ぶいなろっ!!~デビュー3分で前世バレする伝説を作ったVTuber。そんな推しライバーの俺に対する距離感がバグっている件。俺はいちリスナーであって配信者ではない!~
第65配信 三期生、冒険者ギルド全員集合
第65配信 三期生、冒険者ギルド全員集合
データ異常を起こしていたラフレシアを討伐し襲われていたパーティの方へと歩いて行くと目を疑う。そこにいた三人組は俺がよく知っている面々だった。
俺が側まで来ると三人がお礼を言ってきた。
「助けていただいてありがとうございました。さっきの魔物、全然攻撃が効かなくって……」
「あ、あの……ありがとです……」
「命拾いをした。あなたが助けに来てくれなければ確実に全滅していた」
声を聞いて確信した。この三人はぶいなろっ!!三期生の三人だ。
戦士のフェネル・ホウテンガゲキ、魔法使いのナーシャ・ケリュケイオン、アサシンのホロウ・ティルヴィング。
ぶいなろっ!!メンバーはスラッシュ&マジックにおいて自身そっくりのアバターを作成して配信しているからまさかと思ったけど本物だ。
待てよ、俺の肩にいるセシリーも合わせると三期生全員が勢揃いしている事になる。これはレアだ!
焦り戸惑い喜んでいると三人が怪訝な表情をする。俺は何もやましい事はしていないのだから堂々と振る舞おう。ぶいなろっ!!の箱推しだからといって、テンション上げ過ぎないようにしなければ。
「い、いえ、そんな、たまたま近くを通りがかっただけなので……」
「たまたま……? ここは森の中でも入り組んでいる場所だけど……」
あかん! さりげない雰囲気を出そうとしたら変な空気になってしまった。どどどどうしよう。
『……見ていられませんネ』
呆れた声がすぐ近くから聞こえてくる。肩に乗っていたデフォルメセシリー人形が立ち上がり存在感をアピールする。
突然動き出したセシリー人形を見て全員驚いている。人形はアクセサリー枠にカテゴライズされているが、さすがに勝手に動いてしゃべり出すことはないのでそりゃビックリするだろう。
『皆様、お疲れ様デス。今は配信の時間ではないのでプライベートでレベル上げといったところでショウカ? 来月には当ゲームのアップデートとコラボ配信が控えていますしネ』
「うわっ、やっぱりしゃべったわ! え……何コレ、本物のセシリーなの?」
「私たちの配信スケジュールを知っているという事はセシリーで間違いなさそうだな」
「セシリーはスラッシュ&マジックの神様みたいなものだから。……小さくて可愛い」
目の前で三期生のコラボ配信が行われているような感覚だ。とにかくセシリーのお陰でこの場は何とかなりそうだ。
『そこの厨二病を引きずっているプレイヤーは運営の者デス。こうして私と一緒にゲーム内をパトロールしていマス。先程の魔物はデータ異常により凶暴化していテ、彼の攻撃にワクチンプログラムを仕込んで正常化させまシタ』
「ああ、なーる。それでわたし達の攻撃が全然効かなかったのね」
「フェネルがハルバードで斬っても、ナーシャが魔法を撃っても、私が状態異常を試しても全て無効化されていたからな。それにルーシーがテイムした魔物で様々な攻撃をしても効き目がなかったからおかしいとは思っていたんだ」
「さっきの戦いでルーちゃんのテイムした魔物さん……全滅しちゃった。それに怖い思いしたから……ルーちゃんショック受けてるの……」
会話にルーシーが出てきたのでさっきの戦いを思い出す。
スライディングキャッチして放り投げた時は必死だったのでちゃんと確認していなかったが、今思い返すと見たことがある外見をしていた気がする。
スレイプニールの背中でへばっている人物を改めて確認すると見覚えのある堕天使の姿をしていた。天使の輪と翼はさすがに無いが、地雷系衣装に身を包んだ亜麻色ツインテールの美少女だ。
配信でメスガキムーブをかましてくる生意気な表情は消え失せ、完全に生気を失っている。
「ああ……あ……ルーの闇落ち君たちが……全滅……皆、死んじゃった……ああ……」
「それだとルーリス全員死亡したみたいに聞こえるよ。そう言えば配信でテイムした魔物をファンネームにしてたな……」
ルーシーの発言に思わずツッコミを入れると彼女の目に僅かに光が戻る。俺をじっと見て身体を起こした。
「あ……さっき助けてくれた人? 闇落ち君なの?」
「ぶいなろっ!!の箱推しです。だから一応ルーリスでもあるかな」
「……へぇ、そうなんだ? あ、そうだ。さっきは助けてくれてありがとう」
俺がぶいなろっ!!のリスナーだと知ると配信者モードになったのか少し元気になる。――が、起き上がることが出来ず再びスレイプニールの背中に身を預けてしまう。
「さっきの戦いで……腰抜けちゃったみたい……あはは……」
行動不能になったルーシーをスレイプニールで王都アルビオンまで運んでいくことになった。安藤さんたちに連絡を取ったところプレイヤーを助けるのは運営側の仕事だからということで快く許可してくれた。
「本当にごめんなさい。……本当にもうサイアク……データ異常の魔物に襲われるしテイムした闇落ち君は全部やられちゃったし……ルーには何も無くなっちゃった……」
スラッシュ&マジックにおけるルーシーのアバターの職業はビーストテイマーで魔物を使役することが可能だ。それ故に魔物を全て失った精神的ダメージは相当なものだろう。
でも、彼女に元気がないのは多分それだけじゃない。最近の彼女の配信を観て以前よりも元気が無いと思っていた。どうやら気のせいではなかったらしい。
「ルーシー、元気出して。新しい魔物のテイム一緒に行くから。それに今度のアップデートでテイム可能な魔物が増えるらしいわよ。これまでよりもビーストテイマー強化されるみたいだから、ね?」
「その時は私も同行しよう。やれやれ、元気を出して貰おうと連れ出したらまさかこんな目に遭うとはな。余計元気が無くなってしまった」
「ルーちゃん……元気出してぇ……」
『こういう時は美味しい物を食べてしっかり睡眠を取ることをオススメしマス』
「皆……うん、ありがとう」
これは俺が思っていたよりも重症だ。あの元気爆発メスガキのルーシ-から元気が無くなったらヤンデレ気質なだけの堕天使になってしまう。
三期生が元気づけようとしているみたいだけど、これはちょっと効果が薄そうだ。
無事にアルビオンに到着すると彼女たちは俺とセシリーにお礼を言ってログアウトした。
『任務完了しましたネ。お疲れ様デシタ、ワンユウ様。それでは私たちもログアウトしまショウ』
「その前に少しだけ付き合って貰っていいか、セシリー。少し訊きたいことがあるんだ」
『まさか私のスリーサイズを知りたいのデスカ? 聞いたらセンシティブ過ぎて鼻血ブーしマスヨ』
「ログアウトする前にリキュールボトル買ってあげようと思ったけど、やっぱ止めとくわ」
『ちょ、ま……待てヨ!! 私のスリーサイズでも何でもお話しますカラァ、お酒買ってくだサイ!! なるべくアルコール度数が高いヤツ!!』
「必死か!!」
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