第57配信 メン限配信そして祝福
陽菜の芯の強さに感嘆していると遂にガブリエールの配信が始まった。オープニングはいつもより早く終了し、神妙な面持ちをしているガブリエールが画面に映る。
俺の目にはガブリエールを通して緊張している陽菜の姿が見える。今すぐに彼女の所へ行きたい衝動に襲われる。
こんな思いをするなら側に居れば良かったか? でも、万が一俺の声が配信に流れでもしたら、それはそれでガブリスに不快な印象を与えるだろう。
『こんがぶー。ぶいなろっ!!六期生、ゴッド&デビルの天使ガブリエール・ソレイユです。使徒さんの皆、配信を観に来てくれてありがとうございます』
いつもなら元気いっぱいに挨拶するガブリエールの様子がいつもと違う。それを皆すぐに察したのかコメント欄のテンションは抑えめだ。
ガブリスはこう言う部分の連帯感が優れているので感心してしまう。
この配信のサムネイルには重大告知と表示されていてかつメンバー限定なので、余程の事なのだろうという雰囲気がコメント欄から見て取れる。
ガブリエールがこれから何を伝えるのかを、ただ刮目して待っている。――そんな空気が漂う中その瞬間が訪れた。
『この度の配信ではサムネイルに表記している通りに重大発表があります。――わたくしガブリエールはついにワンユウさんを発見し、お付き合いを始めた事をここに報告致します!』
コメント
:な、何だってーーーーー!(棒読み)
:ふぅん(察し)
:へぇ
:ほぅ
:なるほどなるほど
:ふむふむ
:そうかぁ
:めで鯛
:それでそれでぇ?
:どうしたどうした?
:……で、まだ他に何かあるんでしょ?
:いつなのかなぁ?
:それが尻鯛
何だかおかしいぞ。ガブリスの反応が俺たちが思っていたものと明らかに違う。まだ何か追加情報があるんだろみたいな雰囲気が出ているが何を考えてるんだろう?
ガブリエールも当然俺とおんなじで皆が何を期待しているのかさっぱり分からないみたいだ。
『あの……報告は以上です』
するとコメント欄が荒れた。
コメント
:な、何だってーーーーーー!!!(本気と書いてマジ)
:んなアホな!
:ちょ、話が違うじゃないですかーーーー!!
:これってワンユウとのデキ婚報告じゃなかったのか!?
:その為の先日の引っ越しだったんじゃないの!?
:ワンユウ発見→見せられないよ的行為→おめでた→よし、結婚しよう→本日の配信報告 そういう流れだったのでは?
:マジで? マジでワンユウ発見と突き合い出した報告だけ?
:突き合い→付き合い。突き合いの表現もあながち間違っていない気もする
:そんなぁ! それじゃ今日はお赤飯を用意しておけば良かったって事ですかぁ!?
:ちょっと待って下さいよーーー! 結婚式と披露宴を想定したコメントネタを考えてきたんですよ?
:こんなのあんまりだーーーーー!!
誰も彼も肩透かしを食らったと批難の嵐だ。俺とガブリエールが付き合う事に言及する者はいなかった。それどころかガブが妊娠した上での結婚報告だと勘違いしていたらしい。
『私、妊娠してないですよ!? どうしてそんな話になっているんですかーーー!?』
そりゃガブも驚くだろう。つい先日、初めてを体験したばかりなのに妊娠したと思われていたとは寝耳に水だ。
何がどうしてこんなデマが広がっていたんだろうか? ここは俺が訊くしかない。
コメント
ワンユウ:失礼します。皆、お騒がせして申し訳ない。ところでどうしてガブリエールが妊娠したなんて話になってるの?
:ワンユウじゃないか! ちょっとどうなってんだよ、オレ達はてっきりお前がガブちゃんを〇ませたんだとばっかり……
:先日のガブちゃんの引っ越しってワンユウとデキ婚したから新居へっていうパターンだと思ってたのになぁ
:まさかこのタイミングって先日引っ越しした先でワンユウ本体と知り合っての交際発展の流れなのか?
:それじゃ、マジで知り合ってからの四年間、配信でしか会ってなかったのか!? その方が驚きだよ
:そうかぁ、それじゃワンユウってつい先日までマジで童貞だったんだ……
:ふぅんw(察し)
:するってぇと何かい? 今回の重大告知の真の内容はワンユウが童貞卒業したっていうお知らせだったのかい!?
:いちリスナーが童貞卒業したのをメン限配信で報告するって何なのさw
:ていうか、本体遭遇したばかりのガブちゃんとワンユウが既に大人プロレスしてるのを誰も信じて疑わないの草
:確かにw
:ワンユウは尻込みしただろうけど、ガブちゃんが攻めに攻めたであろう様子が目に浮かぶぜ
『私ってそんなにワンユウさんを押し倒すイメージが強いんですか?』
ガブリスから完全に淫乱扱いされて軽くショックを受けているガブリエール。しかし彼女の普段の配信での言動を思い出すとそう思われても仕方が無いと思う。
本人の目の前では絶対に言えないが……。
このメンバー限定配信は俺とガブリエールが知り合ってから今日までの出来事を話す雑談枠に落ち着いた。
落としどころとしては俺が皆からガブリエールをちゃんと幸せにする事と泣かせるなとコメントを貰う形になった。
メンバー限定配信が終わって陽菜の家に行くと相良さんは「それじゃ、邪魔者は帰ります」とニヤリと笑って帰って行った。
二人きりになった俺と陽菜は今回の配信でガブリスの皆から言われた事を思い出し温かく見守られている事を実感していた。
「皆さん優しかったですね」
「そうだね。俺と陽菜のことを皆祝福してくれていた。まさか妊娠結婚報告と思われていたとは想像もしなかったけどね」
「それで思い出したんですけど、私ってそんなにエッチなイメージがあるんでしょうか? 使徒さんは口を揃えて私がワンユウさんを押し倒すと言っていたので納得がいかないんですけど」
「そう思うのなら今から試してみる?」
そんな俺の言葉から始まった今回の夜間プロレスの結果は――。
「あは……はぁ……はぁ……なるほど……私って攻めるのが結構好きかも知れないですね……」
「ぜぇ……ぜぇ……陽菜さん、ちょっとアクティブすぎ……」
「段々とコツが掴めてきました」
そう言って笑みを浮かべると陽菜は仰向けに横たわる俺の上へと移動する。
「うん……まだ全然いけそうですね。もうちょっと頑張って下さいね、優さん」
「ちょ、ま……あっ!」
ガブリスの皆は推しの本質を見抜いていた。この天使はやはり――危険極まりない。
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