第76配信 パリオ③
このアホAIセシリーは正気ではない。ヨウツベという大規模なオンライン動画共有プラットホームに俺の男の象徴サイズを流そうとしていた。
あの手この手でワンユウ茸のサイズを聞き出そうとしていたセシリーだが、俺の必死の抵抗を前にして観念したのか話題を変えた。
『そんなに公表したくないのなら仕方がないデス。暫定でワンユウ茸はモンキーバナナサイズにしておきマス』
:「……もうね、この際どうでもいいよ。俺がムキになって真実を語ると思ったら大間違いだからね」
『さすがワンユウ様デスネ。普段からガブリスに弄られ慣れているだけあってボロは出まセンネ。それでは話題を変えまショウ。ワンユウ様の好きなフルーツを教えてくだサイ』
フルーツ……何でフルーツ? まあいいか。今フルーツと言われて思いつくのはこの間陽菜と一緒にホテルビュッフェで食べたものかな。
:「最近ハマったのはメロンかな」
そう俺がコメントを打った瞬間、コメント欄の更新が止まりセシリーがクスッと笑うのが見えた。そして――。
『皆様、観ましたかワンユウ様のコメントヲ』
コメント
:観ましたよ。ええ観ましたとも
:この眼でしっかりとね
:総帥~、あんたも好きねぇ
:最近気に入ったメロンて……メロンて……
:本当にメロンなんですか? それ……あなたの感想ですよねぇ?
:ちなみにそのメロン、一個じゃなくて二個ありませんか?
:しかもそれ人肌の温かさのメロンなのでは?
:油断大敵だよ、総帥。ワンユウ茸のサイズは不明なれど、あんたの性癖はダダ漏れやで
:ガブちゃんはキノコが好きでワンユウ総帥はメロンが好き
:その心は?
:ガブちゃんのメロンでワンユウ茸がごめんあそばせされている
:本日の配信はキノコ男とメロン女、そしてチアコスAIの三本でお送りします
ワンユウ:どうして俺が配信者側にいるんだよ!!
:総帥~! 配信の場でメロン大好物て、何てスケベ発言してるのさぁ
:なんちゅう内容の配信してるんですか! 子供も観てるんですよ!!
:パパー、ワンユウ茸ってち〇ち〇の事で、最近ハマったメロンておっ〇いの事でしょー?
:昨今の子供の理解力の高さには驚かされるばかりですな! アッハッハッハッハ!
:う~ん、ボク三十八歳
:おっさんやんけw
ワンユウ:ちがっ……違うよ! 最近メロンを食べて美味しかったからつい……
:だからそのメロンはガブちゃんのメロンなんでしょうよ! 白状しろ、ネタは上がってんだよ
:そりゃあ、さぞ美味しかっただろうよ。このスケベカップルめ~。配信の場でノロケてやがるぜ。いいぞ、もっとやれ!
もうダメだ。元々俺の話を聞くような連中では無かった上にセシリーに全員洗脳されている。俺がメロンなんて言ったばかりに……そう言えば、この間陽菜と行ったホテルビュッフェのメロンショートケーキが美味かったってセシリーに話したような?
あれ? もしかして、俺……セシリーに嵌められたのか? こうなるって分かってたから好きなものをフルーツ縛りで訊いてきたのか?
ふと、画面のセシリーがニチャアと笑っているのが見えた。
……チクショォォォォォォ!! セシリーの奴、本気で俺とガブを弄り倒す気だ。あいつの頭の中は既にアルコールに浸かってぶっ壊れている。
『全く……やれやれダゼ。ワンユウ様のメロン好きにも困ったものデス。……さて、そのメロン様によるパリオの進捗状況を見てみまショウカ』
皆がメロン……じゃなかったガブリエールのプレイ状況に注目するとパリオは順調にステージを進んでいた。
俺が最後に観たパリオはスーツ姿で出勤していたハズだが、今画面に映っているのはパンティーを頭に被ってブリーフ一枚姿の変態と化したパリオだった。
これはパリオ最強フォームと言っても過言ではない姿。敵に接触すれば一発で死ぬ紙装甲と引き換えに人間離れした身体能力を持った超人に変態した変態だ。
もう自分が何を言っているのか良く分からないがそういう事なのだから仕方がない。
パンティーパリオはダッシュスピードが速く空中でもう一回ジャンプが出来る。
これが素のパリオとどれくらい動きに差があるのかというと、素パリオをスライディング出来ない初期ロッ〇マンだとすると、変態は壁蹴りと空中ダッシュが可能なロッ〇マンXぐらいの差がある。
分かる人には分かると思うが、それぐらい使い勝手が違うのだ。ちなみにこのパンティーパリオは子供の教育に良くないという理由でP〇Aに目を付けられ暫くシリーズから姿を消していたがいつの間にか復活していたという逸話がある。
現在ガブはそんな変態を操って宙を舞い敵を蹴り殺しダッシュでステージを駆け抜ける無双っぷりを披露している。
『さすがはメロン様デスネ。ゲーム操作の腕前はぶいなろっ!!メンバーの中でも三本の指が入る……失敬、三本の指に入る腕前ですカラネ』
『三本は無理でぇぇぇぇぇぇぇぇぇす!!』
ゲームに集中しているとは言え、何て返答の仕方してんだガブは!!
コメント
¥5,000:本当に今日はどうしたんだセシリー。口を開けば下ネタばかりじゃないですか。お納めください
¥1,000:我々にもっと下ネタをください!
¥3,000:ジャンプしながら罵ってください!!
¥4,000:ジャンプからのかかと落としをオレにくらひゃい!! お願いしまふ!!!
:どんどん要求が変な方向に行きつつエスカレートしてて草
:草草草草
:さすが受付嬢セシリー。前屈みするだけでスパチャが入る女
:そして今は下乳丸見えのチアガールコスを身に纏いジャンプするだけでスパチャが入る女。面構えが違う!
:昨今のAIは下ネタをここまで使いこなすのか。将来は安泰ですな
\5,000:俺は変態パリオで魅せるプレイしてくれるメロンちゃんに一票や!
\3,000:メロンちゃんって誰だよ。せめてメロン様と言いなさい
\4,000:キャッチ! マイハート! ベリーメ〇ン!!
\10,000:ワカモトォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
:誰に対するスパチャだよwww
ワンユウ:もう勢いだけで中身がスッカスカだよ
『スパチャありがとうございます。パンティーパリオは見た目はアレですけど、物凄く使いやすいですね。さっきは酒瓶で口から炎を出す酔っ払いになりましたけど動きは素パリオのままなので個人的には使い難かったかも――』
『お酒は百薬の長ナンデス!! 故に酒瓶パリオこそ至高!!!』
『急に大声出してどうしたんですか、セシリー先輩!?』
『……ハッ!? 私としたことが配信中に配信者であることを忘れマシタ』
酒カスAIにとって命とも言える酒を愚弄されるのは我慢ならなかったらしい。
あの調子だとこの配信が終わる頃には、あいつは酒カスAIだと皆にバレるかも知れない。
と言うか百薬の長って適度な量の酒のことだからね。あの酒カスは浴びるように飲み過ぎて体内からアルコール成分がオーバーフローしてるからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます