第3章 GTRぶいなろっ!!鯖編
第104配信 唄う機動警察大捜査線
夏も終わりに差し掛かった頃、株式会社ファイナルプロジェクトのゲーム開発部門にてGTRぶいなろっ!!サーバーの会議が行われていた。
「これがぶいなろっ!!メンバーによるGTRぶいなろっ!!サーバーのストーリー案です」
暗くなったゲーム開発部のオフィス内、プロジェクターで最初に映し出されたのは大まかなストーリーと各ぶいなろっ!!メンバーの組織配属だった。
そもそもGTRというのは、地球を脱出した超巨大移民船の居住ブロックが舞台のクライムロボットアクションVRゲーム。
その巨大な街で生活しながら大型ロボットを窃盗して犯罪行為をしたり保安部隊が送り込んでくるロボットと戦ったりして暴れまくる作品だ。
その一方でプレイヤーの自由度はかなり高く特にロボバトルをしなくてもその世界でどう生きるか群像劇を楽しむというやり方もある。
プレイヤーは保安部隊(警察)、メカニック、医療班、キャバクラ、食堂、メイド喫茶、コンビニ等、多種多様な職業に就く事が可能。
これまでに配信されたGTRにおいても様々な職業に就いたライバー達の演技や掛け合いが非常に楽しく話題になっていた。
そして遂にぶいなろっ!!でもGTRを実施する準備が整った訳なのだが――。
GTRぶいなろっ!!サーバー『唄う機動警察大捜査線』――舞台は『ナロンゼルス』という架空の都市。そこの海上エリアに造られた『ナロンゼルス第三埋め立て地』――正式名称『ネオ出島』にある『出島署』が警察組の勤務地。その他のぶいなろっ!!メンバーはギャング、医療班、キャバクラ、食堂、メカニックの職業に就いている。各メンバーの配属構成は以下の通り。
警察『出島署』(ミニスカポリス、ドM要員が揃っている、主力はガブリエールとアンバー姉妹)
・一期生 サリッサ・アーガマ(ドM)
・二期生 クロウ・バルバトス(ドM)
・三期生 ホロウ・ティルヴィング(ドM潜入捜査官)
・四期生 エルル・アンバー(主力)
・四期生 シャルル・アンバー(主力)
・六期生 ガブリエール・ソレイユ(主力、期待のルーキー)
メカニック『工場』(全ての勢力のロボットの開発と整備を行う死の商人)
・五期生 ユニ・ホーリー(メカニック、ロボオタク)
・三期生 ナーシャ・ケリュケイオン(雑務係)
医療班『病院』(キャバクラよりもセンシティブな面子)
・一期生 アンナマリー・ホワイト(元気になーれー、元気になーれー)
・五期生 フェニス・ブレイズ(はぁーい、よく頑張りまちゅたね~)
キャバクラ『パピヨン』(キャバクラと怪盗パピヨンの二足の
・一期生 メルア・ティオ・アルビオン(パピヨンのリーダー、ボケ倒す)
・二期生 セリーヌ・グレモリー(パピヨンのボケ&お色気担当)
・四期生 ネプーチュ・アクアマリン(パピヨンのツッコミ担当、お色気勉強中)
BANノート&反逆のフェネル(拠点無しの野良、バイトするので神出鬼没)
・五期生 バハーム・ウインド(悪魔のノートの力でNPCを操る、計画通りと言いたい、粉バナナ製品を販売)
・六期生 ベルフェ・ナハト(悪魔、少年探偵、スケボーに乗る、ロボットに次々に乗り換える)
・三期生 フェネル・ホウテンガゲキ(悪魔と取引した瞳の力でNPCを操る、バハームに惚れている、チョロい)
食堂『亀甲縛り』(ネオ出島に存在するあらゆる組織に食事を提供し生命線を担う。ある意味ネオ出島で一番偉いポジション)
・五期生 フェン・アイシクル(店主、料理は火力が命、亀甲縛りチャーシュー作りに余念が無い)
・一期生 ルイーナ・シル・レウルーラ(看板娘、トラブルに巻き込まれる、ピュア)
・六期生 アマテラス・ソル(配送係、配送速度にこだわる、配送先でトラブルに巻き込まれる)
ギャング『ガレージ』(窃盗を試みるが成功率は低い、お色気はルーシー頼り)
・二期生 サターナ・バアル(猫、クセの強い部下たちを引き連れ今日もすぐに警察に捕まってしまうポンコツギャング)
・六期生 ルーシー・ニュイ(ガブリエールに付き合っているうちにロボゲーが得意になったのでメインパイロット担当)
・二期生 シャロン・ガミジン(クソガキムーブをかますが今回もやっぱりすぐに分からせられる)
・四期生 ノーム・ガーネット(正義感が警察よりも強いギャング)
全知全能の神
・三期生 セシリー・ハルパー(皆のサポート役、神)
「……」
オフィス内が静寂に包まれる。誰も何も言わない、沈黙だ。取りあえず挙手すると進行役の本田さんが俺を指名した。
「ワンユウ君、どうぞ」
「犬飼です。まず言及したいのは警察なんですが……え、これ大丈夫? 半数がドMなんですけど、これもしかして警察が他の連中に辱められてイヤーンな展開になるヤツでは?」
「……確かに」
