第81配信 パリオカートぶいなろっ!!杯①

 皆はパリオを覚えているだろうか?

 そう、元パリピだったおっさん――略してパリオ。パリオシリーズには色々なゲームがあるが、その中でも特に人気があるのがパリオカートだ。

 これはパリオシリーズに出てくるキャラ達が自動車に乗ってレースをするゲームでインターネットを通じて対戦ができるため数多くのVTuber達が配信していたりする。


 ぶいなろっ!!でもそれは例外ではなく、定期的に箱内のイベントとしてパリオカートが行われており、この度パリオカートぶいなろっ!!杯決勝戦が開催される事になった。決勝戦にはレース結果から選ばれた上位八名が出場する。

 

『――と言う訳でこれよりパリオカートぶいなろっ!!杯決勝戦を開催しまーーーーす! 司会はワタシ、セクシー担当その一、二期生のサキュバス、セリーヌ・グレモリーと……』


『セクシー担当その二、一期生の聖女、アンナマリー・ホワイトの二名が務めさせていただきまぁす! まあ、私たちは早々に敗北して暇を持て余していたので「二人共セクシー枠でそれなりにえるから司会をお願いします」と軽いノリで司会を拝命致しました』


『うふふ、そういう訳なので獲物君たちはレースそっちのけでセクシーなワタシ達に注目していて良いからねぇ。司会の傍らサービスシーンを入れようと思ってるから見逃し厳禁だよ。それとレース終了後に運営から重大発表があるので皆、最後まで楽しんでいってねぇ』


 セリーヌとアンナマリーはぶいなろっ!!メンバーの中でも古参かつセンシティブセクシー枠の二人でこういう箱内イベントの際にはまとめ役を買って出ることが多い。

 メルア姫やサターナもぶいなろっ!!のトップとしてまとめ役をすることもあるが、如何いかんせんあの二人は脳内がエロゲーに汚染されすぎていて普通のゲームの司会には向いていないため今回は応援席側にいる。


『それでは今回の主役である八人の決勝出場者インタビューの前に、ここに至るまでのレースで儚く散った敗北者たちに応援の意気込みを訊いてみたいと思いまーす! それでは現場のホロウさん、よろしくお願いします』


 場面が変わりサーキットの応援席を思わせるセットが画面に映る。

 ぶいなろっ!!杯ではレース中はゲーム画面が表示されるが、それ以外は3D仕様によるF1レースのインタビュー風の配信が行われ臨場感を演出している。

 しかし、そのやり取りのほとんどはコント的な内容が占めており、「こっちが本番なのでは?」とリスナーに思われていたりもする。


 とまあ、こんな感じでパリオカートで敗戦したぶいなろっ!!メンバーによるコントが開始され、現場レポーターとして現れたのは胸の谷間がガッツリ見えるセクシースーツコスを着た三期生のホロウだった。

 ホロウはアサシンという職業柄、あらゆる組織に潜入するために数多くのコスチュームを所有し自身も様々な人物になりきる演技派――という設定。見た感じ今はキュートな笑顔のセクシーレポーターになりきっているらしい。


『はい、現場のセクシー担当その三、三期生のアサシン、ホロウ・ティルヴィングです。それではセクシーな私が戦いに敗北したセクシーでない人々にインタビューをしたいと思います』


『ちょっと待ったーーーーーーー!!!』

 

 ホロウに対し真っ先に異を唱えたのは四期生のマーメイド、ネプーチュ・アクアマリンだった。水色のロングへアと水色メイド服が特徴の人魚姫。彼女の下半身は陸上で活動する時は二足歩行で水中を泳ぐ際は魚類の尾の形状になる。

 デビュー当時は清楚で儚い印象が強かったが早々にぶいなろっ!!の雰囲気に染まり、今では胸もデカいが声もデカいムードメーカーである。今回は応援要員として下乳丸見えのチアリーダーコスを着ている。


