屋上の怪談
「えーと、次は西校舎の屋上への階段」
「……今いるの北校舎四階なんだけどー」
マジかよー、と美貴がぼやく。
西校舎に行くには二階の渡り廊下を通らないといけない。それ以外だと一度外に出なければならなかったりする。
西校舎は四階建てなので屋上への階段は四階の上になる。
「ロスが多いわけでもなく素で遠いのね」
「私が知っているの3つだけで、そのどれも四階なんだよね」
もう一つは南校舎の四階だよ、と真顔で桃香が言った。
「マジかよ」
真顔で美貴も返した。
「じゃあ、今日は諦める?」
「いや行く!!」
次の都合の合う日にでも、と私が言うと美貴は、今日行くと即答した。
「じゃあ、隣の校舎に行こうか」
そう言って私達は階段を降りて次の場所ヘ向かった。
「やっと着いた」
「階段を降りて校舎の端から端まで移動して階段上がって……」
「
げんなりとした桃香はようやく、と言った。
しんどい、と言う割に美貴の息は整っている。
私も息自体はそこまで乱れてないが正直脚には来ている。
屋上への扉は鍵が掛かってた、当たり前だけど。
疲れて三人でドアの前に座り込んだ。
ドアは閉め切りだし、人はまず来ない場所なので問題ないだろう。
そして美貴が話し出す。
「それで、ここはどんな感じの場所なのー?」
「ここで怖い話をしてそれに対して『なんだんす』と誰かが言ってから階段の数を数えると変わるとか変わらないとか」
桃香が美貴の問いに答えた。
ふわふわしてるというか雑な七不思議である。
「……やる?」
「じゃあ、怖い話誰かおねがいー」
なんだそりゃと私が言うと美貴が誰か話して、と言った。
「じゃあ、さっきの和綴じの本に書かれていた話の概要を話す?」
桃香が言った。
アレは怖い話だったのかと少し驚いた。
「あれってば怖い話だったの!?」
じゃあお願いします、と美貴が促した。
「『ある山々のお話』
昔々あるところに常に餓えた貧しい山の集落がありました。集落の限界人口も少なく、子返し間引き姨捨を少なくない数行われ、流された人たちの吹き溜まりとなり、それは増えていきます。やがて破れた祀るものが流され、吹き溜まりで神を祀り流れを変えました――」
「えーと」
「そんな内容だったんだ……」
桃香の話はさり気なく初っ端の方で凄いこと言ってるし、後半はぼんやりしてる割に物騒な事を言ってる話な事はわかった、美貴はいまいちわかってなさそうだけどその方が幸せだと思う。
何よりも気になるのは――
「なんだんす?」
誰かが合いの手のように言った。
「えーと」
美貴が階段の段数を降りて数える、別に階段の数は変わったりとかはしてなかった。
「十三段!」
しーん
辺りは静まりかえっていた。
「しかし……何で怪談をすると『なんだんす』って訊くんだろうね?」
「さーわかんない?」
私が二人に訊くと美貴はわからないと即答した。
少しも考える気がなかったと見える。
一方、桃香の方は。
「もしかしてだけど……」
「え、何々?」
微塵も考えなかった美貴が聞きたそうに続きを促した。
「怪談と階段の言葉遊びなのかな、と」
要するに駄洒落だ。
「…………」
場の空気が凍りついた。
美貴が困惑の表情をしている。
私も困惑してるが、桃香は苦笑混じりである。
無言で美貴が立ち上がった。
「次、行こうか」
そう言って、降りていく。
「あ、ゆっくり降りてよ!」
置いてかないでー、と桃香が言って階段を慌てて降りていく。
「休めたと思うべきか……」
気になることは何個かあったけども、と思いながら私も立ち上がり二人の後を追った。
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