第6話 ノリで、こう、何とか!

 エルは私が泣き止んだのを見計らい、馬車に連れて行き、温かいスープとパンを二人分持ってきた。


「食べていいわよ」


 私がためらっているのを見てそう言い、先に食べ出した。私も慌てて食べる。


 ――美味しい。


 味は素朴なものだったが野菜の優しい味が溶け込んでる。


 おなかが減っていたらしく、手が止まらない。空腹は最高の調味料とはよく言ったもんだ。


「ねぇ、あなた……るりの事情、教えてくれない?私も…力になれると思うわ」


 エルの顔はとても真剣だった。


「……もちろん。エルにだったら」






 私はエルに、少し前までは違う場所にいたこと、そこはここよりも発展したところだったこと、大きな狼に襲われたこと……


 自分なりにすべてのことを話した。


 自分のことを見てくれてる人が居るとほっとする。


「そう……聞いたことないわ、こんなこと。別の世界から人がきた、というのはあっても……」


 えとぉー、どういう……?


「私達がるりを見つけたとき、貴方は草原に寝ていたわ、絶対。狼なんていなかったし、現にけが一つしてないじゃない」


「え…」


 確かに……?いやいや、転んだとき膝を擦りむいたはず!


 膝をみてみたがけがなんてない、傷跡すらも。そりゃそうだ、歩いても痛みなんて感じなかったし。


 いやぁ、え。


「えぇ、ない…、あれは夢だった?」


 あんなにリアルだったのに夢だったなんて思えない。あの恐怖は本物だ。あれを夢だとしてしまったら、今だって夢だとしてもおかしくない。そう、今のエルとの会話だって……


 エルは悩ましげな顔をした後、「このことはおいといて…」と言う。


「話によると、るりはこっちの世界のこと知らないんでしょ。取り敢えず、こっちの常識とあっちの常識のすりあわせをしましょう」


 エルは早くも切り替えたらしい。この切り替えの早さ、見習わなければ!


とにかくノリで、こう、何とかしちゃおう!こう、何とか!







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異世界で生き延びよう 千代子 あめ @yuhi2828

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