本物の古文書

 忍、桃香、美貴は無事『常盤の庭』に正式に所属する事が決まり、放課後に美貴と桃香はお社にやってきた。

 忍は今日予備校に行っていて授業終わった後すぐに学校から街へ移動している。

 忍は偶にしか来られない状態になっていた。


「こんにちはー、あのー七不思議について、ききたいことがあるんですけどー」


「ちょっと、先輩なんだからもっと丁寧にしてよ」


 美貴は実子が居るのを見つけて挨拶も早々に質問をする。

 色々と目上の人に対してぞんざいなので桃香は注意した。

 実子の傍らに居る紅葉も睨んでいる。

 

「良いけど、何?」


 当の実子は気にせずこんにちは、と答えた。

 畳に正座で長テーブルに置かれたお菓子を食べている。

 お茶も置いてある。

 側に居る紅葉は胡座をかいていた。

 昨日よりも話し方がさらにざっくりとした印象を受ける。


「えーと、すいません、七不思議の探検で土地神様と会う前はまず三人でわかっていた所を三つまわったんですよー」


「ほぉ」


「それで一つ目が史料室、二つ目は東校舎の屋上の階段、三つ目は南校舎四階のトイレの鏡でしたー」


「なるほど」


 この前聞いた通りだなと思いながら実子は返事をした。


「それで三つ目を試してたら凄く力が抜けちゃってー、そこで土地神様と会ったんですー」


「え、そうだったんだ!?」


 実子は色々な意味で驚いていた。

 側に居る紅葉もギョッとして美貴を見る。


「あー、おおよそその様な感じですね」


 嘘は言っていない、と桃香は頷いた。


「それで最初の史料室に行ったら怪現象が起こったのですがー」


「話変わったな」


「アレはナニか居たんだと思うんですけどー、なんだったのでしょうかー?」


「史料室か……なるほど、桃香はわかってたか?」


 実子は一度目を閉じたあと、見開いて桃香に話を振った。


「え、あー、なんか本の中にナニか紛れてる気はしました、ただ、似たようなモノが多くて本物がどれかわかりませんでした。」


「正解」


「……え、どういうことですか?」


 桃香は実子に聞き返した。


「本物の書が隠れているんだ。史料室のヌシと化している本物の古文書がね。写本や模造品に紛れた本物の書がある」


「え、何でそんなモノが史料室に」


「かつて祝家が寄贈した本の中に紛れ込んでいだみたいで、その時点で既に付喪神化してたらしい。かつての目録を見ても例の書物がどれなのかわからないようだ。一度史料室の本を全て確認したけど見つけられず、今では蔵書が更に増えて特定が困難らしい」 


 結果七不思議になってしまったようだ、と実子は言った。


「史料室のヌシと化してるが普段はおとなしく眠ってたりしているらしいな。本気を出せば史料室内の本を投げ飛ばしたりなどのポルターガイスト騒ぎを起こせるようだ」


「あぁ、そういえばー掃除した後なのに本がぽつんと置かれてたり、読みたい本を言った途端、該当した本が動いた音がしてー本棚から少し出てましたねー」

 

「七不思議初っ端から怪奇現象ホンモノと出会いましたからね……」         

 

 あれでモチベーションが上がったと言うか、と桃香は言った。


「なんというか、色々と持ってるな……。ヌシは気紛れだから何も起こらないのが普通なんだがな」


 運がいいと言うか何と言うか、とどんな反応をすれば良いかわからないような微妙な顔をしつつ美貴に向かって実子は言った。


「と言うことは、その二日後に行った和琴と同じ付喪神なんですねー」


「和琴……あぁ、音楽室の隣の、確かにな……あれ、取り扱い間違うと大変な目に遭うんだが大丈夫だったか?」


 見た感じ問題は無かったようではあるが、と実子は言った。


「あ、はいー、八代先輩がその場を仕切っていたので、トラブルは無かったですねー」


「……土地神様が取り仕切ってたのなら、変な真似はしないか、いや、うん」


 実子は言いたいことはそれなりにあるが言うのを押し留めた。

 それを横目に見た紅葉は筋骨隆々で鬼瓦な見た目からは想像できないほど優しく実子の肩にポンと軽く乗せた。


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