05、俺が魔法少女に選ばれた理由
「足がスースーすると思ったらなんでミニスカートなんだよっ!?」
俺はステッキを持った手で慌ててフレアスカートの裾を押さえた。
「聖女様の力を受け継ぐからニャ。それに女魔人プリマヴェーラは女性に甘いことで有名だからニャ。それを利用しない手は
白猫が悪びれもせずに答え、
「
「ち、違う!」
俺は真っ赤になって体を隠すように両足を閉じた。間違ってもすね毛処理なんかしていない! だが体毛も白いせいでほとんど
「胸元のリボンも可憐な
「あんたは俺にどういうイメージ持ってるんだよ!?」
俺は涙ながらに抗議した。
「こんな体の線がはっきり出る服、どう見たって女装してる男じゃん! 恥ずかしくて外、出らんないよ!」
「どう見たって女の子だニャ」
「バストの発育が遅い女子にしか見えないわ」
白猫と
「う、嘘だ」
首を振ったとき初めて、髪が伸びていることに気が付いた。
「どうなってる、これ!?」
ステッキを持っていない方の手で頭を確認すると、リボンらしきものに指が触れた。
「ピンクのリボンでツインテールに結んであるわよ。
「嫌だぁぁぁ!」
俺の絶叫もむなしく、
「さあ
「そうだニャ、
「そうよ、
「ううっ」
一人と一匹に責め立てられて俺は言葉につまる。前髪長い方がモテるんじゃないのか!? ホストの写真画像検索したらどいつもこいつも鬱陶しい前髪してたぞ!
「ところでミルちゃん、ここから埼玉ダンジョンまで歩いて行くの? 夜だから自然公園発のバスは動いていないわ」
「ワイは空を飛べるニャ! そしてもちろん魔法少女も。
「呪文!?」
魔法を使えるようになったんだ、俺! そうだよな、認めたくないけど魔法少女だもんな! こいつぁワクワクが止まらないぜっ
俺は言われた通りにステッキを掲げ、
「マジカル・エンジェル・メタモルフォーゼ!」
教えられた呪文を唱えた。その途端、ステッキの先端から淡いピンクの輝きが芽生えて俺の背中へ散って行く。首をひねって後ろを振り向くと、コスチュームの背中部分から光をまとった天使の羽が生えたところだった。
「すげー! これで空飛べるのか!?」
「もちろんニャ。さ、急ぐニャ!」
野生動物の身のこなしでベランダの手すりに飛び乗り、夜空へと羽ばたく白猫を追って、俺もベランダへ出る。
「私も一緒に行きたい!」
俺にできた初めての親友なんだ。彼女の願いを叶えてあげたい。
「分かった。危険がないように近くまでだよ?」
「ありがとう! かっこよく戦う
「よしっ!」
俺は気合を入れて彼女を抱き上げた。
「お、軽い」
「魔法少女の身体能力は高いのニャ。
白猫の不満そうな声は無視して、俺は両手に
「すごい……! 私、憧れの男の子にお姫様抱っこされてる!」
「憧れの彼、今おにゃのこだニャ」
白猫が無駄なことを言うが、
「触れられるだけでも夢みたいなのに、こんな密着して体温を感じられるなんて!」
「
「至近距離で見ても美少女だニャ」
いちいち突っ込む腹の立つ白猫に、俺は気になっていたことを尋ねた。
「なあ、あんた俺のこと逸材って言ってたけど、どこらへんを認めてくれたんだ?」
木々と湖に覆われた公園地帯を過ぎると、こまかく区分けされた田んぼや畑の間に民家の灯りが見えてくる。
「むにゃ? 聞きたいかニャ?」
「ああ、言ってくれ」
今まで知らなかった自分の才能が明らかになるのを心待ちにする俺へ、白猫は無情な現実を突きつけた。
「聖女様のコスチュームに変身しても違和感の
「もういい。やめてくれ」
俺は耐えられずに途中で遮った。それ全部、俺のコンプレックスだよ!!
「オッサンが変身したら公害にゃん。テラテラ光るてっぺんハゲのままツインテールなんて見たくないニャ」
白猫は平然と言い放つ。俺の首に抱きついたまま
「どうして最初から女の子を魔法少女にしないのよ?」
至極まっとうな問いを発した。
「ワイが男の子だったからニャ」
次々と車の光が走り抜けていく高速道路の上を飛びながら、白猫は溜め息をついた。
「聖女様はワイが変身してこの世界を救うよう、魔法のステッキを作ったのニャ。つまり雄のみが扱える精霊力を変身の起動力に使うよう設定したという意味ニャ」
「精霊力って自然界の精霊の力じゃないのか?」
俺が漫画やゲームで得た知識を披露すると、
「うにゃ? 精子の霊の力だニャ?」
「いたわよ、女魔人!」
白猫の答えは、地上を指差す
─ * ─
次回、いよいよ敵の女魔人と対面です!
ジュキちゃんは可愛らしく名乗りを上げて、魔法少女らしく戦えるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます