第10話
☆☆☆
功介は一体どうしてしまったんだろう。
なんであんなに怒っていたんだろう。
普通に考えれば淳の態度が気に入らなかったんだと思うけれど、それにもてもやりすぎだ。
僕は倒れた椅子と机を元に戻しながら暗い気持ちになっていた。
「和彰、功介はどこに行ったんだと思う?」
「わからない。だけど頭が冷えたらきっとまた戻ってくるよ」
和彰はいつもと変わらないように見えるから、以前もこんなことがあったのかもしれない。
「心配だな」
「大丈夫。功介にはああなってしまう理由があるんだ」
「理由?」
ようやくすべての机と椅子をもとに戻してから、僕たちはベランダへ出た。
気温は高いけれど、風がふいていて心地いい。
「功介の家は親が不仲でね。いつも喧嘩ばかりしてるんだ」
「そうなんだ」
僕の親も喧嘩をするときはあるけれど、不仲というわけじゃない。
この前だってふたりの馴れ初めを聞いてうんざりしたところだった。
「家の中で親から威圧的な態度をとられているから、同じような態度を取る人間を見ると我慢ができなくなるみたいなんだ」
「それって淳のことだよね?」
「あぁ」
和彰はコクリと頷いた。
「淳はどうして僕にあんな態度を取るんだろう。気持ち悪いとかさぁ」
陰でネチネチと攻撃されるよりマシかもしれないけれど、気持ち悪がられる理由が未だにわからない。
淳と対話を試みてもいつもうまくいかないし、どうすればいいかわからなかった。
「あんなヤツはほっとけばいいんだ。転校生の郁哉を珍しく思っているだけだろうから」
「そうなのかなぁ?」
「そうだよ。郁哉は勉強の飲み込みも早いし、顔がいいから嫉妬してるんだ」
「顔がいいなんて、そんな」
照れ笑いをしていると和彰が楽しそうに笑った。
もしかしてからかわれたんだろうかと思ったが、言わないでおいた。
とにかく、これから先淳とも仲良くなれたないいなと、僕は思ったのだった。
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