第5話初戦闘

 ー実家ー


「あんたず~っと筋肉痛になってたけどやっぱ年とったね。ちゃんと運動してるの?」

 何の事情も知らない母親からの小言に対し辟易しながらも、「ちゃ、ちゃんと運動してるよ!」と歯切れの悪い返事をしつつ自宅に帰る支度を手早く行い「じゃあもう帰るからね!」と逃げるように自宅に帰っていった。


 ー自宅ー


「フゥー。やっと家に帰ってきたな~。」『ここがお主の家か。』

「うわ!破月って起きてるときも話しかけられるの?」『うむ。あとお主も声に出さなくても我に伝わるぞ。』(そうなの?それは楽で良いな。)


 そんな風に思いつつ荷物をバラし終わりまったりしていると。


『何をやっている。早く力を取り込みにいくぞ。』

「え!?今から行くの?いきなり!?無理矢理そんなの無理だよ!?」

『何を言っている。今のお主は力が身体に馴染んでいるからそう簡単には怪我はしないからな。』

「いやだからといっていきなりはキツイって~。」

『だが早くしないとお主の生命力がどんどん減っていくぞ。』

「そうだった!」


 ヤバいと思った月兎は急いで準備をするととりあえず家を出た。


「で?何処にいけば良いんだ?」

『色々な所に行ってくれれば良い。我が気配を感じてそれをお主に伝える。』

「分かった。」


 そういってしばらく歩いていると破月から『気配を感じたぞ』と言われた。


「ここか。」あれから5分位気配を感じた場所の周りを探しているとどうやらこの無人の古びたビルの中から気配がするらしい。


「でも無断でこんな所入っちゃっていいのかな?」

『大丈夫かは分からんが、妖怪が居るところは陰陽で言うところの陰の力に偏るから悪いことが起きやすくなるのだ。世直しだとでも思え。』

「それとこれとは違う気がするけど死にたくないから行くか。」


 そう言いながら恐る恐るビルに入って行った。


 ービルの中ー


「なあ。何処にその妖怪がいるか分かるか?」

『うむ。おそらくこの階の一つ上だな。』

「どんな妖怪なの?まさかいきなり強い妖怪じゃないよね?」

『ああ。この気配だと恐らく餓鬼だな。』

「餓鬼か~まぁ有名っちゃ有名だな。」

『昔はそこらじゅうにいた妖怪だからな。有名であろう。』


 そういった会話をしながら階段で階層を上がっていくと、急にからだが重くなった。


「なんか身体重くなってきた気がする。」

『瘴気に当てられたか。』

「瘴気?」

『うむ。先ほど話した陰の力のことだ。妖怪がいると溜まっていくのだが身体には良くないな。』

「まじか!?じゃあ早くしないと!」

『大丈夫だ。お主は我が憑いているから耐性がある。』

「そうなんだ。でも早くするに越したことないでしょ?」

『うむ。そうだな。…っといたぞあそこだ。』

「っアイツか。」


 そう言いながらビルの廊下を隠れながら見ると6歳ぐらいの身長をした小鬼が自販機を眺めながら涎を垂らしていた。


『気つけるのだぞ。殴られても死ぬことはないだろうが痛いぞ。』

「わかった。」


 そう言いうとゆっくり餓鬼に近付いていく月兎。もう少しというところでふと餓鬼がこちらを向いた。

「っっっ!!」

 月兎が動揺していると「ギャァァァァァァァァァ!!!!」


 と叫びながら餓鬼が飛び掛かってきた。

「うわ!!!」月兎はそのまま餓鬼に馬乗りになられ噛み付かれそうになるのを必死に抵抗していた。


「こいつッ!思ったより力がある!破月!どうすれば良い!おしえてくれ!く、食われる!」

『落ち着け!今のお主は死にはしない、左腕に意識を集中しろ。』


 そんな無茶な。と思いつつ左腕に集中していく。『そうだ。そして我が左腕にいることを感じろ。』


 言われた通りに左腕破月がいることを感じながら深く深く集中していくと次第に周りの音が聞こええなくなっていき餓鬼が暴れているのも感じなくなって来た頃左腕からなにかが放たれるのを感じた。


「グギャァァァァ!」

「うわ!」


 餓鬼の叫び声で一気に意識が戻った月兎が餓鬼を見ると身体の半分が黒ずんで転げ回っていた。


「…もしかしてこれ俺がやった?」

『他に誰がやるんだ。これは我が使える数ある毒の中の一つの腐食毒だな。』

「怖くない?」

『だが便利だぞ?無機物にも効果の出る毒だしな。』

「そうなんだ。慎重に使わなきゃな。…あ」


 色々と毒の効果について破月と話しているといつの間にか餓鬼が死んでいた。


『では貰うぞ。』


 そういうと左腕の蛇のマークから蛇が飛び出てあっという間に餓鬼を呑み込んだ。


「ビックリしたな!急に出るなよ!」

『回収するためだあまり長くは出ていられない。そんなことより早く帰るぞ騒ぎすぎた。』

「確かにな今日はつかれたよ。早く帰って寝るか明日も仕事あるし。」


 そういってそそくさと帰る月兎であった。


 ー???ー

 月兎達が餓鬼を倒してからしばらくたったてから前に月兎が見た美少女と紳士風な執事の二人が現場のビルに現れた。


「あら?ここで妖怪がいる反応があったと協会から連絡があったのに何もいないわね。」

「いえお嬢様微かに瘴気が漂っております。恐らく誰かしらか何かしらがここで戦ったのでしょう。」

「でもこの辺りは私達の家の縄張りよ、今回の任務も私が受けたものですし。」

「となると考えられるのは一つかと。」

「…野良の術士ね!だとしたらその者が善の者か悪の者かが重要ね。」

「えぇ。さらに言うと善の者であった場合取り込むことが大切でございます。」


「そうね。何かしらヒントがあると良いのだけれど…あら?」

 そう話し合っているとふと床に黒い液体が落ちているのに気づいた。


「これは何かしら?」

「お嬢様これは恐らく毒でございます。ここにいるのは確か餓鬼とのことでしたのでこの毒は…」

「餓鬼倒した人物のものということですね!回収して我が家の解析班に解析していただきましょう!?」

「はいお嬢さま」


 こうして月兎達の毒が回収されたのであった。

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