第87配信 パリオカートぶいなろっ!!杯⑦

 三番手のガブリエールが二番手のルイーナを射程範囲内に収めた。


『ガブリエールさん!? アイテム無しでここまで食い込んで来るなんて中々やりますわね!』


『ルイーナ先輩、先に行かせて貰います!』


 ガブの操作キャラ警官パリオはニトロという特殊能力と引き換えにアイテム入手不可となっている。つまりアイテムによる運で勝利というパリオカートあるある戦法は使えない。

 その点ではプレイヤーのテクニックに左右される潔いキャラと言えるだろう。

 警官パリオの軽自動車ミニパトが酒瓶パリオの大型車に鋭いドリフトで接近する。


『素晴らしいドリフトですわ! ですが警官パリオで酒瓶パリオにぶつかれば弾き飛ばされるのはそちらですわよ』


『そうなるとは限りません。ルイーナ先輩の胸をお借りします』


 

コメント

:ガブちゃんそれは……貸して貰うほどバストには苦労してないでしょ?

:ルイーナもメンバーの中では豊かな方だが相手が悪すぎる

:ぶつかったら逆にガブちゃんが胸を貸す側になりそう

:これからぶつかるのはパリオとパリオじゃない……善人悪役令嬢と天使やで

:そう脳内変換すると何て尊い衝突なんだ。是非見てみたい

:まさかレース序盤でこんな夢のようなおっぱいおしくらまんじゅうを見られるなんて幸せだなー

:おっぱいおしくらまんじゅう……今日一番のパワーワードだぜ

:二人の距離がどんどん縮まってるぅぅぅぅぅぅ!

:ランデブーポイントまであと僅か

:おっぱいおしくらまんじゅうまであと僅か

:裸待機まであと僅か

:ばっかもーん!! それは先に済ませておけーーーーー!!

 


 ルイーナに比べてガブのキャラの方がドリフト性能が高い。その性能差と何度も練習したドリフト戦法で深く斬り込んでいく。ガブ、頑張れ!


『……! そこっ!!』


 二人が衝突する寸前で警察パリオが一瞬走行しインに攻め込むと再びドリフトを開始する。それによって衝突は免れガブはドリフトのスピードを加速させていきルイーナを追い抜いて二番手に浮上した。


『このタイミングでインに入った!? やられましたわ』


『先に行かせて貰います。ありがとうございました!!』


 ガブのドリフトは緩やかなカーブとは思えないほど速度を上げて一番手を独走するアマテラス目がけて突き進んでいく。

 焦ったルイーナがガブと同様のドリフトを行おうとするとスピンしてコースアウトしてしまった。


『あ~~れ~~!!』


『ルイーナ選手、ドリフトを攻めすぎてスピン! その隙にガブリエール選手はドリフトを加速させてアマテラス選手との差を詰めていくーーーーー!!』


『あまちゃんとルイーナが操作する大型車キャラはエンジンパワーこそ最強だけどドリフト性能はそこまで高くないのよねぇ。ダウンヒルならエンジン性能は関係ないから、純粋にドリフト性能と操作テクニックで勝負が出来る。ガブちゃんは相当ドリフトの練習をしてきたみたいね。以前より凄く上手になってるわぁ』


 その通りだ。この決勝戦に向けて俺と月が練習相手になり、数日前のメン限配信ではガブリスと一緒に作戦会議をして戦術を練ったんだ。

 コースは最新のマーグンエリアと仮定してそこで一発逆転を狙える警察パリオでの練習を重ねてきた。こっちの予想は大当たりでガブは練習の成果をフルに発揮できる。

 そしてガブのゲーマーとしての技量はぶいなろっ!!でナンバーワンと言われるエルルにも引けを取らないハズだ。


 ガブとルイーナのおっぱいおしくらまんじゅうが観れずにリスナーは残念がっているかと思ったが、それ以上にこの一瞬のやり取りに皆興奮していた。純粋にレースゲームとして見応えがある。


