魔法極めたら世間から魔導王って呼ばれるようになった件 〜異世界で魔法極めたいだけなのに魔王や龍神に邪魔されまくってます〜

いふる〜と@毎日七時投稿!

巡る魂、魔法狂いは必然と

前世の記憶を持つ赤子


「あう…」


少々不満げな顔で呟く赤ん坊、短く生えた黒味がかった茶髪と透き通るような青い瞳が特徴のこの赤子が俺、アレンである。


突然だが俺には前世の記憶がある。日本という国で一般家庭に生まれ、25らへんで交通事故にあって死んだ一般男性の記憶だ。前世の俺はどうやらファンタジーが好きだったらしく、この状況に非常に興奮している。


(生まれてから半年くらいたったのかな?大分動けるようになってきた。)


異世界、アレンとしての俺が生まれた地はそう言うべき場所だった。両親の会話や本を読んでいると魔法や魔物といったファンタジーによくあるものがあると知ったし、あまり機械文明や医療が進んでないのも分かる。


そんな中で、俺は生まれたその時に魔法の才能鑑定のようなものをされ、かなり大きな才能を持っていると診断された。その時はこの世界の言語をあまり理解できてなかったため、詳しくはわからないが。


「アレン、今日も可愛いなぁ。」


「まったく、親馬鹿ね、あなたは。」


「やっぱりアレンの眼、すっごく素敵!!」


俺が自室でゴロゴロしながら考えていると、部屋に二人の大人と一人の子供が入ってきた。


長い金髪をストレートにおろしている美人さんは母親のリーゼ、俺と同じ黒味がかった茶髪のゴツい見るからに戦士という見た目だが、親馬鹿な父親のバルド。そして俺の姉であり3歳の可愛らしい女の子、クレアだ。


(ぞろぞろ入ってきて、どうしたんだろうか?)


朝食(ミルク)はさっき食べたし、別に泣いてないので呼び寄せることはしていないはずなのだが。


「まだ幼いアレンにはわからないだろうが、一応言葉がわかるかもだから伝えておこう。」


「あなたったら、まだアレンは生後半年よ?」


父さんは真剣な顔つきをしているが、母さんは少し呆れたような表情をする。姉さんは俺の指をひたすらに握っており嬉しそうな顔だ。


「まだ早いが、生後半年を迎え魔力が体に馴染んだだろう。プレゼントとして、これを買ってきた。」


ベッドから起き上がり、ちょこんと座る俺の前に父さんは結構分厚い辞書のような本を取り出した。その表紙には、『魔法教本』と記されていた。


「あう!?」


「っはは!そんな驚いたか!それに文字を読んで価値を理解している!アレンは賢いな!」


俺は思わず飛び跳ねた。この世界に来てから、ずっと疼きっぱなしだった前世の俺が今大歓喜を覚えている。アレンとしての俺は冷静な性格だが、前世の俺はそんなことないらしい。


「アレンの魔法の才、それはこんな辺境の村で収まる代物じゃない。だが俺はアレンの親だ、アレンが望む限りは俺達がアレンを育てよう。」


「あう!!」


俺はありがとうと心の中で叫び、差し出された魔法教本を受け取る。結構重ためで、持った瞬間ベッドにストンと落としたのを見て3人は笑っていた。


改めて、良い家族だと思う。親馬鹿で俺に甘いけどしっかり俺を思いやってくれる父さんに、俺にこの世界の言語や常識、その他諸々を教えてくれた母さん、姉として俺の世話を甲斐甲斐しくしてくれる姉さん。前世の俺の家族を否定するつもりはないけど、前世よりも、暖かい生活を送っている。


「それじゃあ、母さんたちは戻るね。気をつけて読んでね。」


「あぁ、父さんは魔物狩りに行くから夜まで帰ってこないからな。」


「何かあったら、私を呼んで!アレン!」


「あうあう。」


俺がバイバイと心の中で呟く。かくして、3人が俺の部屋から立ち去る。それを確認した俺は息をゆっくりと吐きながら魔法教本を開いた。


「あ、あう…」


そして俺は驚愕し絶望した。この魔法教本、母さんから教わった人間語じゃない。故に一欠片として読めない。


(この世界には、人間の扱う人間語、魔族の扱う魔神語、戦闘特化の民族たちの扱う闘神語、その他たくさんの言語がある。)


俺はベッドの近くに置かれている言語の本を手に取り、ページをペラペラとめくる。そして魔法教本に書かれている言語を探しだした。


(魔神語、魔法はたしか魔族が作り出したものなんだよな。そりゃ人間語なわけないか。)


