【ニコ生配信小説】頭の悪いイケメン俳優が、幽霊の出る洋館にいる。

 アキラは今をときめくイケメン俳優として売り出された新人である。そんなアキラの初出演番組が幽霊のいる洋館を探検するという番組であった。

「今日は初めての収録だからがんばるぞ~」

 気合を入れたアキラは幽霊など気にせずスタッフと共に洋館へと向かった。アキラは少々頭が残念なのである。

「ここが、幽霊が出るという噂の洋館です」

 一緒に来ていた同じく新人の女優が神妙な面持ちで洋館を紹介する。

 この洋館の主人の購入経緯や主人が悲惨な目に会ったなどが紹介されているが、アキラはそれよりも目を引くものがありそれどころではない。

(あの白いワンピースの女の子めちゃくちゃ可愛い~!)

 スタッフの後ろにいる白いワンピースを着た女性が、アキラの好みドストライクであった。なんとかお近づきになりたいところであるが、今は収録中。頭が少々残念でも仕事を放り出してまで声をかけるほどの非常識さは持ち合わせていなかった。

「では、洋館の中に入っていきましょう。アキラさん?」

「あ、はい。入りましょう!」

 女優に促されてアキラは洋館の中へと入る。洋館に入ればもうワンピースの女性とは会えないと思っていたが、女性はスタッフの後ろを静かに歩いてきていた。

(お、スタッフの方なのかな? ラッキー!)

 収録が終わったら声をかけようと心に決めて洋館の中を歩き回る。

 しかし、幽霊が出るという噂があるはずなのにまったくそんな気配はなかった。きれいに片付けられた洋館は物音ひとつせず、取れ高はほぼ無いに等しい結果となってしまったのである。

「幽霊が出ると聞いていたんですけどね~」

「はい、そういった痕跡は見つけられませんでしたね」

 スタッフと女優に落胆が見られる。さてこれからどうしようかと考えていると、突然今までスタッフの後ろにいた白いワンピースの女性がアキラたちに近づいてきた。

(近づいてきた~やっぱ超好み!)

 心の中で有頂天になりながら、アキラは口を開く。

「お姉さん、滅茶苦茶美人ですね~収録終わったら晩御飯でも一緒に行きませんか?」

 その瞬間、あたりがシンッと静まり返る。

「アキラ君? 何言っているの?」

「すみません。このお姉さんが綺麗なんでつい……」

「ど、どんな人?」

「黒髪が綺麗で~白色のワンピース着ている人です!」

「ここ、車で来なきゃいけないくらい山の上で。行きの車にワンピースの女の人いた?」

「あ、そういえばいなかったですね!」

 女優とスタッフはポカンと口を開ける。

「その女性はどこ!?」

「え、そっちに」

 スタッフのカメラマンがカメラを向ける。その瞬間、白いワンピースの女性はスウッと暗闇の中に消えていった。

「あ、お姉さんがぁ……」

「アキラ君、きみあれ見てどうとも思わないの?」

「美人なお姉さんが行っちゃったってくらい?」

「う、う~ん」

 怪奇現象を目撃した恐怖より、アキラのおバカぶりに困惑するスタッフと女優であった。

 その後、様々な心霊番組にアキラは出演することになるのだがそのおバカっぷりで心霊現象をスルーし続ける有名俳優へとなっていったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る