第10話 電話相手

昼頃、廻のスマホに着信が入った。普段使いしている方ではなく『仕事』で使っている方に、

「ついに来たか」

緊張で震える手で電話に出る。そこから聞こえてきたのはいつもの加工された声ではなかった。

『こんにちは。仕事ご苦労さまです』

予想通り相手は女性のようだ。だがその声色には異質な何かを感じた。何か触れてはいけないものと対面している恐怖さえ覚える

『では約束通り我々の正体を明かすとしましょう』


空気が張りつめる、独特な空気感の中で廻はまるで深淵の中へ足を突っ込むような、好奇心と恐怖が入り交じった不思議な感情を抱いた


『我々はお察しの通り人間ではありません』


「少しほっとした自分がいた」彼はこの時のことをそう振り返る。むしろ人間じゃなくて安心した彼がそのレベルで彼女から感じた雰囲気は異様なものだった


『我々はイス人だ』


口調が変わった。今までの女性的な口調とは打って変わって高圧的な口調になった。


廻はこの時確信した



人間なんかよりも上位に君臨する者たちだと



『それと夕方頃そちらの方にお伺いいたします。それでは...』





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