TS魔法少女マジカル💗ジュキちゃん~男子高校生の俺、ピンクのフリフリ幼女服で戦う姿が全国配信されたら大人気ネットアイドルになってしまった(血涙)~
15、レモ、ジュキちゃんアイドル化計画をプレゼンする
15、レモ、ジュキちゃんアイドル化計画をプレゼンする
魔法少女マジカル・ジュキちゃんが俺だって白状するの!? 二の句が継げない俺に、
「だって
俺、かっこいい声で歌いたいのに! ショックで言葉が出ないよ!
「問題は唯一、曲にあわない外見なのよ?」
ん? 外見?
俺は昨夜、撮影したときの服装を思い浮かべた。往年のロックバンドのロゴがプリントされたTシャツに革ジャンを羽織り、黒のジーンズを履いていたはずだ。
「何か問題でも?」
ぽかんとする俺の鼻先に、
「大ありよ! どうして音楽はさわやかなロックなのにメイクは勘違いブラックメタルなのよ!?」
「勘違いブラックメタル!?」
オウム返しに問う俺に、
「そうよ! 本物のブラックメタルの人たちは、顔にあんなギャグみたいな落書きしないでしょ!?」
自分が良いと思ってやっていたメイクをギャグとか落書きとか言われて、俺は魂が抜けたように立ち尽くした。
「私、
ヘアスタイルにも問題があったと明かされて、俺は真っ白に燃え尽きた。ワックスさえつけておけばOKなのかと思ってたよ!!
「私いろいろ予想してたの。もしかしてコメント欄で言われてたみたいに、本当は女の子が男装してるのかなとか、実はすでにデビュー済みの有名歌手が素性を隠して力試しをしてるチャンネルなのかなとか」
ああ、顔を隠したい訳あり人材かと思われてたんですね。
抜け殻になった俺に気付いているのかいないのか、
「でもリアルで会ったらすっごく綺麗な顔してるんだもん。なんで動画撮るときはあんなダサいメイクするんですかってコメ欄で訊こうと思ったけど、私が
コメ欄は誰でも読めるわけだし、まあそうですね。音楽活動の支えだった檸檬さんから「どうして顔に落書きしてるんですか?」なんて書き込まれたら俺、ショックでチャンネル閉じてたかも知れないけど。
「だから
世に出られるという甘い言葉が麻薬のように俺の脳を痺れさせた。
「そうか。魔法少女姿で歌えば――いやいやいや!」
俺は正気に戻ってブンブンと頭を振った。
「ロックスターになるのが俺の夢! 表現者としてそこはゆずっちゃいけない気がする!」
「ふ~ん」
「ロックスターとはなんなのかしら?」
そんな哲学的命題を突き付けられても、頭の悪い俺に答えられるわけないじゃん!
「
うっ、図星かも知れねえ。
「音楽に限らずアーティストっていうのは、前の世代の芸術家から影響を受けて自分の個性を練り上げていくものだけど、二番煎じじゃだめなのよ?」
なんか難しいことを言い出した。
「スターってことは、歴史に名を刻むミュージシャンになりたいんでしょう?」
「そうなんだ!」
勢い込んで答えてから、何か乗せられたような気になって自分に言い聞かせた。頭を冷やすべきだぞ、俺。
「なら前人未到の領域へ踏み込まなきゃ! 『僕の前に道はない、僕のうしろに道はできる』って高村光太郎も言ってるわ!」
タカムラ――誰だろう? こぶしを握りしめて力説する
「その道が魔法少女なんでしょうか?」
「ぐぬぬ、
さらりと冷めたことをおっしゃる。確かに一理あるかも知れないと思い始めたとき、
「新曲の『窓をあければ』だってクリーントーンが似合う綺麗な曲だったし、アコースティックギターで弾き歌いしてる曲も多いし、そんなにロック調じゃないと思うのよね。まあロックだって歴史が長いから、プレスリーもビーチボーイズもロックのカテゴリーに入るんでしょうけど」
学校で耳にするとは思いもしなかった昔のミュージシャンの名前が飛び出して、俺は目を丸くした。
「もしや
「え? ああ、祖父の形見のレコードが家にたくさんあるのよ」
「アナログレコード!?」
つい声が跳ね上がる。俺は古いロックを聴くときもサブスクで、なんだ。
「ええ、そうね。最新の音楽事情に詳しいわけじゃないけど、
「メイクの話は忘れてください」
俺は懇願した。適当に画像検索して参考にしただけで、俺はブラックメタルとやらを聴いていない。メタルの中のジャンル分けなんか知らねえよ。
「
「泣いてないもん!」
「涙目になってるじゃないの。本当にかわいいわね」
「ちょ、
ささやかな胸だからといって押し付けるの、やめてもらっていいですかね!?
「あーん、ぎゅーって抱きしめてあげたいのに私のほうが背低いんだった!」
悔しがる
俺はふっとため息をつき、実際のところを告白した。
「アコースティック寄りのサウンドでやってるのは、本当のことを言うとメンバーが見つからないからなんだ。リズム隊の入らない弾き歌いスタイルだと激しく
「そういう理由だったのね!」
「それでどんな音楽性のメンバーを募集してるの? サウンドの方向性は? アレンジのこだわりは?」
妙に積極的な彼女の姿勢を疑問に思いながらも俺は素直に答えた。
「シンセがビュンビュンいってる音楽はあんまり好きじゃないってくらいで、メンバーそれぞれの個性を生かしていけるバンドが理想だなって思ってる。俺は自分の書いた曲を歌えれば満足だから」
「そうなのねっ、ハモンドオルガンやジャズピアノが入ったアレンジはいかがかしら!?」
「えっ、ハモ――?」
知らない楽器の名前を出されて俺は焦った。
「ジャズなんて大人の音楽、俺の曲に合うかな?」
「合うかどうかはやってみなきゃ分からないわ! 今から音楽室に行って合わせてみない!?」
「誰と合わせるの?」
状況の飲み込めない俺に、
「私の入団試験よ!」
「入団? 試験?」
俺の頭はクエスチョンマークでいっぱいになった。
─ * ─
音楽室でセッションすることにした二人。しかし――
次回『魔法少女の変身は突然に』
意図してないのに変身しちゃうのは困る!
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