 そんなネプーチュがいきなりバカデカい声を出した為、近くの応援席にいるメンバーからブーイングが入る。しかし本人はそんな事はお構いなしにホロウに詰め寄ってくる。

 ホロウは面倒くさそうに深く溜息を吐くとセクシーレポーターよろしくニコッと笑顔を見せて対応した。


『どうかしましたか、ネプーチュさん?』


『どうかしましたかじゃないですよ、ホロウパイセン!! どうしてネプが司会とかレポーター側じゃないんですかっ!? こんなにセクシーなのに!!』


 ネプーチュが自分の豊かな胸を持ち上げタプタプ揺らすとコメント欄で拍手喝采が起こる。

 最初はその様子をニコニコしながら見ていたホロウだったが、間もなく冷たい視線に変わり、先程までと同一人物とは思えない低く落ち着いた声でネプーチュに語りかけた。


『……そう言うところだぞ、ネプーチュ』


『ちょ、いきなり素で話さないでくださいよ。怒ってるのかと思ったでしょう!? それよりそういうトコってどう言う意味ですかぁ?』

 

『基本オーバーリアクションで行動に品が無い……胸の揺らし方にも品が無い。以前から言っているだろ。お前はセクシー枠と言うよりも芸人枠だと』


『芸人!? そげな……セクシーとは真逆の存在じゃあないですかぁ!! それに品が無いって二回も言われたぁ』


『まずはそのバカデカい声を何とかしろ。ただしそんな事をしたらお前のアイデンティティーが失われるがな。それでは次のメンバーのインタビューに移る。今話が本格参戦のメンバーはお前だけじゃないんだ。尺の都合もある。――では、次はロリっ娘たちにインタビューをしていきたいと思いまぁす!』


 食い下がるネプーチュを力業で振り切るとホロウは再び可愛い声と笑顔のレポーターに扮し、魔王サターナ・バアル、ネクロマンサーのシャロン・ガミジン、魔法使いのナーシャ・ケリュケイオン、ドワーフのノーム・ガーネット、フェンリルのフェン・アイシクルといったぶいなろっ!!のロリっ娘たちへのインタビューを開始した。

 それに対し真っ先に異を唱えたのは見た目が角の生えた黒猫のサターナだ。


『あのさ、ホロウ。我はロリっ娘ではなく人外というかペット枠にゃんだけど……』


『これだけメンバーがいると誰が誰だか分からず混乱するんですよ。だから、この際ペットとショタはロリにまとめました』


『ショタってもしかしてオレのこと!? いやいやいや、オレ一応性別的に女なんだけど。ぶいなろっ!!は女性VTuber事務所なんだけどぉ!!』


 男子扱いされて困惑しているのは四期生のドワーフ、ノーム・ガーネットだ。少年のようなハスキーボイスでホロウにもの申している。

 

『……それじゃ男の娘ということで手打ちにしましょう』


『うーん、それなら良いか……うん? ちょっと待った! それじゃあ結局男子扱いじゃん!! せめてボーイッシュで紹介してよ。あっぶねー、危うく騙されるところだった。オスにされるところだった』


『ネプーチュさんと言い、ノームさんと言い四期生の方々は芸人気質が強くてセルフボケツッコミが素晴らしいですね』


 レポーター役を務めるホロウがにこやかに四期生を芸人枠で一括りにしようとするとノームは複雑そうな表情をする。


『お笑い芸人じゃないからね!? 一応アイドルVTuberだからね? 確かに今、自分の声がデカくて落ち着きの無い感じがネプと大して変わらんなと思ってはいるけども!!』


『では、ペットとショタの皮を被った芸人のインタビューを終えて本物のロリに行きたいと思いまぁす!』


『え、これでオレ達のインタビュー終わり? やり方が雑じゃね!?』


『酷い扱いにゃあ。レースが終わった後に悪代官に捕まったくノ一の刑に処してやるのにゃ』


 ペット枠のサターナと芸人枠二人目のノームは雑に対応され、ホロウはシャロン、ナーシャ、フェンのロリ三人組のインタビューを開始した。

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