『見えた! あまちゃん、捕まえたよ』


『ガブちゃん! やっぱりゲームが上手じゃね。でも、うちもレースゲームには自信があるけぇ負けんよぉ』


 アエギ山のダウンヒル終了間際で六期生の二人がトップの座を争い勝負を始めた。 

 ドリフト性能が高いガブがインに入ろうとするとアマテラスが位置をずらして通せんぼする。

 ヒャッハーはパワーがある一方で操作感が重く細かい動作がやりにくいのでアマテラスの繊細なテクニックには驚かされる。

 驚かされたのは皆も同じでコメント欄は二人のコーナーでの差し合いに興奮しっぱなし。ぶいなろっ!!メンバーも序盤から魅せる六期生二人から目が離せない状況になっていた。


『アマテラス選手、ヒャッハーを自在に操りガブリエール選手のドリフト突破を防いだーーーーー! レース序盤で六期生の二人がここまでやり合うとは誰が予想できたでしょうか!?』


『これは面白い展開になってきたわね』


 ヒャッハーとぶつかれば軽自動車の警察パリオは弾き飛ばされてしまう。それを回避するためにガブもドリフトの位置を微調整して併走する形でアエギ山を下山しイキナ山に向かう平地に突入する。

 こうなるとエンジンパワーが高いヒャッハーに分がある。アマテラスが先行しガブとの差が開いていく。


『平地と登りならうちが有利じゃけん。先に行かして貰うよ』


『さすがあまちゃん、一筋縄ではいかないか。けど、まだレースは序盤。チャンスはまだある!』


『六期生の二人がワンツーでイキナ山のヒルクライムに突入~! エンジン性能差でアマテラス選手がトップを独走、二位のガブリエール選手との差が開いてイクーーーーー! っと、ここで三位争いをしていたメンバー二人が、ガブリエール選手との差を縮めてきたぁーーーー!』


 イキナ山は登りは比較的緩やかなのだが、下りがアエギ山とは別物で急傾斜と急カーブの高難易度仕様。特にふもと近くの五連ヘアピンカーブはこのレースの勝敗を分ける重要ポイントだ。

 急カーブ故にドリフト性能が高いマシンに分がある。つまりここでドリフトが苦手なアマテラスのヒャッハーを追い抜くチャンスがある。


『イキナ山の登りも中腹に差し掛かりルイーナ選手とフェネル選手が二番手のガブリエール選手を射程圏内に捉える! 先程のアエギ山ダウンヒルの逆襲が早くも勃発かーーーーー!?』


 エンジンパワーに分があるルイーナがガブに迫る。その後ろにはパンティーでクロウとバハームを手玉に取ったフェネルが続く。ここでイキナ山のアイテムエリアに突入しガブ以外は何らかのアイテムを入手する。


『あたくしはスピードアップですわ。……ここは温存して平地で使う方が良さそうですわね』

 

『わたしはまたパンティー!? 何でえぇぇぇぇぇぇ!!』


 計画的にアイテムを使おうとする悪役令嬢ルイーナとパンティーの呪いに掛かりうなだれる戦士フェネル。

 劇的な能力を持つアイテムは入手できず、堅実な内容のままレースは経過し山頂に到着すると三名は横並びになって下り始める。


『イキナ山の下りは急カーブが多い。ここからはドリフトが強い警官パリオの性能が活かせる。……うん? あれってまさか……ヤバッ!!』


 何かに気が付いたガブが減速して位置を変える。一方、下りでスピードを上げ始めたルイーナとフェネルがコースに落ちていた複数の玉に接触すると光に包まれコントロールを失いコースアウトしてしまう。

 その玉の存在を直前で察知したガブだけは回避に成功し順調に急傾斜を下りていった。


『きゃあああああああ!! 目が、目があああああああああ!』


『光が……広がっていく!? ってにゃああああああああああん!!』


『ルイーナ選手とフェネル選手がコースに落ちていた何かを踏んでクラッシュしたーーーーー! フェネル選手の絶叫が何か可愛いぞぉ』


『あまちゃんが仕掛けておいた閃光弾を踏んで二人共光で目を回してしまったみたいね。この位置は山の下り始めで皆スピードを出し始めるから上手なトラップの仕掛け方だと思うわぁ。これに気が付いたガブちゃんの反応速度は凄いわねぇ』


 ガブは個人勢の太陽の頃から神ゲークソゲー問わず色々なゲームをしてきたのでプレイヤースキルがかなり高い。このパリオカートも彼女の練習相手として一緒に遊んでみたけどまともに勝つ事は出来なかった。

 そんなガブはイキナ山の峠を攻める為の練習を重ねてきた。ここからが彼女の真骨頂だ。

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