俺は心の中で納得しながら、魔神語が記されている本と魔法教本を照らし合わせながら少しずつ解読していく。 


流石は生後半年といったところだろうか、みるみるうちに言語を覚えていく。前世の記憶にこの赤子特有の学習能力、やはり異世界転生というものは記憶があるだけでチートだな。


「あう。」


20分もの時間をかけ、最初の見開き一ページを読み終えた。その内容は実に興味深いもので、そして俺を大きく興奮させた。その内容はこうだ。


1、魔法というのは生物の核である魂から溢れ出る魔力を、詠唱や魔法陣、イメージによって変化させ特有の効果を生み出すものである。


2、魔法には才能が絶対条件、魔法を扱う才能が無いと魔法は扱えず、魔法を扱えるものの中にも優劣が才能によって激しく生まれる。


3、魔法には属性が存在し、各個人によって得意属性苦手属性は分かれる。


大まかにまとめるとこんな感じだろうか。やはり魔法の使用には詠唱や魔法陣が必要とのこと、でも、イメージとやらが謎だ。イメージだけで発動できるのなら、詠唱や魔法陣は要らないんじゃないのか?


(まぁ、ここらへんの謎は追々だな。ひとまずは魔法を使ってみたい。)


「あうあう。」


俺は次のページをめくる。するとそこには魔力の感じ方や操作方法等が詳しく記されていた。


(魔力は生物の核から生まれる、イメージは心臓だな。心臓から、血液がポンプのように流れるのと、同じイメージ、イメージ、イメージ。)


俺は左胸に左手を当て、右手をパーにして前に突き出す。目を瞑り、深く集中しながら心臓の鼓動を聞き取り魔力をイメージする。


(見つけた。)


その状態が、なんと3時間。3時間もの間それを続けることによってようやく心臓の中心に存在する暖かく心地の良いエネルギーを見つける。それは脈打つように心臓内をぐるぐるとしていた。


(落ち着け、魔力を血液と同化させる感覚で心臓から取り出せ。そして、右手に流れさせる。)


魔法教本に記されていた魔力の操作を実践、それはさっきまでの時間がなんだったと言うふうにスムーズに行われ、右手に魔力が集中する。


だが、問題はここからだ。魔力を感じることしか考えていなかったため魔法の発動方法が分からない。だが前世の俺は、自らの好みに合わせて魔法を発動しようと思考を開始していた。


(イメージは炎、赤い炎じゃなくガスによって作られる高熱の蒼炎。右手に集約した魔力を球体に練り上げ、イメージの蒼炎の球体に変化させる。)


頭の中で、紫色の魔力が一つの球体となり蒼炎を噴出するイメージが完了した。そして次の瞬間、俺は目を開く。


「あ、あう…???」


俺の視界に映ったのは、バスケットボールくらいのサイズで、近くにいるだけで汗をダラダラと流し火傷しそうな高熱を出す蒼炎の玉。それは俺の突き出した右掌の先で今にも爆発しそうにしていた。


(やばきやばいやばい!!!家が燃える!!)


俺は焦りによって冷や汗も加わり汗びっしょりになってしまった。俺は今までにない身体能力を発揮しベッドから飛び降り急いで窓を開けて外の大きな川に向かってそれを放った。



―――――ゴォォォォォォン!!!!


次の瞬間。蒼炎球と川の水が激突すると、とんでもない轟音と同時に大爆発が起きる。激しい煙と突風が吹きすさび、俺の家はガタガタお揺れ川周辺は煙に包まれる。


(やっっば……)


煙が晴れると、俺は顎が外れそうなほどの驚愕する。なぜなら、俺が放った川から水が消失してしまったからだ。


蒼炎球ファナティックボールとでも名付けようかな。」


前世の俺が呑気に名前付けをすると、俺の部屋の扉が勢いよく開けられた。そこには、急いで駆け上がってきた母さんと姉さんの姿があった。


「こ、これは、アレンが?…」


「あ、あう…」


俺は怒られると思い、目を瞑った。だが俺の予想していたことは行われなかった。


「凄いよアレン!!やっぱりアレンは魔法の天才だ!!」


「バルドも喜ぶわね、自分の息子が立派で…」


「あ、あう…?」


そうしてこの夜、俺は盛大に褒めれまくり近日中にさらに上位の魔法が記された魔法書を買うことが約束されたのだった。



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