第9話「試験の終わり」
さて、ひとまず敵はいなくなったため私達三人は戦いの空気ではないと感じ辺りには穏やかな空気が流れ始まる。
「あ、あの先ほどはありがとうございました!」
ピンク髪の少女が頭を下げてお礼を言ってくる。礼儀をわきまえている人間は嫌いじゃない。ここは仲良くしておいていいだろう。
「気にすんな!俺がやりたいようにやっただけだからさ」
相変わらず真っ直ぐな好青年ですねヒロ君は……
「………」
「うぐっ」
下がっている視線の先はしっかりと見えていますけどね?……まぁ?……まぁまぁまぁ、いいでしょう。いいでしょうとも。主人公にハーレムはつきものですからぁ?いいですとも、女の子の一人や二人口説いたところでねぇ?それはそれとして肘でみずおちを叩いておく他意はない。
「えぇ、ヒロ君が言う通り私達は困っている人を助けただけよ。だから気にしないで」
「いえ、だからこそ私はあなた方にお礼を言いたいんです」
ふむ、悪くない。推しが多少強い点こそあるがしっかりとした善性を持っている。先ほどの貴族の男も何かしらに対する焦燥が見受けられたがそれはそれとしてこんな風に真っ直ぐであってほしいものである。
「それでしたらその感謝を受け取らないわけにはいきませんね、ヒロ君もそう思うでしょう?」
「……?お礼言われたら受け取るもんだろ?」
「……いえ、何でもないです」
ヒロに効いた私が馬鹿だった。それはそれとしてこの子を仲間に誘っておく。
「よければご一緒しません?」
「え、よろしいんですか?」
「おう、一人くらいぜんぜん余裕ですよ!」
流れ作業化のようにとんとん拍子でこの少女を仲間にした。多少強引だが、今更仲良くなった相手を斬れるほどヒロは優しくないだろう。私?私だったら喜んで殺しますね。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前はリン」
心の中に宿る殺意の衝動を抑えて歩み寄る道を選ぶ。勘違いしないで欲しいが私がこの少女に殺意を覚えるのは悪に対する嫌悪からではなく私やヒロを思ってくれている好意を感じるからこそ、私もこの少女に対して親近感がわくのだ。それが殺意となっているのだ。親しい人ほど裏切って殺したくなるという私の悲しい性というだけだきにしないでいただきたい。
「はい。わたくしはサリー・ブェッチラムと申します。気軽にサリーと呼んでください」
サリーはカ足を組んで膝を軽く曲げ、スカートのすそを持ち上げて挨拶をする。一般的にカーテシーと呼ばれる挨拶の一種である。この世界では貴族か、成金くらいしかすることを許されてはいない。名字を聞くとブェッチラム……有名な大手魔道具会社の社長ではないか。とんでもない所の令嬢と知り合いになったものである。
「俺はヒロだ。よろしくなサリー!」
そうしてヒロとサリーは握手を交わす。サリーの顔を見ると仄かに赤い髪色以上である。ヒロは罪づくりな男である。
そうして、私、ヒロ、サリーの三人は仲良く襲い掛かって来る敵をバタバタと倒していった。そこでサリーは意外なほどに活躍してくれた。別に戦力外だと思っていたわけではないのだが、あの貴族の男に追われていた印象のせいであまり強いイメージがわかなかったのだが、戦闘になってすぐわかった。彼女、後方支援型なのだ。しかも回復魔法の使い手。白兵戦すれば明らかに負けるのは火を見るより明らかだ。そりゃ、槍使いの近接型の相手に後れを取るよ、こうゆうタイプって大抵仲間を作るのだが……
「それなのですが……」
話を聞いた時は頭が痛くなったものだ。本人曰く知り合いの商人の息子と協力してなんとか試験を乗り越えようと思っていたのだが、なんとその男は何を考えたか仲間を次々を集めだし、気が付いたら十五人ほどのパーティとなっていたそうだ。馬鹿だろ?魔物一体で1.6点しかも、受験生一体倒すと6.6点だ。非効率の極み過ぎる……強いて言っても仲間は三人四人が限界だろう。そして、必然と言うかなんというかなんというかポイントが全然がたまらないと理解したパーティーは空中分解を引き起こしてしまい。仲間割れでサリーを除いた全員が離脱してしまったそうだ。マジで馬鹿だよギャクかな?
「そいつらバカだろ?」
馬鹿に馬鹿って言われてる……可哀そうに同情しちゃう。
「よかったですね、サリーさんは生き残って」
「えぇ、その後あの槍使いさんに追われたんですけどね……」
その後に、ヒロや私にで出会えたから結果的によかったんですけどね、と笑顔で言うサリーには芯の強さのようなものを感じる。ほんとうにいつかこの手で殺めたい……そしてその滴る血を味わいたい……いつかヒロと戦う時、その時あなたも私の獲物ですから覚悟しててくださいな……
「リンさんあれ見てください!」
考え事にふけっているとサリーが空の上を指差す。私とヒロはその指先に導かれるようにその先を見つめると花火を上がっていた。祭りのときのような美しい観賞用の花火ではなく、ただ色を付けて円状となっているだけの質素なものだが、受験生たちにとってその花火はきっと祭りの芸術以上の感動ものなのではないだろうか。
「これって……」
「えぇ、」
二次試験終わりの合図の花火だ。
二次試験終わりを告げる花火と共に私達は森の入り口に張り出されていた掲示板に集まっていた。その掲示板には受験結果が記述されているからだ。
「おいリン。俺たちの名前がねぇぞ!」
「よく見なさいヒロ君。その一枚目には50位までしか書いてませんよ」
170点ほどとった程度で上位勢になれるわけないだろうJK(常識的に考えて)
「じゃあ私たちは」
サリーが頬に手を添えて横目で私を心配そうに見つめてくる。まぁ、緊張するのも無理もない。受験なんていつ何時でもそんなもんだろう。私の高校受験もそんな感じだった。
「あそこですよ……」
私が指さすとヒロとサリーはその方向を見やる。その先には、
――――78位 ヒロ
――――同率 サリー・ブェッチラム リン・ダプテー
「78位……ですか……」
「まぁ、合格できるだけよかったんじゃないですかね?」
ヒロは合格できたー!とはしゃいでいるがサリーは少し低い順位に不満そうだった。仕方ない時間がなかったのだ。
「……おい、貴様ら」
すると、声をかける人影が一つあった。
「あ!お前は……」
そこにいたのは先ほどヒロに負けた貴族の男だった。腕を組んでむすっとした顔をしている。
「何の用だよ……」
ヒロは嫌そうな顔をする。
「いや、なに……そのの女史すまんかったな」
なんと貴族の男は頭を下げて謝罪をしてきた。先ほどの悪意はどこえやら今では武人肌の騎士にしか見えない。
「え、私ですか?」
サリーは自分を指差して驚いている。
「あぁ、そうだ。いくら試験の為とはいえ怖い目に合わせてしまった。このレグルス・コペルニクスの恥じだ。許してほしい」
「お前、良い奴なんだな。勘違いしてたよ」
ヒロは笑顔で彼の肩をポンポンと叩いている。ヒロは彼を気に入ったらしい。
「お前も……ヒロと言ったか。今度は負けんぞ」
「おう、かかって来い負けねぇぞ!」
男同士の友情を気づいている傍らでサリーはおろおろとしていた。これは発破をかけてやった方が良いだろう。
「サリーさん。もう戦いを終わったんです許してあげてはどうです?」
「あっ、いえ、別にそこまでレグルスさんが嫌いなわけじゃないんですただこうして貴族様に頭を下げられてことが無くて……」
彼女も金持ちの家系とはいえ、恐らく下の子だ。だからこそ、裏口入学をしていなかったのだろう。実家でも立場が低いのか自分が優位になっていることに戸惑っているらしい。初めて文字をかけて言われた子供の用で少し面白いものがある。
「……ダメか?」
レグルスといったか、この男筋骨隆々のダルマのくせして上目遣いが上手だな。あざといぞ……
「だ、大丈夫です。レグルスさん……今後は友達として仲良くしていきましょう」
「あぁ、よろしく頼む」
そう言ってサリーはレグルスの手を取って誓いの握手を交わした。レグルスは嬉しそうにはにかんでいた。
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