中断と先達の加入
「す、すいません、まず先にこの子調子悪そうなので一度廊下に座らせて貰えませんか?」
「そうなの?でしたら、はい」
「すいません……」
私がそう言うと先輩はドアを開けて通り道を開ける。
そこを壁に手をついたまま美貴が移動する。
私達もトイレに居る意味もないので移動した。
「すみませんでした、大きな声で騒いでしまって」
「あら、別に……」
ご迷惑掛けてすみませんでした、と桃香が言った。
別にいいことよ、と謎の美人の先輩が言った。
「どちらかと言うと何してたのか気になって来ましたの」
あまり騒ぐのは確かに良くないけれどもね、と先輩は言った。
「すいません、そこで調子悪そうにしてる宮島さんの誘いで七不思議を巡っていて、そこのトイレの鏡で願い事を叫んでたんです」
「あら、そうでしたか」
叫ぶとは思いませんでした、と私が先輩に言うとそうでしたかと言った。
「それは、別の意味で大丈夫?」
「……さあ?」
おそらく美貴は先輩にイタい子として見られているだろう。
「あら、ごめんなさい、
「初めまして、一年生の斉木桃香です」
「斉木さん? あぁ、あの寫眞屋さんの?」
「私の父をご存知でしたか」
「えぇ、毎年私の撮影をしていらしたわよ」
「そうなんですか?」
初めて知りました、と桃香は告げた。
「初めまして、同じく一年生の宮島美貴です!」
「宮島さん? 大丈夫なの?」
「トイレから出たらだいぶ楽になりました」
ご迷惑おかけしました、と美貴は言った。
やれば出来る子だけど、いきなり何やりだすのかわからない危険さがあると私は思っている。
「なら、よかった。宮島さんはじゃあ、神社のある島か海辺の村か何かが出身の家なのかしら?」
先輩は話を繋げるのが得意のようで、何気に遠回しに余所者か訊いているように思えるイタい子の中身も見ているようだが。
「えー、はい、先祖は派閥争いに負けて追い出されて、今は数年前には事件に巻き込まれて此方まで逃げてきた家です」
先輩凄いですねーと言いながら美貴はサラッと御家事情を喋っていた。
「なるほど、そういうことね」
「「!?」」
私達二人も引っ越してきた理由をそこまで知らなかったのでギョッとしている。
「良いの?私達も知らなかったんだけど」
「まぁ、秘密にしといて」
お願い、割と軽く美貴は私達に言った。
「初めまして、同じく一年生の稲見忍です」
「稲見さんね……あら、あなたお兄さん居なかったかしら?確か、
忍の自己紹介で苗字で、同じ苗字の人を思い出したようで質問する。
忍は不意討ちを受けたようにぎょっとした顔をしたがすぐ真顔に戻る。
「兄の事をご存知でしたか、確かに私には歳の離れた兄が居ました……ですが既に死んでしまいました」
「っ!?」
「……」
美貴は私の兄の存在自体知らなかったため目をかっ開いているが、桃香は一応知っていたため気まずそうにしている。
「ごめんなさい、嫌なこと訊いてしまったわね」
「いえ、兄を知ってる人が居たことに驚いたくらいです」
「そう……あのお兄さんの妹と言うことは、保健室の先生の親戚なのね」
「はい、そうです」
「そうなのねぇ……」
私は既に八代さんが何者かについての疑念が満ち溢れている。
私の兄が死んだのは二年前だけどこの学校に通っていたのはもっと前の時期であるからだ。
桃香も最初の質問の時点で違和感を覚えてそうだけど、美貴は正直どう思ってるのかわからない。
場に微妙な空気が流れる。
「ところで先輩は怪談はご存知なんですか?」
「え?えぇ、まぁ」
面食らったような顔をした。
「でしたら、この学校の七不思議について教えてくれませんか?」
「!?」
美貴の言葉にそれ以外の全員が驚いていた。
知り合ったばかりの先輩であろう人にいきなり物怖じせずそもそも怪談を教えてくれと普通は言わないと思う。
「良いことよ」
「ありがとうございます!!」
七不思議ツアーに先輩ガイドが追加された。
やったーとか言ってる美貴にはもう私はツッコむまい。
桃香と良いのかなぁ?と思いつつ互いを見遣る。
断わるのも露骨に変なのでそのまま七不思議ツアーは続くようだ。
「でも今日は辞めたほうが良いのではなくて?」
時間も遅くなってきたし、調子悪かったのでしょう?と先輩は美貴を諭す。
あれ普通に良い先輩だなと思いつつ私は放課後が空いている一番近い日を考えていた。
「すいません、私は明後日じゃないと空いてません」
私は皆に申し訳なく先輩に言った。
「ふーん、明後日なら私は空いてますよ、他の子は?」
「私達は大丈夫です、私はその日は部活無いし宮島さんは帰宅部の筈なので」
「はい、私は大丈夫ですー」
だよね? と桃香は美貴を見遣る。
「では、今日はお開きにいたしましょう。明後日の合流は貴方方三人の教室の人数が少なくなってから行くことにしますわね」
先輩がそう言って今日の七不思議ツアーは解散した。
その後先輩とは昇降口で別れたが、先輩は「まだ用がある」と言って校門とは別の方向へ去っていった。
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