第6話 屈辱
背中を壁に叩きつけられた。
腹に膝蹴り。
衝撃と痛み。
身体が、くの字に曲がる。
息ができない。苦しい。
髪を掴み上げられる。
息が漏れ、やっと息が吸えた。
視線が合う。
憎悪を、ぶつけられる。
「テメェみてえな、
歯が鳴っている。
すれ違いざま、目が合った。
何が起きたのか分からなかった。
中学2年生だった。
相手が3年生という事しか知らない。
拳。
顔に衝撃と痛み。
続けざま殴られた。
視界が赤くなる。
ツンとして鼻から血が。
腹に拳。
崩れ落ちた。
頬にコンクリートの冷たい感触。
息が出来ない。
酸っぱい液が、視界の前を流れた。
蹴り飛ばされ、仰向けになった。
こんな時
なぜ雲ひとつない、爽やかな快晴なのか。
荒く髪を掴まれた。
視線が合う。
排水溝のネズミを、追うような眼差しだった。
何が何でも排除すべきという、強い正義感を持った意志と憎悪。
心が記憶を消したのだろう。
よく覚えていない。
身体が覚えている。
「ごめんなさい 許してください」
泣きながら、許しを乞うた。
屈辱。
僕は、男の最下層であり
自分という存在など、この世にいてはいけない。
身体の奥底に、痛みと共に叩き込まれた。
屈辱と傷の哀しみ。
翌日、学校を休んだ。
逃げる場所など無かった。
学校に行けない恐怖と、学校に行かない事を心配する両親。
板挟みに、押し潰された。
布団を被り、震え続けた。
誰も理解者はいなかった。
無力感、無価値感、罪悪感、悲哀、諦念。
僕を押し潰してゆく。
あの上級生が、サッカー部のキャプテンということを後で知った。
しょせん人種が違う。
異なる世界からの襲撃であった。
僕は自分を捨てるしかなかった。
目立たず気配を消して。
失敗しないように。恥をかかないように。
当たり障りなく、一日が過ぎる事だけを求めた。
戦火の中を、逃げ惑い続けるしかなかった。
太陽の瞳 / 尾崎豊
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