七不思議を巡って
和室の古くて新しい和琴
七不思議探索を始めてから二日後、八代先輩との約束の放課後がやってきた。
因みにその間私自身は少し調べ物をしたくらいである。美貴と桃香は何かしたりしたのかは私は知らない。
一昨日の最後調子悪そうにしてた美貴は次の日には元通りになってたので私は気にしていない。
担連絡事項が終わり挨拶をして解散。
そして放課後になり暫くして八代先生がやってきた。
「ご機嫌よう、お待たせしましたわ」
「先輩、こんにちは」
相変らず八代先輩は気品があって穏やかなすごい美人である。上の上の髪で2つの小さなお団子をつくっていて、それ以外の髪は下に垂らしていて元気そうでそれでいてお上品な雰囲気を醸し出していた。
七不思議の先輩ガイドを務める八代先輩が本題について話し始める。
「お次は音楽室の……隣の和室ね」
「そこは音楽室ではないんですかー」
美貴が違うんかーいみたいなノリで先輩に言う。
確かに学校の怪談といえば音楽室は定番ではあるけど。
とはいえ目的地の方向はほぼ同じなので四人で歩き出した。
音楽室は二つあり三階と四階に準備室とセットで1つづつ存在し、隣に和室があるのは四階の方の音楽室である。
まぁまぁ、と先輩が説明を始めた。
「えぇ、説明が難しいのだけれど、七不思議の現象自体は基本的に音楽室で起こってるんだけど原因は隣の和室にある楽器なのよ」
「あれ、音楽準備室にはない楽器なんですか?」
桃香が楽器なら普通は準備室の方にあるはずと言う。
「原因の楽器は
「そうなんですかぁ」
「お琴は二年生に演奏できる先輩が居るのは知ってるけど、その先輩たちはその琴の存在はご存知なのかな?」
「へー琴演奏出来る人居るんだー」
桃香の言葉にだれー?と美貴が言う。
私はすぐに誰を指してるのかは一人察したが、もう一人は弾けるのを知らなかった、がもう一人いると言われれば予想付く範囲ではあった。
「あぁ、二年には祝家と政理家の御令嬢がいらっしゃるからねぇ」
桃香の家は山の社の祝との親交があると聞いている。祝と政理の子供の世代は従兄妹同士なのは大体の人が知っている。
「正解、忍の言う通りの二人よ」
「政理家の御令嬢も弾けるとは私も知らなかったけどね、ヴァイオリンやピアノは知ってたけど」
あの方は随分と多才だなぁ、と私が言うと。
「まぁ、昔色々あったみたいね」
本当に何があったんだろう、桃香が知ってるとは限らないけど怖くて聞けない。
「えーと、お琴の話なのですけど」
「あ、はい、すいません」
私達が話を脱線させたので先輩が話を戻す。
「寄贈された楽器の中でもかなりの古い物のようでね、その御二方はそのお琴の存在はおそらくご存じでない筈だわ。因みにお琴はもう一つあったり尺八みたいな笛の類の他の楽器も置いてあるのだけど」
他の楽器は普通ですけどね、と先輩は言った。
「呪われてた楽器か何かなんですかね?その琴」
そう美貴が言うと、先輩がまぁ、
「とても古いモノには意思、魂が宿って
別に付喪神が悪いモノとは限らないのですが、と先輩は言った。
「七不思議のお琴は元気が有り余った問題児から生気を吸い取るというもので、授業中問題起こしそうな生徒も静かになるというものです。あまりにも、酷いと一昨日の宮島さんみたいな状態になりますね、まず本当にあそこまでひどいのは、居ませんが」
後はお琴自身が嫌いな人物からも生気を吸い取ります、と先輩は言った。
「それって普通に不味いのでは? 呪いの楽器であることには変わりないですよね」
「問題児があからさまに調子悪くなって授業サボりだす問題が発生したりしますが、学校側もサボりだす原因がわからず目に見えて深刻な問題にも見えないので学校は放置してますわね」
「えーそうなんですかぁ……」
私の問いに真面目に過ごしていればそんなに生気を吸い取られることも無いですからね、と先輩は言った。
「そんなにってことは少しは吸われてるんですね」
「極稀に
先輩が説明をしていると音楽室の近くまで到着していた。
「音楽室隣りの和室に着きましたね」
「じゃあ、突撃だー」
桃香が着いたと言い、体調が復活した美貴はテンションが高く早く入りたがっている。
「鍵は借りてきたんですか?」
