第109配信 GTR 1日目 もっとあ〇いで

 サターナをKOした後、ガブがソフトSMプレイの現場に乱入すると唯一ノーマルなノームが立ち塞がる。ところが後ろから近づいて来たクロウに捕まってご用になった。

 残ったルーシーはサリッサから離れるとガブとの一騎打ちにもつれ込む。ロボットによる天使と堕天使のキャットファイトが始まった。


『くぅぅぅぅぅぅぅぅん! ん、ん、ん、くぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!』


『いた、いた、いたぁぁぁぁぁぁぁぁい!! ちょ、ガブ……んはああああああん!!』


 取っ組み合いをしているガブ機とルーシー機から艶めかしい声が聞こえてくる。痛がっているのに妙にピンク色の空気が漂っている。


「何でこんな声が出るんだよ……」


『痛みが変な刺激になっているみたいデスネ。ってか、実際は痛み無いシ。ワンユウ様、普段あの二人にどんなプレイを強要しているのデスカ? あの反応は普通じゃありまセンヨ』


「俺は変な事してないよ! 普通だ普通!!」


『犯人は皆そう言うんデスヨ』


 デフォルメ人形姿のセシリーがニヤニヤしながら肘で俺の頬を小突いてくる。追求から逃れる為にコメント欄を見ると予想以上に最悪な状況になっていた。



コメント

:まさかこんな事態になろうとは……

:ぶいなろっ!!でGTRをやると聞いた時には他の箱同様に派手なロボバトルをすると思っていた時期が私にもありました

:いざ始まったら開始一時間ぐらいでセンシティブの嵐やで

:ロボバトルがこんなエロい事になるなんて予想してなかったよ

:サリッサのロボSMプレイの時点で凄いものを見せられている感はあったが、ここに来てダブル天使のエロボイスとは、さすがぶいなろっ!!と言わざるを得ない!

:二人のちょいエロASMR級の破壊力があるぜ

:この切羽詰まった感がたまらん!!

:いや、当社比五割増しでエロさに磨きが掛かっている! 明らかに成長している……

:それはつまりどういうことだってばよ?

:ワンユウ総帥……ヤツの仕業だってばね!!

:総帥、アンタって人はどんだけ、ぶいなろっ!!と俺たちリスナーを弄べば気が済むんだ!! 一生付いて行きます!!!

:是非総帥の意見をお訊きしたいところだが、今日はまだコメント欄に現れていないなぁ



「ヤバい! 何がヤバいって色んな情報が絡み合って最終的にこのセンシティブ案件が俺のせいになってる!! なんで!?」


『普段からの行いのせいデハ?』


「くそっ! とにかくコメント打って事態の収拾を図らないと」


『こんな事もあろうかと、この世界の神である私がワンユウ様の代理コメントを自動で打つプログラムを構築済みデス』


「さすがセシリー頼りになる!」



コメント

ワンユウ:私の愛馬は凶暴デス

:総帥!? あんたまさか、その愛馬っていうのは……

:ガブちゃんとルーシーの事ですか!?

:どんな感じで凶暴なんすか!? 先っぽだけで良いから教えてクレメンス

:もう皆あんたの一挙手一投足に夢中だよ。あんた愛馬にナニしたんだよぅ

:ロボで取っ組み合いしただけであんなエロい声出すなんてただ事じゃねえよw

ワンユウ:ナニをしたかだっテ? キミ達は既に知ってイルゼ

:既に知っている……? まさか夏コミで話題になったあの同人誌の事か!

:乱れ牡丹先生の天使本と堕天使本!?

:あの薄い本の内容がまさかノンフィクションだったと!?

:だとしたら凄い事だ。ハード過ぎずソフト過ぎない絶妙なプレイ内容だったぞ

:総帥は超一流の調教師だった事が判明。繰り返す総帥は三冠牝馬ガブリエールとルーシーを調教した上にジョッキーまでやり遂げた生きる伝説ぞ! 皆の者、頭が高い!!

:ははぁーーーーーーー!(全員土下座)



『んはぁぁぁぁぁぁぁぁん! ルーちゃ……凄い、凄い、凄い、凄い、凄いパワーだよぅ。もう腕が……イっちゃうよぉ~! でも……痛いのが何かイイっ!』


『あっ、らめ、らめ、らめらめらめぇぇぇぇぇぇ!! もうムリ、これ以上は身体持たない~! けど、まだイケそ……』


 コメント欄では偽ワンユウのコメントでリスナーが踊らされ、同時進行でロボットからガブとルーシーの限界必至ながらもまだまだ頑張るエロボイスが聞こえてくる。

 俺にとってこの状況は過去類を見ないカオスな現場と化していた。


「終わった。俺の人生……」


『あの牝馬二名を徹底的に調教して乗りこなすなんて、恐ろしい男ですねアナタハ』


「うるせーよ!! そもそもお前が愛馬は凶暴とか火に油を注ぐ様なコメント打ったからだろうが! もう訂正しようがないよ。俺は既に皆から変態SM調教師として認知されちゃったよ」


『今さら「さっきのは冗談でした~」と言っても誰も信じてはくれないでショウネ。でもね、ワンユウ様――』


 セシリーが含みを持たせた感じで話を区切る。その続きが気になってつい訊いてしまった。


「何だよ……セシリー、何が言いたい?」


『実際のところ、ガブリエール様とルーシー様はあなたと突き合い出してからマジで更にエロくなったので、やはり元凶はあなたで間違いナイ!!』


「「突き合い」じゃなくて「付き合い」だからね? 前者だと生々しい感じになるんだよ!」


 これは当人である俺、陽菜、ルナしか知らない事だが、あの同人誌のプレイ内容は……八割くらい合ってた! 初見では驚いて手が震えたのを覚えてる。この事実は墓まで持って行くと決心した今年の夏。

 けれど真実をいくら隠蔽したところで俺がしでかした結果の産物は目の前にいる訳で、それがヨウツベでグローバルに配信されている訳で、要約するとやはり俺が原因だった訳で……自分のへきが全国にバラされた感じで恥ずかしくて消えてしまいたい気分。


『く……ふぅん! も……イっ――』


 興奮極まったガブが配信で言ってはならないワードを口にしようとした瞬間、彼女の<パトライバー>が尋常ならないパワーを発揮しルーシー機の腕部を引き千切ってGTR最初の戦闘は終わった。


 コックピットから出てきたルーシーはガブリエールに捕まり手錠を掛けられる。


「ハァ……ハァ……ふぅぅぅぅぅん」


「フゥ……フゥ……んくっ……」


 捕まったのは下着姿みたいな露出高めのギャングで捉まえたのは太腿ムチムチのミニスカポリス。特にガブリエールとルーシーは取っ組み合いの興奮が冷めやらず呼吸が荒く妙に色っぽい。

 

『なるほど……あれが事後デスカ』


「お前は黙ってなさい」


 気が付くとルーシーだけでなくリスナーも事後だと言ってコメント欄が埋まっていた。

 数時間後、この警察VSギャングの切り抜き動画が多数作られ、そのサムネイルの多くには「ワンユウはSM調教師」と銘打たれていた。

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