ちらほら俺の意見に賛同している人が見られる。まだ言いたい事はあるので次に行こう。
「次にBANノート&反逆のフェネルって何!? こいつらNPC相手に絶対遵守の力を行使して殺し回るんですか? 配信的に大丈夫ですか?」
配信で大量虐殺が行われたりしたらヨウツベにBANされかねない。BANノートだけに怖い。気になった点を伝えると丹波さんが回答する。
「ドM警察についてはハッキリ言って未知数としか言えません。本番で実際どうなるか見物ですね。ノートとギ〇ス関してはNPCを死に至らしめる効果は考えていないそうです。あくまで悪戯レベルの行動をさせてパニックを起こしたいみたいですね。悪魔の力だけに……ね」
まだ残暑厳しい季節でエアコンが稼働しているのだが、設定温度を変えていないにも関わらずオフィス内が寒くなった気がする。設定温度を一度上げた。
何はともあれ、ぶいなろっ!!メンバーがある程度ストーリーを提示してくれたお陰で裏方のこちらとしてもサポートがやり易くなりそうだ。
「ぶいなろっ!!メンバーの希望に沿って、ゲーム内マップの構成を一部変更。海上に埋め立て地である『ネオ出島』を作成し、そこと『ナロンゼルス』市街地を結ぶ巨大な橋『オーロラブリッジ』を設置します。後は細かい微調整をしてマップの作成は終了です。次に肝心のロボットですが、それは安藤から伝えて貰います」
「安藤です。これから映し出すのはメカニック担当のユニ・ホーリーが考案した警察のロボットです。見た目はパトカーを意識した白と黒のモノトーンカラーとなっています。頭部の目の部分はゴーグル型を採用しています。……ではどうぞ」
いつもハイテンションな安藤さんの様子がやたら大人しいと思っているとプロジェクターに表示される映像が変わった。そこに映し出されたロボットデザインを観て俺たちは息を呑んだ。
「おい、これは……」
「マジですか?」
「安藤さん、これはさすがにマズいって!」
「こんなん、このまま配信できねーよ!」
ユニ考案のロボットを見たゲーム開発部のスタッフ達から戸惑いの声が発せられる。それもそのはず、このロボットは既にこの世に生み出されていたものだった。
「これは……まんま、パ〇レイバーじゃん……両肩のパトランプ部分まで丁寧に模倣して……え? これを本当に警察のロボットとして出すんですか? これ出すんなら確実にモザイク必要になりますよ!」
「そうっすよ! ロボット戦の時に片方は全身モザイクて、そんなん聞いた事ないわ!!」
「いや、待てよ。薄目で見ればモザイクの向こう側を見る事が出来るって親父に聞いた事があるぞ」
周囲から非難が殺到していると安藤さんが手を前に出し「落ち着け」と伝えてくる。俺たちが一旦収まると安藤さんが目をカッと開いてプラカードを掲げた。
そこには「ドッキリ大成功!」と書かれている。何が起きたのか分からず固まっていると安藤さんが咳払いして詳細を語った。
「落ち着け、ガキ共! これはユニからのちょっとしたおふざけってヤツで、皆を驚かせたくてわざわざパト〇イバーにそっくりな機体を用意したんだそうだ。本命は別に用意してある!!」
「何だ……ふざけてただけか……あー、ビックリした」
「冗談好きなユニらしいな。一瞬配信が出来ないんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたよ」
「安藤さんも人が悪いよ。妙にしんみりした表情してるからさ、何事かと思ったよ」
冗談だと分かって安堵していると今度は正式な警察ロボットのデザインが表示された。
再び白と黒のモノトーンカラーの機体が映るが今度は頭部はゴーグル型ではなくて二つ目――デュアルアイ型を採用していた。
確かにこいつはパ〇レイバーとは異なるデザインだが、色が似ていると妙に本家に迫っているように見える。
「ユニ曰く、この機体は<パトロール・ライブ・オーダー>と言う名前で、略して……その……<パトライバー>と言うらしい」
「アホかっ!! 本家と名前が一文字違いじゃないか!!」
「ドッキリの時と大して変わってねーよ! どっちみち見た目がガン〇ムとパトレ〇バー足して二で割った様な感じだしヤバすぎるよ!」
「言っておくけど、僕が名付けた訳じゃないからね!? 僕だってヤバいと思ったし、せめて名前は変更した方がいいんじゃないかって言ったんだよ! でもこれでやりたいって言うし……仕方ないじゃん!!」
こうして他のロボットも発表される度に言い合いが行われ、この会議は夜遅くまで行われた。最終的にはぶいなろっ!!側の案は概ね認められ、最終調整が行われる事になった。
そして少し時は流れて季節は秋。遂にGTRぶいなろっ!!サーバーが開始される事になった。
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