華はポケットからスマホを一機取り出した。


「これは術士によって特別な処理がなされているすまよ。普通のスマホとしても使えるけど他にも協会からの依頼を見たり受けたりすることが出来るし緊急で協会に電話が出来たりする優れものよ。」

「へ~。」


 そう言いながら月兎は一件ただのスマホにしか見えないスマホを受け取った。


「せっかくだからここで依頼1個受けてきなさいよ。依頼はこのアプリから受けるのよ。」

「やってみますね。」


 そうして依頼を見ていき候補を幾つかに絞った。


「俺的には火鼠の依頼か以津真天の依頼か化け猫の依頼がいいと思うんですがどれが良いですかね?」

「う~ん。そうね、まず火鼠は相性が悪いわね。確かに火鼠は5等級だから弱いけど火を使うわ、あなたの主力である毒と相性が悪いわ。」

「確かに。」

「次は以津真天ね。これも相性が悪いわ以津真天は鳥形の妖怪だけれどあなたはあまり遠距離攻撃がないしあってもそんなに射程もないみたいだしね。」

「確かにどちらかといえば近距離タイプです。」

「となると残った選択肢の化け猫がオススメよ。化け猫は縄張り意識が高いからあまり逃げないし視界を奪えば簡単な仕事よ。」

「なるほどありがとうございます!この化け猫の討伐依頼を受けますね。」


 そういって化け猫の討伐依頼を受けた月兎は早速現地に行くことにした。


「じゃあ行ってきます!」

「終わってもスマホに倒した写真をとってくれれば討伐の有無を勝手にチェックしてくれるからいちいち協会に来なくても大丈夫よ。更にそのスマホに銀行と連携させておくと月末に依頼の成功報酬が振り込まれるわよ。」

「進んでるんですね。想像では紙の書類ばっかだと思ってました。」

「協会は逆に最先端ね。色々な術とかあるから技術力高いのよね。」

「なるほど。」

「ちなみにもしお金が振り込まれてないとかあったら協会に連絡してね?協会が銀行に問い合わせるから。」

「個人ではダメなんですね。」

「協会も名前こそ変わってるけど古い組織だからね、銀行や警察・政府やヤのつく職業の人達なんかにも強いコネクションがあるから大概のトラブルには対処できるわ。」

「頼もしいです。」

「フフッ。そう言ってくれると嬉しいわ。じゃあ頑張ってきてね。」

「はい!行ってきます!」


 そういうと自分の所属した組織が思ったより強大な事に少し中二心がくすぐられながら月兎は依頼を達成すべく協会を後にした。

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