第14話
☆☆☆
「ねぇ、お父さんとお母さんは喧嘩することがあるよね?」
帰宅後も功介の家から聞こえてきた怒鳴り声が耳に張り付いていて、僕はついそんな質問をしていた。
いつものように、夕飯の時間のことだった。
「そりゃあするわよ。お父さんがお酒ばかり飲むから」
「喧嘩くらいあるよなぁ? お母さんがくれる小遣いが少ないから」
「あら、なによ。それならもっと稼いできてくれたらいいじゃない」
「僕だって精一杯やってるんだよ? だけど不景気じゃしょうがない」
「だから私だって午前中にパートで働いてるじゃない。お小遣いなんて言っている場合じゃないのよ」
だんだん親の声色が怪しくなっていく。
最初はおだやかで冗談めかしていたけれど、剣のある話し方に変わっていた。
「変なこと聞いたね、ごめん」
と、言っても途中じゃ止まらなかった。
日頃から溜まっていた鬱憤がここぞとばかりに吐き出されていく。
僕はしばらく呆然としてふたりの様子を見ていたけれど、1人だけ早々に夕飯を食べ終えてしまったこともあり、途中でこっそりダイニングを後にしたのだった。
☆☆☆
僕の親は基本的に仲がいい。
本当の大げんかをしているところなんて見たことがないし、物が宙を飛ぶような喧嘩だってしない。
それでもあれだけストレスが溜まっているのだから、喧嘩っ早い親なら毎日大喧嘩していても不思議じゃないのかもしれない。
「それならなんで結婚したのかなぁ」
僕はベッドに寝そべって天井を見つめながらつぶやいた。
最初はうまくいく、好き同士だからとか思って結婚するんだろうけれど、ずっとうまくいくわけじゃない。
それなら、誠みたいに両思いだとわかって離れ離れになったほうが幸せなんじゃないかなぁ?
「やっぱり、僕にはまだよくわからないや」
手を伸ばしてスマホを取り、功介や和彰に連絡しようとして、まだふたりの連絡先を聞いていないことに気がついた。
学校にいれば自然と会うことができるから、必要を感じていなかったのだ。
「あ~あ、なんだかまた僕だけのものにされてる気分」
僕はベッドにスマホを投げ出して深くため息をついたのだった。
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