第3話 尾行

翌日、三沢知夜は登校中のアリシアを尾行しながら昨日のことを思い出していた。

...

「引き受けたのはいいけど。どうする?みんな」

香織が切り出す。大してやる気はないようだ

「適当に尾行して何も異常ありませんでしたー。ただの思春期でしょって美沙さんに言えば終わるだろ」

廻もやる気がないようだ

「みなさん!やる気出してください!このシェアハウス史上最大の非常事態ですよ!」

フィリップはやる気満々だ

「まっ尾行なら私がやるよ。そういうの得意だし」

知夜は面倒くさそうにしているが一応やる気はあるようだ

「おっじゃあ頼んだ」

「そうね知夜が適任ね」

「そうだな本当ならこの私直々にしたかったが。仕方ない...」

...

「あんただと事案になっちゃうだろ」

思い出し笑いをしながら呟くその時だった

「居ない...どこに行った!」

ずっと視界におさめていたはずのアリシアの姿がその一瞬の間に消えていたのだ。油断があったのは確かだ。だがあまりにも...



考え込んでいた知夜の視界がなにかに塞がれた



「だーれだ?」



この声はまさか

「アリシア!気づいていたの!?」

アリシアだった気づかれないように細心の注意を払っていたのに気づかれていた

「珍しいですね。知夜さんがこの時間に外出だなんて」

どうやら尾行とは悟られてないようだ。バレないうちに逃げないと

「いやたまには散歩でもと思ってね」

「そうなんですね。まさか知夜さんがアウトドアに目覚めるとは...そうだ!今度のゴールデンウィークにみんなでハイキングに行きません?」

「えっいやいや。そうはならないでしょ!」

知夜は根っからのインドア派。今回のは仕方なくやっている事だ本来なら1歩も外に出たくない。なのでハイキングなんて以ての外だ

「えぇせっかく知夜さんがアウトドアに目覚めたんだから行きたいなぁ。最近みんなと遊べてないし」

く〜こうやって頼まれると断れない!

「仕方ない。今度のゴールデンウィークね。いいわよ」

「やった〜!」

アリシアは笑顔で喜んだ。

「アリシア。そろそろ学校やばいんじゃない?」

ちょうど遠くからチャイムの音が聞こえてきた。アリシアの顔が笑顔のまま青ざめた

「やっばい!遅刻だァァ!」

アリシアは全力で走り去って行った


「心配して損したいつも通りじゃない。それにしてもハイキングね...」

イレギュラーはあったもののいつも通りのアリシアが見れて安心した。知夜の場合アリシアとは生活時間が違い過ぎて話す機会がマジでないので余計そう感じたのだった

「さて一応校門まで追いかけますか」



校門で生徒指導の先生(雰囲気的に体育教師だろうか)に怒られているアリシアを遠目で眺めていた。

「みっちり怒られてるね。言い訳の余地なしって感じじゃん」


それは一瞬の事だった。気の所為だったと言われた方が納得できる

「今あの教師こっち見なかった...」

アリシアを叱りつけている体育教師が一瞬知夜の方へ振り向き目が合った。

ここは校門から40mほど離れた4階建てビルの屋上向こうから気づくとは思えない

仮に気づいていたとしたら。それよりもあの一瞬の感じ取れた圧倒的な恐怖。体育教師特有の圧とは何かが違う身の毛もよだつような恐怖を感じた。

恐ろしくなった知夜は少し離れたところにある職場に逃げ込んだ..


「あれは一体...なんだったのですか...○○よ」

胸元のペンダントを握りしめながら知夜はそう呟いた






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