42、第二の女魔人エスタ現る
「俺はあんたに恋をしちまったんだ!」
言ったー! ついに言った! でもこれからどうしよう?
「
「私もよ! 本当は最初から親友じゃなくて恋人になりたかったの!」
えぇーっ!? そうだったの!?
「あのさ、
告白が成功した幸せが信じられなくて、急に疑い深くなってしまう。
「
「今まで?」
「私、白状すると
おお、なかなか衝撃的な発言だが
「バカだから恋愛するのか、恋愛するとバカになるのかどっちだろう、なんて思ってた。でも
「私、男が好きとか女が好きとか、そういうの無いの。私は
言うなり俺の唇を奪った。イヤーカフから放たれるピンク色の光に包まれながら俺は、カホンの上で
「性別、
「性的指向、
白猫が冷静な口調で付け加えたが、そんなのどうでも良くなるくらい俺は幸せに包まれていた。今までこれほど喜びを抱きながら魔法少女に変身したことなどなかった。
フリフリミニスカート姿になった俺を、
「綺麗ね」
ピンクのリボンで結ばれた俺の銀髪を手のひらに乗せ、
「かわいくて繊細な
うっとりとしたまなざしで言葉を続けた。
「いろんな表情を見せてくれる君だから魅力的なの」
少し背伸びすると、魔法少女姿になった俺の頬にちょんっと唇を押し当てた。
そっか、確かに繊細な感性で一人音楽と向き合い、真夜中までギターを弾いているのも俺だし、ロックファッションで男らしくキメて、
ああそうだ、魔法少女マジカル・ジュキちゃんは確かに俺の一部だった。
「うん、どっちも俺なんだ」
俺は
「気付かせてくれてありがとな」
だが甘い時間は長く続かなかった。
「この公園から魔法少女の匂いがするぞ!」
ニュース番組でしか聞いたことのない女魔人エスタの声がテントの外から聞こえてきたからだ。
魔人攻めてきてんの、ちょっと忘れてたぜ。
「我が愛しの妹を監禁しているニンゲンどもめ、お前らにも私と同じ苦しみを味わってもらおう!」
怒りに満ちた声が終わらぬうちに鞭が風を切る音が響き、テントが大きく傾いた。
「俺のエンジェリック・バリアの中に――」
「絶望するがよい! お前らの希望である魔法少女を魔界に拉致して監禁するのだ!」
再び鞭が振るわれ、テントが俺たちの上に倒れてきた。
「うわっ」
「キャッ」
俺と
「にゃんっ」
白猫まで俺の足元に入りこむ。
顔を上げるも視界は倒れたテントの布に包まれ、様子が分からない。
「くそっ」
「見つけたぞ、魔法少女!」
しまった! と思ったとき、
「地元のお祭りを守る愛と正義の使者、マジカル・ユリア参上!」
「邪悪な怪人め、わたしが来たからにはもう好き勝手はさせないわ!」
「百点満点の名乗りだにゃ。ジュキちゃんと違って」
足元で丸まっている白猫がぼそりとつぶやく。
「違うんだ、そいつは――」
テントの中で叫ぶが、果たして魔人に聞こえたのかどうか? 縫い目の間から状況を見ることだけはできるようになった。
「愚かな魔法少女め、『
肌に吸い付くような深紅の革製スーツに身を包んだ巨乳の女性が、両手に鞭をうならせて
「『掃除の無駄遣い』ってあまり怖そうじゃないね?」
いつもと変わらぬとぼけた様子で首をかしげる
「逃げろ!」
俺は必死で叫ぶが、魔人の両手から放たれた鞭は目で追うこともできない速さで
「しゅぱぱぱっ」
「う、受け止めただと!?」
魔人エスタが驚愕の声を上げた。
変な効果音をしゃべりながら
「あ、あり得にゃい」
俺の足元からのぞく白猫も息を呑む。
「あの子は動体視力も運動神経も動物並みなのよ」
「危ないから結んでおくね。きゅきゅっと」
「き、きさまー!」
激昂した魔人エスタはめちゃくちゃに鞭を振り回す。
「一本の鞭として振るうだけよ!」
魔人が負け惜しみを言っている間に俺はテントの中から這い出した。
「フワフワキャンディ・メタモルフォーゼ!」
イヤーカフから棒状に戻した魔法のステッキからピンクの光が放たれ、魔人の手にした鞭へと収束してゆく。
「なっ、二人目の魔法少女だと!?」
本物は俺一人なのにーっ
俺がぷくーっと頬をふくらませたときには、
「わー、ふわふわ! いっただっきまーす!」
「食べるな! 私の武器を食べるな!!」
魔人エスタが
「マジカル・ステッキ・メタモルフォーゼ!」
俺はステッキを弓へと変える。
「しまった!」
逃げ出すエスタに狙いを定め、
「エンジェリック・アロー!」
呪文を唱えて矢を放つ。どこまでも狙った敵を追いかける光の矢が、女魔人のぷりんとした尻に突き刺さった。
「キィィッ! 痛いっ!」
瞬時にケツから矢を引きぬいた魔人エスタはすっかり逃げ腰になり、
「魔法少女が二人もいるなど聞いておらん! 我が愛しの妹を取り返すのが先決!」
祭り会場の
「追うか。マジカル・エンジェル・メタモルフォーゼ!」
俺はコスチュームの背中に天使の羽を顕現させた。今後も魔法少女を拉致するとか言って、ライブ中に異世界から出てこられては困るから、ここで倒す!
だが公園を出たところでエスタは足を止めた。
「ニンゲンがたくさん集まっている匂いがするぞ! 作戦変更だ! 民間人を人質にとって妹と交換を要求する!」
─ * ─
魔人エスタの卑劣な作戦を、魔法少女ジュキちゃんはどうやって止めるのか!?
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