探検を終えて
七不思議が導いたモノ
私達三人はお社をお邪魔し、神社の管理をする先輩達とお話ししていた。
「しかし、コレで七不思議探険は終わりかー」
楽しかったのに終わっちゃったー、と残念そうな顔を美貴がしていた。
「まさか本物に出会うとは思ってもなかったねぇ」
楽しかったねぇ、と面白そうに桃香は言った。
「何ていうか、学校の事を更に知ることが出来たね」
私達三人でそんな感想を言い合っていた。
「あぁ、そうだ。桃香ちゃん、忍ちゃん、あと宮島さん、『常盤の庭』として貴方達のここの出入りを許可します」
すると実子様からこのお社の出入り許可を貰えることになった。
「後、それとは別に『常盤の庭』に入りませんか?貴女達なら入る資格があるようだから」
『常盤の庭』に入れる人間は『特別な存在』と言われる人のみが入れるらしく、この学校では名誉な事らしい。
「わ、わかりました。あ、ありがとうございます」
「え、良いんですか? 私放課後結構予備校とか色々用事あってあまり来られませんが……ありがとうございます」
桃香と私はお辞儀をした。
「私だけ、二人みたいに家に力もなければ追い出されてここまで流れてきたような感じの余所者なんですけどー」
本当に大丈夫ですかー?と美貴は両手の人差し指でもじもじさせながら言った。
美貴はリアクションとか素直で面白いけど愚かではないので地雷を踏み抜いたりはしない子である。
「良いんだよ、土地神が気に入っていることそのものが『特別な存在』だから。貴方、独特な感性というか勘の持ち主でしょう?」
家ではなく貴方自身が特別なの、と実子様が説得した。
そもそも彼女の家をこの地方に招いたのは祝家や政理家のようだが、詳しくは知らない。
「実子様があぁ言ってるから、問題は無いと思うよ、最初の方は私達と行けば良いしね」
桃香の斉木家は色々な繋がりを持つ家だけあって彼女もなんだかんだ肝が据わってる。
「私は色々用事あって忙しいからあまり行けないけどね……」
私はただ、家の事がとても憂鬱である。
「あぁ、勉強だったら各学年の首席の子とか上位の子がテスト期間とかに来たりするから偶に来てみると良いよ、ここの卒業生もたまに来るしね、ここは部活と違ってテスト期間でもテスト勉強の為に集まってるから」
因みにそこに居る紅葉も二年の次席だ、と実子様は自身の側にいた龍野先輩を指して言った。
「まぁ、一年生の入学式で挨拶をしてた忍ちゃんには不要かもしれないけどね」
因みにもう少ししたら中間テストの期間に入る。
「いえ、頼りになる先輩が居るだけで安心出来ますよ。色々な事を訊けますし美貴を勉強させる為に放りこめるので」
「いやちょっと待って、何で私を勉強漬けにする話になってるのー!?」
実子様の話に賛成してたら美貴から否定が入った。
「そういえば、私のパパもここに所属してたらしいですね」
桃香が口を開いた。
桃香のお父さんはカメラマンとして地元どころか国内、果ては海外にも知名度がある天才らしい。
「そうだね、なので斉木さんは学校に用事があると差入れを持ってお社にも顔を出して下さいますね」
「パパが『常盤の庭』は豊作だと言ってる年がありますね、知り合いに在籍している人は何人か居ますが、正直ここの集まりのことを詳しく知らないのでちんぷんかんぷんでしたが」
「『
「あ、あーそうなんですかぁ……」
自分の父親を思い出しているのだろう、遠い目をしながら桃香は返事をした。
既に『常盤の庭』に所属してる桃香の知り合いも居るらしいし思い当たることしか無いんだろう。
私からしたら、桃香も父親に中身が似ているところがあると思うが。
「そう言う子の集まりというか、交流をしたり相談したりするような互助会みたいになってて大雑把な括りで『特別な子』の集まりになってるよ」
本当にふわふわな説明である。
「一応対外的な扱いは加入条件が特殊な部活と同好会の中間みたいになってて顧問も部活みたいにいるよ。因みに顧問の先生は『常盤の庭』OGの先生だよ」
この学校のOGはつまりここ出身の女性教諭は二人存在してもう一人は生物担当の問題教師で有名な人である。消去法で二年の生物の先生だとわかる。
顧問の先生の特定をした桃香の顔が微妙な顔になっていた。
「別に強制加入でもなければ、特別な行事をする時以外は費用も無いし、参加したくても払えなければ適当に軽い労働をして貰うこともあるけど、そもそも普通の高校生から見てもそんな高い金では一応無いよ」
参加する気がなければ別に参加しなくても良いしね、と実子様が言った。
そもそも実子様に普通の高校生の金銭感覚があるのかは謎だが高くないらしい。
「まぁ、私も全てには参加できないから……体が弱すぎて」
実際昔から実子様は時々病欠しているらしい、中学校も学区的には同じだった筈なのにその頃学校内でお会いしたことはない。
「あぁ、それはどうしようもないですね……山で療養した方が宜しいのでは?」
心配そうに桃香が実子様に対して言った。
「これでもだいぶマシになったんだ、中学は殆ど行けなかったし。だから同じ中学に通ってたけど在校生徒の数が少ないにもかかわらず桃香ちゃんと忍ちゃんには学校では会ってないからね……」
「あぁなるほど、そうだったんですかぁ」
そういえば、実子様の妹の
「まぁ、これも何かの縁だと思って」
実子様はそう言った。
「今日はありがとうございましたー」
お邪魔しましたと私達三人はお社から出た。
三人とも『常盤の庭』に入る事にした。
実子様から書類を貰い、家で書いて学校に提出すれば正式に入ったことになるらしい。
「出入り自体は『
さようなら、と実子様は見送ってくれた。
その傍らには龍野先輩が立っていた。
「また明日」
校門を出る時に聞き覚えのある声がした。
振り返ってみたら八代先輩が笑顔で手を振ってくれていた。
さようなら、と言って私達三人は手を振り返した。
私達は新たな縁を結び日常に戻ってきたのだ。
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