「決まったわ!!」
翌日早朝。
私自身の魔法の使い方の勘を取り戻そうとしていたところに、またお嬢様が、そんな感じの叫びと共に突っ込んできた。
「はぁ。」
決まった、とは。
「使いたい魔法、決まったわ!!」
…そうですか。
早くない?
「あっはっは、冗談きついですよお嬢様。そんなに早く使いたい魔法決めちゃって、後から『やっぱあれがいい』とか言われても変更できませんからね?」
「でも来週までにって、スズ言ってたじゃない。」
はい。言いました。
でもそれは「来週に聞かせてくださいね」的なことであって、「期限が来週までだからこの仕事よろしく」的な焦らせる魂胆は一切なかったのです。
本当です。
っべーわ。まじやべーわ。
いざお嬢様に魔法教えるときに色んな魔法を自在に使いこなして「すっごーい!!」って感じの雰囲気にするつもりだったのに、ノー練習で別の属性の魔法を見せなきゃいけないのか。
絶対ミスる。
くっ、落ち着けクール系メイド。
お嬢様が何の魔法を使いたがってるか聞いてないじゃないか。場合によっては「あーそれちょっと教えるのムズイんで先延ばしにしてもいいっすか~?来年ぐらい(笑)」
って感じでごまかす方向に持っていけるかもしれないじゃないか!!
ふっ…勝ったな。
「と言うわけでお嬢様、何の魔法を覚えたいのですか?」
「何が『というわけ』なのか分からないけど、主人公と言えばやっぱり光!!光魔法を覚えたいわ!!」
スーーーーーーーーーーーーーーーッ……。
「ひかりまほう?」
「ええ!光魔法!!」
お嬢様はにこやかに答えた。光みたいに。
どうしよう。光魔法はマジで無理だ。
どうあがいても無理だ。
「…や、闇魔法とかどうでしょう?光とは逆な感じですけど、厨二感?だとかで、黒くてかっこいいですよー?」
私は手のひらから黒い靄をドロドロと出して見せる。
「えっなにそれ気持ち悪…」
カハッ…
「!?どうしたの急に倒れこんで!病気か何かかしら!?」
『気持ち悪い』…ふふ…子供は純粋なものですね…。
結構覚えるの大変だったのに、今じゃ人気ないんですよね…闇魔法。
今どきの子供は闇っぽいとか悪っぽいとか魔王っぽいとかに憧れないのでしょうか…。
まぁ気を取り直して。
「すいませんが私からお嬢様に光魔法をお教えすることはできません。」
「えー!?なんでよ!?どんな魔法でも使えるんじゃないの!?」
正しくは『1人1つの魔法という条件に縛られていない』であり『どんな魔法でも使える』訳ではないのだが…まぁ大した違いではないのでこの返しはやめておこう。
「光魔法は例外なんです。」
「例外…それってまさか…」
ただならぬ雰囲気にお嬢様は身構える。
そう。
光魔法は。
「私の性格が悪いので覚えられませんでした。」
「主人公みたいな人しか使えないんじゃ───え、なんて?」
お嬢様が何か言いかけていたが、まぁいい。
「魔法の素質というのは性格に強く左右されるんです。それこそ荒々しい性格は炎だったりとかですね。」
「でも、スズはほとんどの魔法が使えるんでしょう?じゃあ──」
「光魔法は本当に────なんといえばいいんでしょうかね。どれだけ赤や青や黒を混ぜ合わせても白であり続けるみたいな、そういう強い優しさ?とか信念?清廉潔白?の人しか扱えないんですよ。」
なんなら複数の魔法を扱える私は雑念が多すぎるくらいだ。いろんな色が合わさり真っ黒に見える。
「途中からだいぶ適当になったわね。」
うっさいですね。覚えられない魔法にそこまで記憶は割かない主義なんですよ。
「まぁいいわ。じゃあ雷魔法でお願い。極めたら光魔法になりそうだし?」
「なんですか、そのごり押しな思考回路は…。」
でもなんというか、やたらすばしっこかったりやかましくお願い事をしてきたり、雷っぽい性格ではあると思う。
「まぁ、分かりました。」
「それじゃあっ!
──さっそく今日から魔法トレーニングね!!」
「すいません、1週間後でお願いします。」
私はお嬢様に史上一番情けなさMAXな謝罪をした。
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