プロローグ

この街は古梟こきょうとよばれる街。

梟の伝説が多く伝えられている中、不思議な梟の逸話が伝えられている。

しかし、この街では『フクロウさん』と都市伝説のような呼び方をされていた。いつから噂になっているのかもわからない『フクロウさん』。果たして『フクロウさん』とは何なのだろうか。


「フクロウさん? イケフクロウ? 」

「あれでしょ? 見たら幸せになれるっていう……」

「学問の神様? この街に? 」───知らない(45%)

「フクロウさんを見た人を知らないけど、この街を守ってくれてるって噂は聞いたことあるよ」

「この街のヒーローとか聞いたことある! 猫と狐と狸をお供に戦うって! 」

「会えたらエモいって聞いた」───噂話(54%)

「フクロウさん? 爽やか笑顔でたまに腹黒いことサラって言うよ」

「基本真面目だから常識やモラルにうるさいかな」

「……尊い推しメガネ」───人間の人物像のような話をする(1%)


様々な話が飛び交うフクロウさん。梟なのか人間なのかわからないが、半数が存在を肯定し、半数が知らないという。一体何者なのか。

そんなこの街には梟のオブジェや梟にまつわるものが点在している。半数が知らないのに土産物に至るまで梟グッズが存在していた。……この街は大丈夫だろうか。

───だが、知らないながらもこの街は、異形の化け物が時折現れる。

二足歩行した獣や明らかに形状がファンタジーの化け物まで様々だ。奴らは逢魔が時、夕刻によく現れる。


「フクロウさんはわからないけどさ、猫耳としっぽのあるに助けてもらったことあるんだ。だから、誰かがこの街を守ってくれてるのは知ってるよ! 」───ある少年の証言より。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! 」

どこからともなく悲鳴が上がる。

路地に追い込まれた女性がへたりこんで青ざめていた。怯える姿を堪能している毛むくじゃらの異形が目の前にいる。

「───見つけた」

『ガッ』

ゴンっと異形の頭上を蹴りつけて反転して着地する。

『痛えだろ! テメエだれだ?! 』

身軽に降り立ったのは……アマノちゃんだった。

風圧でフードが落ち、隠れていた耳がピョコンとこんにちわする。

『!! まさか……! 最近オレらの邪魔してやがるのはテメェらか! が裏切りモノがぁぁあ! 』

「……うるさいなぁ。古猫こねこ古狐こぎつね古狸こだぬきの部族はあんたらと違って元々この地に住んでんの! 別次元から来た招かざる客はさっさとおうち帰っておねんねしてもう来んな! 」

イヤホンを差し直し忘れた為か、小指を耳の穴に突っ込んで心底嫌そうな顔をする。

チラリと向こうにいる女性を見やると、とうに気絶していた。

ブンっと軌道の大きな腕が振りかざされたが、ふわりとポケットに手を突っ込んだまま避ける。

おちょくるように防戦を繰り広げているうちに、

『逃げ回るしか脳がねえ猫風情が! 追い込んでやったぜ! 』

気がつくと別の路地の袋小路にアマノちゃんが壁を背に逆の立ち位置になっていた。

「まんまと誘導されちゃって。ただの脳筋で助かったよ」

初めてアマノちゃんの表情筋が動き、弓なりに口角が上がる。今までポケットに突っ込んでいたはずの手が出ており、いつの間にか何か棒を握っている。すっと前に倒して左手で引っ張ると光る刃物───真っ黒な刀身の日本刀がこんばんわした。

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