第14話② 0.00mm

夜が涼しい。


絵理香の背中を、包み込み続けた。

寂しさが寄り添い合い、温もりを積み上げてゆく。



誰かの為に、何が出来るのか。

もしかしたら、そんなものは無いのかも知れない。

人の哀しみは、幾重にも交差しながら、決して交わる事はない。

すがるわらにすら、なれない。



それでも、俺はここにいる。

それを伝える事だけは出来る。


人は、自分の事を理解・共感してくれる誰かさえいれば生きてゆける。





絵理香が振り返る。

ふたりの鼓動が高まりながら、共鳴してゆく。




10cm

恋愛は距離と比例する。



7cm

もう何も話す必要はない。


5cm

視線が引き寄せあう。


3cm

互いの吐息が触れ合う。


1cm

肌が互いの温もりを感じる。





0.00mm

唇が触れる。



柔らかく、とろける君の唇。

やっと触れる事ができた。


言葉では説明できない。

でも確かに感じる、君そのものの甘い味。

慈しみ合うように、互いを求め、ひとつに溶けてゆく。



午前二時

離れる事ができない、俺達だけの闇が輝いていた





愛しい人へ / 浜田省吾

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