第6話 †姉か妹どっち派ですか?それともセットでご購入?†
「昔っからだよ、もう。本当に気性が荒いなぁ、おねえちゃんは」
……ゑ?
クイーニャの方を見てから、ザーニャちゃんに眼を向ける。
身長も顔つきも、……胸もザーニャちゃんよりクイーニャの方が大人っぽい。
そりゃそうか、クイーニャは教師で違和感ないしザーニャちゃんは女子高生で違和感ない。
え、ザーニャちゃんの妹がクイーニャなのか。
「あっ、
「ってもう家族!? お姉ちゃん阿久くんと結婚してたの!?」
「マサルは話をややこしくするなッ!」
ぱかぁんッ! いい音を立てて僕の頭がザーニャちゃんに叩かれる。
だからいつの間に移動してるの……
「クイーニャ、キサマなど私の妹ではない。勝手に暮らすのは好きにすれば良い、私たちの邪魔はするな」
「んもぉ~、お姉ちゃんったらそんな彼にゾッコン? マサル、なんて呼んじゃってさ」
「……くッ!?」
ザーニャちゃんが顔を赤くしてへたり込んでしまった。
「というわけで気を取り直して、優くん。キミを堕としに来たんですよぉ~。
昨日黒嵐に使っていた悪魔の王と成る資格たる、"
「
クイーニャが何事かを言い終わらないうちに、僕の投擲した長剣が赤い光を放ちながら飛んでゆき、掃除ロッカーに突き刺さる。
一瞬にして場の空気が緊迫し、ザーニャちゃんも耳元に掌をやったかと思うと彼女の手に紫色に輝く大きな鎌が顕れて、クイーニャの喉元へと突き付けられた。
「ありゃ、バレてたかぁ~。勘が良いですね、優くん」
ザザッ、と掃除ロッカーのシルエットが揺らめく。やはりだ、何かあった。
いつもより少し大きく視えていた掃除用具入れは元の大きさに戻り、その中から……なんだこれ?
べちゃっ、と濡れた鯨のぬいぐるみが飛び出してきた。
「何もしない訳ないだろうと警戒してたからな。案の定だ、昨日の僕とザーニャちゃんの会話も聞いてたのか?」
「マサル、もう大丈夫だ。これ以上一度でも動けば私に斬られることは解ってるはずだからな。
それに、アイツはもう攻撃系統の術式を保持出来ないはずだ」
ザーニャちゃんが言い、僕は眷属武装を解除する。
クイーニャはがっかりした風にため息をつき、両手を上げて降参の仕草をする。
「上手く隠してたはずなのにぃ……
わたしの出歯亀用術式、"壁に目あり障子に目あり"のメアリーちゃんですぅ。かわいいでしょ?」
……可愛くはない。べちゃべちゃで、取れかけのボタンが目だろうか?
結構不気味だが人の趣味をとやかく言うのもな、と思い黙っていると、
「キサマこそ昔からだ。不気味なファンシーグッズばかり集める趣味、変わってないんだな。元気そうで憎たらしい」
「そんな言わなくて良いでしょ! ひどいよ!!
大体お姉ちゃんはいつもそうだ、あの時も……」
「それは今関係ないだろう!
しかもその話を持ち出すならキサマだって……」
ギャーギャーワーワー2人が騒ぎ始めた。
……なんだか雰囲気が緩くなった。もう大丈夫、かな?
この姉妹、あまりというか、かなり仲が良くないらしい。
このまま学校にいると騒がしくて人目に付きそうなので、取り敢えず提案する。
「あのクイーニャさん、一旦ウチ来ます?」
「いいの!? 行く!!!」
「よくない!! 来るな!!!」
なるほど、2人は確かに姉妹らしい……
~(いがみ合う2人に挟まれながら帰宅)~
「粗茶ですけど」
リビングで互いに背を向けて椅子に腰掛ける悪魔姉妹にお茶を淹れる。
「ありがとぉ~、優しいねぇ。惚れちゃいそう」
「マサル、わかってるだろうが浮気した瞬間に私はオマエの首を刎ねるぞ」
むっ、クイーニャが口を尖らせザーニャちゃんに突っかかる。
「おねーちゃんってばいつもそう! ホント陰険なんだから!!」
「オイ媚び女、間延びした語尾を装えなくなってんぞ?」
ギャーギャーワーワー。
緩いがとてつもなく剣呑な雰囲気、いたたまれねぇ……でも、なんだか楽しい。
―つい一昨日まで独りぼっちで過ごしていた、この1人では広すぎる家がこんなに賑やかだからだろう。
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