「開いてるから大丈夫ですよ」
「え?」
私は先輩に鍵を借りてきたか聞けば既に開いてると言っていた。
私は先輩が音楽の先生にお願いして事前に開けてもらったのかしたのだろうと思っていた。
先輩は和室のドアを開けて入っていった。
私達は上履きを脱いで畳に上がる。
先輩はドアを閉めてから部屋に上がった。
「それで此方にある楽器ですわね」
そう言って先輩は和室の鍵のついた襖を少し弄ってから開ける。その後も中にある鍵付きの大きくて長い箱を開けて長い板を外し箱の外に出した後、布に包まれた楽器を取り出した。
この板が少し気になったが先輩が楽器をこちらに置いて見せた。
「こちらですわ」
そう言って先輩が布を剥くように開くと楽器が露わになった。
「え!?」
目の前に置かれた楽器は見た目は傷がほぼなく日焼けもしておらず劣化しているようには見えなかった。
弦も何故か綺麗に張られている。手入れを頻繁にされてるようにも見える。
他の二人にはどう見えるのか分からないが、私にはこの楽器は不可解なモノに思えた。
「え、コレ、そんなに古いものなんですかー?」
「触ると生気を吸われかねないので触らないでくださいね」
美貴が手を近づけるので先輩は注意をした。
「え、あ、そうでした」
気になるのはわかるけど呪いの楽器って言われてるのに不用意に触ろうとするのはどうかと思う。
「あ……」
声をした方を見ると桃華がメガネを外して琴を視たようだ。
ヤバいもの見たという顔をした後、桃香は程なくして掛け直した。
「どう見てもそんなに古い物には見えなくてちゃんと視たのですが、ハイ、確かに古いものですね」
こんなモノあったんだ、と桃香はげんなりとした顔をした。
桃香の目には何が視えたのだろう?
「あら、斉木さんの家には古いモノ色々があるでしょうし馴れて居るのではなくて?」
「えぇハイ…とても古いカメラは手入れが大変ですね」
先輩の言葉に家の手伝いの事を思い出したのかそれはそれで嫌な顔をする。
「そのような古い物はとても珍しいものですから大切にして下さいね」
「……はい、先輩」
先輩がそう告げる。
桃香は神妙な面持ちで返事をしていた。
私には何故かこの先輩の言葉は先輩にとって伝えたい何よりな大切な言葉なんだろうと思えた。
「とりあえず、このお琴機嫌損ねると生気吸いだすので損ねないうちに箱入りになって頂きます」
「は、はい」
私たちはひぇっ、と悲鳴混じりに返事をする。
先輩が手際良く琴を箱に元通りしまい、私たちは和室を出た。
先輩が出た後こっそりとドアを動かそうとすると動かなくなってて既に閉まっていた。
そして私達は和室から離れ、一気に階段を降りて一階がの昇降口に移動した。
「あの、先輩」
移動の最後尾にいた私は先ほどの琴について気になることがあったので階段の二階の踊り場の辺りで先輩に話しかけた。
美貴と桃香は先を行っているのでこちらに気付いていない。
「あら、どうかして?」
先輩は振り返り立ち止まった。
「先ほどお琴の件で質問しにくかったのですが、何であのお琴はあれほど綺麗ですぐにでも弾けるような状態だったのでしょうか?」
「あら、そこまで気付いてらしたの?」
「一応は、昔は楽器を触っていたこともあったので」
今はやってないですが、と私は素直に言う。
すると、先輩はあら、そうでしたの、と言い、私の問いに答えてくれた。
「お琴の状態が極めて綺麗で良好なのは、お琴自身が人間から生気を集めてその状態を維持しているからですわね」
「あぁ、そうなんですかぁ……」
やっぱり呪いの琴であった。
「お琴もやり過ぎると始末されかねないのはわかっているので大事にならない程度に収まっているようですが、そういえば何故今その質問を?」
先輩が私に質問を投げかける。
「この質問をお琴の前でして何か起こったら嫌だったので」
あと、私自身二人の前であまり楽器を触っていた話に触れたくなかったというのもあるが言わなくて良いだろう。
すると先輩はオホホと小さく笑った。
「まぁ、賢明ですわね」
そう言って先輩は再び階段を降りていく。
私も昇降口へ向かうべく階段を降りていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます