第3話「魔王、学校に通う」
その後、ヒロは近くを取っていた行商人に助けられて何とか一命を取り留めた。命あっての物種と言う言葉があるようにヒロは自分が生き残ったことに対してはよかったと安堵していた。だからこそ、ヒロは自分が守れなかった、自分の手から零れ落ちていってしまった命達のことを思って情けなく感じてしまうのであった。子供の身で何を言うのかと思うかもしれない。だが、ヒロにとってはそんな事実は関係なかった。自分は前世で警官だった人間であり、弱き隣人を助け、許されざる悪を討つ。それこそが、ヒロの在り方なのだ。だからこそ魔王であろうと立ち向かって負けたという事実が何よりも悔しさを感じさせた。
「だったら……」
城下町にある国家治癒術師の資格を持つ魔術師が経営している病院のベットにて、頭や胴体を包帯まみれのミイラ状態になりながらも半身を持ち上げて起き上がる。その顔には熱意の炎がギラギラと燃えていた。
「強い騎士になってやる……今度は魔王に負けねぇぐらい!!」
拳を天井に突き上げるようにしてヒロは固く誓う。
「うっ……いだだだぁ!?」
「ちょっと君!まだ怪我が治ってないんだから暴れないの!」
……と、同時に回復しきっていない状態で大声をあげて体を動かしてしまったせいか全身の骨や内臓が悲鳴を上げてしまい、またもや痛みに悶えるヒロであった。なお、その後、看護師さんにこっぴりと叱られたのは言うまでも無い。
さて、英雄ヒロの決意を固める第一歩の場面を目撃したところで私は看護師の変身魔法を解除し、病院を後にする。あのままショックを受けていたら少しだけ発破をかけてあげようかとも思っていたがどうやらその心配は杞憂であったようである。まぁ、流石は私が見込んだだけの英雄です。子供ながらに大人顔負けの胆力である。もしかしてら、私と同じように転生者かもしれない……そうだとしても何ら問題はない。彼がヒロと言う少年で、今年10歳になって、4年後にく騎士団養成学校に受験して、生まれはどこともしれない森の中馬車の荷台で生まれたとうことも、全て変えようにない列記とした真実であることに変わりはないのだからむしろ転生者であった方が色々と英雄として教育しやすいかもしれまんせん。なにせ、転生と言う超常現象を目の当たりにした人達の大半は自分は特別であると勘違いし、さも自分が物語の主人公であるかのように振舞いだす生き物なのですから……私ですか?転生で浮かれることはあっても特別な存在だとは思いませんでしたね。変人奇人と言う意味で特別だというのであれば私は特別な存在なのかもしれませんがね?まぁ、いいです。彼ヒロが私の
――――――さぁ、愛しの英雄殿。私を倒し世界に平和をもたらしなさい!
月日は無常に流れて行き、4年後の四月の春。騎士団養成学校入学試験の日……つまりはこの日を迎えることとなった。
「よし!この日の為に猛勉強してきたんだ!絶対合格するぞ!」
服装こそ、学校指定の制服であるものの、額には『合●格』の二文字が書いてある鉢巻きを締めて、目には絶望的なまでに似合わない丸メガネを付けている14歳の少年……残念ながら我が英雄ヒロである。なんだかなぁ、変なところまで
「~~♪」
ヒロはウキウキ気分で歩いている。が、この真っ直ぐ少年は前日から徹夜している。徹夜で知識をため込めば何とかなると思っているのである。実に短絡的である。一日で全範囲の知識が身に付くわけがあるまい。範囲がどれだけ広いと思ってるんだこの馬鹿は……いけないいけない。つい、モナミと同じ感覚になってしまっている……なんて思っていると、徹夜の疲労故か、それとも視力が悪くもない癖に度の入っている眼鏡を付けてくるなどと言う暴挙の影響か、校門の階段の段差に足を引っかけてしまい、今にも石造りの地面に頭をぶつけようとしていた。
「おっと、大丈夫ですか君?」
すかさず、私はヒロの横に立ち、彼の脇下に手を入れて転ぶ前に支えてやる。まったく、手のかかる英雄様だ。
「えっ、うん。ありがとうな。あんた、えぇっと……?」
まぁ、この姿は初対面なので知らなくても無理もないか。魔法でヒロと同じような特例学生の枠にいる別の人間を路地裏に連れ込んで、血を吸った後にその人に変装しました。その方については細かく裏社会の情報屋や眷属の監視などで調べているので入れ替わっても問題ない方を選定しております。碌な環境じゃなかった孤児院出身で騎士団養成学校に入学できれば寮暮らしなので帰って来るなとすら言われた女性。名を……
「申し遅れましたね、私の名前はリン・ダプテーと申します。同じ受験者として仲良くしましょう?」
「おう!よろしくな!」
そう言って私はリンとしてヒロと握手を交わす。そして二人仲良く並んで校門を抜けて試験会場へと足を向ける。
「ところでよ……」
「なんでしょうかヒロ?」
「試験会場ってどこだ?」
「………Really?」
ヒロは無言で頷いた。そして私は頭を抱えた。互いにこのやり取りのどこか懐かしさを感じながら……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます