「魔法使えるのね!!」


「じゃ、この子にあった派手な魔法をしっかり教えて頂戴ね、スズ。」

軽いノリで奥様はそう言うと、部屋を去っていった。

『『目つきわりぃけどいかしたババァがババっと退場』』

そう言ってお付きの人も去っていった。


静まり返る部屋。

後頭部にはお嬢様からの期待の詰まった視線が突き刺さる。


「あなたどんな魔法でも使えるのね!!」

「今からでも聞かなかったことに出来ませんかね」


どんなものにもイレギュラーと言うのはあるもので、

〈1人につき魔法の属性も1つ〉

という制約に、私は縛られていなかった。


これを聞くと多くの人が

「恵まれてる」「天才」「便利」「最強」「卑怯」

と羨望と妬みの感情をぶつけてくる。



実際私も、調子に乗ってこの力で大暴れした。


が、世の中そんなにうまくいかないというか、

あるいは上手く帳尻があわせられているというべきか。


─私はしかるべきを受けた。

それから、私はを使わないことにした。



…要するに。

人に教えるのが目的とは言え、ここでまた属性使い放題祭りをやれば再びを受ける羽目になる。



「ということで何卒ご勘弁を」

「それ嘘でしょ。私には普通に睡眠魔法とか使ってるじゃない。」

「あれはまぁ、1人につき1属性ということで、精神系の属性って方向で縛ってるんですよ。要するにノーカンです、ノーカン。」

「ぐぬぬ…じゃあ何?今更お母さまに『やっぱり教えられません』っていうつもり?」


そこなんだよなぁ…。

いや…今までと同じように教える期間だけ属性を縛っていいのなら、あるいは。


奥様の要望は確か「派手な魔法を教えて頂戴」だった。

じゃあまあ…適当にいけるか。多分。


「…何か一つ。」

「ん?」

「お嬢様。『この属性だけはどうしても外せない!どうしても使いたい!じゃないとやだー!!』というか、そういう魔法は決まってますか?」

「え?…教えてくれるの!?」

私なりの渾身のボケをスルーして、お嬢様の目が再び期待で満ちる。

その目されると正直断りづらいのでやめてほしい。

「1属性だけです。それ以上は駄目ですよ?」

「はーいっ!ふふっなんにしよっかなぁ~♪やっぱり炎は主人公っぽいし、ああでも

電気も捨てがたいわね~。『私っ!10万アンペア!!』みたいな~♪」

まぁ…喜んでくれたのでよしとしよう。


「来週までには決めてくださいね、それでは。」

「んー?うん、ありがとー。」

そう言って部屋を去る。



そう。来週までに。

来週までに私は、全属性の魔法を人に教えられるほどの技術に

ついでに教え方も覚えないといけない。

お嬢様がどの魔法を選んでもいいように。


うん。


……クッソめんどくせぇ~~~~~~~~!!!!!!

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